Snow Patrol - Soon (Official Video)
A_o – BLUE SOULS [STUTS Remix feat. dodo & 塩塚モエカ]
Scarborough Fair マリアンヌ・フェイスフル
森田童子 スタジオライブ 1
Swing Out Sister - Forever Blue (Official Music Video)
(ちんちくりんNo,55)
午後の作業は造作ない。午前中作った冊子に平紐を使って、予めパンチで空けた四つの穴を通して強く縛り付ける。それが済んだら、表紙をかけて一冊の本が完成というわけだ。表紙は寸法の都合上、上表紙と裏表紙、背表紙と三点を事前に用意し、背表紙から順に接着していった。
表紙画はかほるの手によるものだ。用紙は肌色の厚紙を使い、かほるに直接描いてもらった。画は主にかほるのスケッチブックを参考にして、それぞれ好みのものを選んだものだ。
圭太は石膏像、貢はダンサー、僕は大いに悩み、結局いつか僕の部屋で彼女が描いていた「子供を抱いたマリア像」を特別にお願いした。かほるのお姉さんに似たマリアさまだ。かほる自身はどうするのかなと思って訊いたら、「ピエロ」にするとまるで自らを嘲笑うかのように唇の両端を上げて薄く口を開いた。こうして僕らが作成した本の中に、内容が同じにも拘らず、4パターンの表紙画をもつものが存在することとなった。タイトルは貢が考えていた。"リジェネレイション"、再生という意味だ。題字は圭太。意外なことに書道の段持ちだということなので、筆を使って書いてもらった。全部で八枚の上表紙、上部に書かれた題字はそれぞれ寸分と違わずに見えた。明瞭な強弱。力強く芽吹くような文字。美しい、と僕はその時思った。
圭太と貢は作業を終え、僕が最後の一冊となったかほるの分を作ろうとした時に、上表紙の「ピエロ」を手に取ってしばらく眺め、ふと彼女の心の中にこの「ピエロ」が住まうのだろうかと思った。でもそんなこと、どちらでもいいことだ。僕はゆっくりと丁寧に作業を続け、それはやがて静かに終わりを迎えたのだった。
次の日の午前、僕は総武線の三鷹駅行きの電車に乗った。十時過ぎの電車に乗ったので、乗客はそれほどいない。土曜日だからか、がらがらだった。もっとも秋葉原駅では大量の乗客が乗り込んでくることが予想されていたが。どうせ一駅先の御茶ノ水駅で降りるのでかまわなかった。席が空いているのにも拘わらず僕は乗車口ドアの隅に身体を預けていた。ずっと宙づり広告の文字を追っていたのだが、丁度船橋辺りで乗り込んできた女子高生らしき三人組が、僕の斜め前の席に座ったので僕の左耳が彼女たちの会話を捉えてしまった。……でさ……あの娘がさ…だからさぁ、ヤキいれようか……○○くんかっこいいよね…告白してみたら?‥…だからヤキ…。何が可笑しいのかキャッキャッと笑っている。その声につられて目を遣ると彼女らは揃って刈上げスタイルだった。前髪は眉が隠れるくらいで、それを6:4で流すように分け、耳周りや後ろは女の子としては極端といっていいほど刈り上げられていた。確か最近小泉今日子がこんな髪型で話題になっていたんじゃないか?服装も揃ってポロシャツに裾を絞ったダボダボジーンズ。違いと言えばポロシャツのチェック柄があるかないかだけでほぼ同じだった。流行なのだろうが、あれだけ三人同じ格好をされると、逆に違和感というものを感じるものだ。ふとかほるの姿が思い浮かんだ。恐らく三人組はかほると同じくらいの年齢なのだろうが、かほるの方がずっと可愛く思えた。
三人組は思いっきり笑い、少々聞き捨てならないことを交えながら、思いっきりお喋りをした後、亀戸駅で降りて行った。やっと降りたかと僕は思い、彼女らの毒気にやられてしまったのか、やけに疲れてしまい、そこからは座席に腰を下ろして安堵した。
御茶ノ水駅から、神保町のかほるの祖父さんの店の前まで、大した時間はかからなかった。僕はそこで立ち止まって、右肩に掛けたショルダーバックのジッパーを開いた。バックの中には「リジェネレイション」二冊が入っている。確認してジッパーをまた閉めた。それから両掌で頬を二回叩き気合いを入れ、「よし!」僕は開放された古本屋の出入り口から店の奥へと突き進んでいったのだった。
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森田童子 スタジオライブ 1
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(ちんちくりんNo,55)
午後の作業は造作ない。午前中作った冊子に平紐を使って、予めパンチで空けた四つの穴を通して強く縛り付ける。それが済んだら、表紙をかけて一冊の本が完成というわけだ。表紙は寸法の都合上、上表紙と裏表紙、背表紙と三点を事前に用意し、背表紙から順に接着していった。
表紙画はかほるの手によるものだ。用紙は肌色の厚紙を使い、かほるに直接描いてもらった。画は主にかほるのスケッチブックを参考にして、それぞれ好みのものを選んだものだ。
圭太は石膏像、貢はダンサー、僕は大いに悩み、結局いつか僕の部屋で彼女が描いていた「子供を抱いたマリア像」を特別にお願いした。かほるのお姉さんに似たマリアさまだ。かほる自身はどうするのかなと思って訊いたら、「ピエロ」にするとまるで自らを嘲笑うかのように唇の両端を上げて薄く口を開いた。こうして僕らが作成した本の中に、内容が同じにも拘らず、4パターンの表紙画をもつものが存在することとなった。タイトルは貢が考えていた。"リジェネレイション"、再生という意味だ。題字は圭太。意外なことに書道の段持ちだということなので、筆を使って書いてもらった。全部で八枚の上表紙、上部に書かれた題字はそれぞれ寸分と違わずに見えた。明瞭な強弱。力強く芽吹くような文字。美しい、と僕はその時思った。
圭太と貢は作業を終え、僕が最後の一冊となったかほるの分を作ろうとした時に、上表紙の「ピエロ」を手に取ってしばらく眺め、ふと彼女の心の中にこの「ピエロ」が住まうのだろうかと思った。でもそんなこと、どちらでもいいことだ。僕はゆっくりと丁寧に作業を続け、それはやがて静かに終わりを迎えたのだった。
次の日の午前、僕は総武線の三鷹駅行きの電車に乗った。十時過ぎの電車に乗ったので、乗客はそれほどいない。土曜日だからか、がらがらだった。もっとも秋葉原駅では大量の乗客が乗り込んでくることが予想されていたが。どうせ一駅先の御茶ノ水駅で降りるのでかまわなかった。席が空いているのにも拘わらず僕は乗車口ドアの隅に身体を預けていた。ずっと宙づり広告の文字を追っていたのだが、丁度船橋辺りで乗り込んできた女子高生らしき三人組が、僕の斜め前の席に座ったので僕の左耳が彼女たちの会話を捉えてしまった。……でさ……あの娘がさ…だからさぁ、ヤキいれようか……○○くんかっこいいよね…告白してみたら?‥…だからヤキ…。何が可笑しいのかキャッキャッと笑っている。その声につられて目を遣ると彼女らは揃って刈上げスタイルだった。前髪は眉が隠れるくらいで、それを6:4で流すように分け、耳周りや後ろは女の子としては極端といっていいほど刈り上げられていた。確か最近小泉今日子がこんな髪型で話題になっていたんじゃないか?服装も揃ってポロシャツに裾を絞ったダボダボジーンズ。違いと言えばポロシャツのチェック柄があるかないかだけでほぼ同じだった。流行なのだろうが、あれだけ三人同じ格好をされると、逆に違和感というものを感じるものだ。ふとかほるの姿が思い浮かんだ。恐らく三人組はかほると同じくらいの年齢なのだろうが、かほるの方がずっと可愛く思えた。
三人組は思いっきり笑い、少々聞き捨てならないことを交えながら、思いっきりお喋りをした後、亀戸駅で降りて行った。やっと降りたかと僕は思い、彼女らの毒気にやられてしまったのか、やけに疲れてしまい、そこからは座席に腰を下ろして安堵した。
御茶ノ水駅から、神保町のかほるの祖父さんの店の前まで、大した時間はかからなかった。僕はそこで立ち止まって、右肩に掛けたショルダーバックのジッパーを開いた。バックの中には「リジェネレイション」二冊が入っている。確認してジッパーをまた閉めた。それから両掌で頬を二回叩き気合いを入れ、「よし!」僕は開放された古本屋の出入り口から店の奥へと突き進んでいったのだった。