Kurt Cobain - Across the Universe (HD)
私には今年30になる姪がいる。
7つ年が離れた兄の愛娘だ。
小さい頃は川崎病を患って後遺症が心配されたが、どうにかそれは免れた。
その姪はともかく活発な子で、実家にくるとよくくるくると動き回ったものだ。
今は亡き父と母は目を細めてそんな彼女を見ていた。
まだ学生だった私はそんな父と母を見るにつけ変な話だが妙な嫉妬心を抱いた。
まだ小さい女の子にだ。
その姪が7つになる年に私は結婚した。
そしてその披露宴での花束贈呈を彼女に任せた。
するとどうだろう。彼女は花束贈呈のときに緊張するでもなく周りの人たちににこにこと笑顔を振りまき、そして彼女より緊張している私とカミさんに対して「お疲れさま」と言ったのだ。
「おめでとうございます」ではなく、「お疲れさま」
その言葉で場内は拍手喝采。
やはり今は亡き義父は「この子は大物になるぞ」と言った.
おかげで私達は緊張がほぐれ、その後の御礼の言葉をそつなくこなすことが出来た。
その後、私たちの間に子供が出来、実家に私たちが入った後でも相変わらず彼女は毎年夏になると兄夫婦とともにやってきた。
ときには一人でやってきて私の子供たちの相手をしてくれたものだ。
そんな毎年の恒例行事は28年続いた。
その間に彼女は短大を卒業し、小さい頃からの夢だった保母さんになり、そして・・・・。
2年前に最愛の人を射止め、結婚した。
義父のいうとおりにはならなかった。
彼女はごく普通の幸せな主婦になった。
28年続いた恒例行事は打ち止めとなり、彼女はうちにくることはなくなった。
忙しいのか、彼女からの便りもなかった。
私は秘かに彼女からの連絡を心待ちにし、だがそれも半年で諦めた。
そして2年経ったある日、彼女からの突然の電話がある。
差しさわりのない話を十分ばかりして「それじゃあ」と言いかけた瞬間、彼女はまたも思いがけない言葉を口にした。
「私達、絶対におじさんたち夫婦に負けない家庭を築くんだから。幸せになってやるんだから!」
言っていくれるぜ・・・。
やっぱお前は大物だよ。
幸せを願う。