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その日の事、今気になっている事など取り上げていきます。

「誕生日」(おそ松さん・チョロ松メイン短編)

2016年05月24日 | 他ジャンルSS

5月24日、それは僕ら六つ子の誕生日だ。僕らは六つ子という特殊な存在だから兄弟といえど同じ誕生日なのは当たり前なんだけど、普通では殆ど無い事なのでなんだか変な感じだ。

誕生日当日には各自プレゼントを買って交換するのでそのプレゼントは用意してあるのだ。でも僕はそれとは別におそ松兄さんに個人的に何かプレゼントをあげたくて外に出て探しに行ってみようと思った。
いつも履いている緑の靴を履いて僕チョロ松はおそ松兄さんが喜びそうな物を探しに出掛けた。家を出て少し歩きながら考えてみても意外とおそ松兄さんが何を欲しがっているのか思い付かないなと感じた。趣味は競馬・パチンコ・麻雀のギャンブルばかりだし、好物も焼きそばとかチャーハンだ。こんな時にプレゼントとして喜ばれる物、として何があるのかと思ったら実は何もないんじゃないかと思うと僕はおそ松兄さんの事を知っているようで知らないのだと思ってきた。

思考をぐるぐる巡らせながら歩いている僕の目の前に野球をしに行った帰りの一松と十四松が歩いてきた。
「あっ、チョロ松にーさん!散歩っすかー!」
「ハロワ帰りじゃないみたいだけど、何か用事であるの、チョロ松兄さん…」
「一松、十四松ちょうど良い所で会ったよ。ちょっと付き合ってくれない?」
僕は二人が僕の話を聞いてくれるのではと思って声を掛けた。
「ぼくスタバァに行きたいな~!一松にーさんもそう思うでしょ?」
「そやな。十四松さんがそう言うのなら行きたいですな~」
一松も十四松も笑いながら僕に言った。

「ちょ、ちょっと待って二人共。僕のおごりでスタバァなんて高くなっちゃうから他の場所でねっ」
僕は慌てて二人に言った。
「チョロ松にーさんに高いお金払わせる訳にも行かないから、どこでもいいっすよー!」
「まあ、確かにチョロ松兄さんそんなにお金無いしね。付いて行くよ、僕ら」
僕らは少し歩いた所にあったファーストフードの店に入り、空いているテーブルに座った。
「二人とも、好きなの頼んでも良いよ」
「じゃあ、ぼくはコーラフロートが良いな!一松にーさんは?」
「そうだなあ…。俺も十四松と同じでいいや」
「分かった。買ってくるからちょっと待っててね」

僕は二人を待たせるとカウンターに行き注文をして三人分の飲み物をテーブルに持って来て置いた。
「チョロ松にーさんはアイスコーヒーっすか?」
「うん、そうだよ。ちょうど冷たいコーヒーが飲みたくなってね」
僕は十四松に聞かれて、そのまま返事をした。
「チョロ松兄さん、俺達に話があるんでしょ。何?」
一松がコーラフロートを手に取って言った。

「ああ、そうだ。話というのは誕生日プレゼントをおそ松兄さんにあげようと思ったんだけど、僕一人じゃ良い案が浮かばなくてね。それで一松と十四松にアイデアでも出してもらおうかと思ったんだ」
「そういう事だったらいくらでも協力するよ。ねっ、一松にーさん!」
十四松がコーラフロートを美味しそうに食べながら言った。
「ま、まあチョロ松兄さんにおごってもらったし、俺が役に立つのなら手伝いはするけど…」
一松も多少歯切れが良くなかったが、一応返事はもらえた。

「それじゃ早速聞きたいんだけど、おそ松兄さんの欲しい物って何だと思う?」
「なんだろう…。そう言われてみたら確かに思い付かないかも…。好物みたいだし、強いて言えばにぼしかな?」
「こういう時におそ松兄さんににぼしプレゼントしてどうするの。十四松、おかしくない?」
十四松も一松も僕の聞いた事についてはっきりとこれと言えないようだ。
「困ったね…。もう少し考えてみようか。やっぱり一番おそ松兄さんがもらって困らないとしたらお金になるんだろうけど、それじゃプレゼントとしてはおかしいと思うし、第一僕はそんなまとまったお金は持ってないしな…」

僕は二人に言うのと、独り言の中間のような感じで考えを整理しながら言っていた。
「じゃあ、ぼく言っていーすか?ぼくらにできるのならごちそうを作って振る舞うのはいいと思うんだけど…」
「十四松、それいいんじゃない。物より思い出という事もあるし」
一松は珍しく十四松の意見に素早く反応した。
「ごちそうは良いアイデアだと思うけど、予算は大丈夫かな。一応僕もバイト入れるつもりだけど」
「それにさ、俺達十四松の言う『ごちそう』って作れるの?そこが気になるんだけど…」
一松は怪訝そうな表情で僕と十四松を見た。
「大丈夫っすよにーさん達、僕母さんに付いて手伝ってるから大抵の物は作れるから!」
十四松は嬉しそうに僕らに言った。
「そうだね。十四松がごちそうの方をやってくれるならメインで頼んで、僕は材料費の工面とか他にやる事をやるよ。一松は十四松を手伝ってあげて」
「了解。チョロ松兄さん」
「十四松。メニューが決まったらもう一度打ち合わせしよう」

数日経って、十四松がメニューを考え終えたというので僕と十四松は打ち合わせに使ったファーストフード店に来ていた。飲み物を注文し、僕と十四松はテーブルに着いた。
「チョロ松にーさん、メニューこんな感じでいいかな?」
十四松は僕に当日のメニュー案を書いたノートを渡した。ノートを受け取り、一通り読んで十四松の考えてくれたメニューなら大丈夫だと感じた。
「いいね、これで行けるよ。十四松、ありがとうね」

僕は笑いながら十四松にノートを返した。
「わかった、じゃあこれで行くね」
前日の準備の事など十四松と打ち合わせをして、食料の買い出しは一松も一緒に行くように決めた。

23日、誕生日の前日僕らは普段買い物に行くスーパーを避けて少し遠いスーパーに行った。荷物は少し重かったけど、なるべく見付からないようにするにはこうするしかなかった。持ち帰った材料は予め話しておいた母さんに置き場所を確保させてもらっていた。
24日当日、朝食を済ませた僕らは外出したふりをして一旦家を出て家を空けて他の三人が外へ出たのを確認してまた家に戻ってきた。
「今日はみんな外出したね。にーさん達」
「おかげでこっちはやり易いけどね、十四松」
「一松も十四松も喋ってないで。作業進めるよ」
僕らは台所に入り、予め決めた手順と持ち場に付いてお昼に間に合うように作業を進めた。
作業は順調に進み、時計が12時を回る頃には終了していた。

ちょうどその時、玄関の戸が開いて誰かが帰ってきたのが分かった。
「ただいま~。今帰ったよ」
声の主はおそ松兄さんだ。
「みんな。まだ僕以外の人間がいるか分からないようにしてね」
「うん」
「分かった」
僕は居間に行き、おそ松兄さんに声を掛けた。
「お帰り、おそ松兄さん」
「今チョロ松しかいないの?腹減ったんで一旦切り上げて昼飯食べに帰ったんだけど」
「僕しかいないよ。ところでお腹空いてるんでしょ?美味しいものでも食べない?」
「おっ、いいね。お前が作ってくれるの?」
おそ松兄さんは身を乗り出しながら言った。
「ううん。僕がじゃなくて、僕達が、だけどね」

僕が合図をすると一松と十四松が居間にやってきた。
「あれ~。お前らいないんじゃなかったのか?」
「チョロ松にーさんにいない振りしろって言われて隠れてたんだ!」
「俺も同じ」
「それで、もうお昼のごちそうは出来上がっているんだ。僕らがおそ松兄さんに食べてもらおうと思って」

僕は居間のふすまを開いて台所のテーブルに並んでいる料理をおそ松兄さんに見せた。
「すっげー!何、これチョロ松達で作ったの?えらく手の込んだの作ったな」
おそ松兄さんは僕らの作った料理を感心しながら見ていた。
「でもさ、これおれ一人じゃ食べ切れないよな。みんなで一緒に食べようぜ!」
おそ松兄さんは笑いながら僕らに言った。
「いいの、おそ松兄さん…?」
「そんなのいいに決まってるだろ?一人で食べてもおいしくないぜ!」
「それじゃあ、僕らも一緒にお昼にしよう。あ、あと僕からプレゼントなんだけど」

僕は前に買ったプレゼントをおそ松兄さんに渡した。
「お、チョロ松がくれるの?サンキューな。包み開けていい?」
「もちろん、構わないよ」
おそ松兄さんは包みを開けてプレゼントの中身を見た。
「これ、小物を入れるポーチか?ありがとうな、チョロ松大事に使わせてもらうぜ」
おそ松兄さんは僕が選んだ赤いポーチを持ってご機嫌そうだ。
「喜んでもらって良かった。おそ松兄さんに何をあげていいか分からなくて」
「何をくれるって?そりゃ、お金がいいけど、それよりもおれは兄弟6人全員が一緒にいてさ、今みたいに楽しくやれればいいなって思ってるんだ。チョロ松、一松、十四松。今日は本当にありがとうな」
「おそ松兄さん、お腹空いてるんでしょ。ならもう食べない?」
一松がおそ松兄さんに促すように言った。

「一松の言う通りだなそれじゃ、みんな食べようぜ」
僕らは手を合わせていただきますと言い、同時にごちそうを口にしてそして、笑った。

 

 


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