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ただいま冷温停止中! d( ̄ ̄;)

二〇〇五式タイガース

2006-01-01 22:03:56 | スポーツ
二〇〇五式タイガースを振り返る。

リーグ制覇したのだから、結果については何の不満もない。であるにもかかわらず、心のどこかに、ささくれだったところが出来てしまった。言うまでもなく日本シリーズである。日本シリーズのあまりの無惨な姿に、茫然自失してしまったことが、私をして、コイズミ調に「よくやった!」と言うことを、ためらわせているのだ。あれから2ヶ月が経過した。実を言うと、日に日にそのことを思い返す回数が減って行っているだけで、今でもあの痛みそのものが和らいだ訳ではない。今でも時々、チクッと胸に棘刺してくるのだ。だから、ささくれだった部分には、今も安全装置が微妙に働いているかもしれない。来シーズンがはじまって、タイガースが勝ちを積み重ねてくれるしか、この痛みを消し去る方法はなさそうだ。


プロ野球改革元年と謳われた今年、タイガースは観客動員数313万2224人(1試合平均4万2907人)で、12球団一を記録した。この数字だけで、球界の盟主交代を口にするつもりもないが、今後の日本プロ野球界における、タイガースの役割の大きさを如実にあらわしている出来事だ。そして、その観客と選手の奮起が、プラス方向のスパイラル作用を起こしてくれたのだ。

二〇〇五式タイガースを総括した時、私の中で浮き上がってきたキーワードはみっつ。
  • 交流戦
  • アンラッキーセブン
  • 岡田イズム

これらについて、もう少し掘り下げてみたい。


■ 交流戦
昨シーズンを象徴する出来事が、交流戦の導入である。シーズン前、岡田監督も交流戦の出来・不出来が、優勝争いに多分に影響するであろうことを予言していた。

昨シーズンの最終結果
タイガース 87勝54敗
ドラゴンズ 79勝16敗 ゲーム差10

ところが、交流戦を除いたレギュラーシーズンは、
タイガース 66勝41敗
ドラゴンズ 64勝45敗 ゲーム差3

しかも、優勝が決定した後の試合を除いてみたら、
タイガース 63勝39敗
ドラゴンズ 62勝40敗 ゲーム差1

この数字だけ見ると、交流戦がなければ、優勝決定は最終戦まで持ち越しそうなくらいの混戦になっていただろうことを予感させる。9月7日の、あの「The Game」の勝ち負けの差でしかなかったかもしれないのだ。しかし、現実には10ゲーム差で優勝した。消化試合を除いても8ゲーム差。岡田監督の予言通り、交流戦の明暗が分水嶺になったのだ。

なぜ、タイガースは交流戦で結果を残せたのか?

その要因のひとつは、久保、正田の二人の元・バッファローズコーチの入団ではなかろうか。両コーチが昨年まで対戦してきたパ5球団のデータは、十分すぎるくらいに、手元に持っていたはずだ。しかも、自チームのバッファローズの内情はすべて把握していた。事実、バッファローズの選手が多く占める、オリ、楽天には合わせて9勝2敗で勝ち越した。いくらスコアラーが資料を集めてこようが、現場の実戦感覚に勝るものはない。
交流戦が始まった昨シーズン、両コーチを招聘した意図に、交流戦対策が当初から存在したのかどうかは不明だが、結果的に、プラスに作用したことは間違いなかろう。交流戦を有利に戦えた所以だ。

ただし、このアドバンテージは一年だけのものだろう。来シーズンからは同じ土俵で、戦わざるを得ないのだ。


■ アンラッキーセブン
岡田監督の昨シーズン最大のタイムリーヒットは、7回に球児を持ってきたことだ。
しかし、球児をそこに持ってきた意図は何だろうか?そこには深謀があったのか?偶然の産物なのか?そんな疑問を持っていた。

ためしに、優勝を決めるまでの141試合、イニング別の得失点の平均を取ってみた。

失点

1回2回3回4回5回6回7回8回9回
0.440.440.390.420.330.510.330.410.38

得点

1回2回3回4回5回6回7回8回9回
0.770.450.390.640.620.550.620.530.49


予想通り、7回の失点が少ないのだが、むしろ注目したいのは6回の失点。0.51と断トツに多いのだ。先発投手が、この回あたりでそろそろ相手打線に捕まりかける頃なのだ。ベンチもファンも嫌な予感を感じる時間帯。感覚ともかなり一致している。そしていよいよラッキーセブンがやってくる。味方のラッキーセブンは、敵にとってもラッキーセブンなのだ。すでに6回、投手陣に破綻の兆しが現れつつある。岡田監督が7回に相手の勢いを裁断しようとする意図はここにある。セットアッパー・球児を7回に投入する所以だ。平均失点0.33は、球児以外が投げる場合も含まれる数字。球児が投げた時は、この数字は限りなくゼロに近いものになる。かくして敵のラッキーセブンは、アンラッキーセブンとなるのだ。7回のタイガースの得点からも見て取れるように、その効果ぶりは歴然だ。

“JFK効果”は、先発投手にとっても絶大だ。10km走にたとえるなら、先発投手が常に10km完走を求められる場合と、とりあえず6kmまでを第一目標にする場合を考えた時、その違いは明白だ。初回からのペース配分からして違ってくる。6回までリードを守れば、95%を超える確率で勝ち星がついてくるのだから。投手の完投モチベーションを保つため、首脳陣は下柳投手以外の先発投手に6回までとは言わないが、両者には確実にその意識が働いているはずである。


■ 岡田イズム
監督のバトンの渡されかたにも、いろいろあるけれど、やりやすさには差があると思う。星野さんや今年の原監督のように、チーム状況が最低最悪の場合に引き受けるのは、ある意味やりやすい。一方、岡田監督のように、カリスマ監督から、優勝旗と一緒にバトンを渡される場合ほど、やり辛いシチュエーションはなかろうと思う。これ以上のやりにくい条件は、ほかに思いつかない。1年目の岡田監督は、常に星野前監督の亡霊と戦っていた。そして、ファン、マスコミ、選手ですらも”星野監督だったら”という、”たられば”で語られる不本意な状況に、岡田監督はさいなまれていたことは想像に難くない。並の神経の持ち主なら、1年目で”ギブアップ”しかねない状況だ。
私は2年目の岡田監督が、コーチ陣を一部に入れ替えたと同時に、采配振りにも変化があることを予想した。それは、誰もが期待していた変化である。1年目の采配の反省こそが、2年目・勝負の年の鍵だと思われたから。
しかし、私の予想は覆されたのだ。シーズン当初、変化が見られたように思えたものは幻影で、1年目と変わらないどころか、より強力に、1年目に垣間見せた”岡田イズム”を推し進めてきたのだ。これには私も驚いた。

「岡田監督は本気だ!」と。

4月3日、開幕シリーズの第三戦。藤川、ジェフ、久保田で逃げ切った勝利は、そのゲームが初めてだった。そして、4月7日の広島戦。5試合連続で9得点を挙げた、その試合は、2度目のJFK出動だった。しかし、結果は久保田が打たれて、サヨナラ負けを喫することに。しかし、岡田監督は、その後も安定感に乏しい久保田を、一貫してクローザーとして投入し続けた。結局、JFKが出動して、次に白星を手にするのは、それから8試合後のドラゴンズ戦まで待たなければならなかった。重要なのは、その間のJFKの使い方。試合展開もあり、JFKのそろい踏みは少なかったのだが、岡田監督のJFKに対する起用方法には、一貫した意思が感じられた。ファンやマスコミに叩かれようが貫き通す、確信犯的な岡田イズムをはじめて感じた瞬間だった。岡田監督、恐るべし。

そして、9月7日の「The Game」。
あの試合で岡田監督が見せたパフォーマンスは、岡田イズムを理解しかけていた私を再び驚かせた。その時点までの岡田イズムでは説明できない一面を見せたのだ。岡田イズムの奥深さを感じさせた試合だった。まだまだ岡田イズムはアメイジング・ワールド。来シーズン、岡田イズム第二章が始まる。


私が星野監督と岡田監督を比較して、一番違いを感じるのは、自身と選手との関係性の捉えかた。星野監督のそれは、高校の野球部の監督と選手の関係なのだ。どこまでも選手を教え子と見ている。岡田監督はと言うと、同じ野球部でも、監督と教え子の関係ではなく、2、3年前に卒業した先輩と現役の後輩の関係なのだ。かならずしも年齢差から受ける印象で述べているのではない。岡田監督は、いつまでも先輩・後輩の関係性で選手と接している監督のように思うのだ。だから、選手がミスした時、星野監督は叱り、岡田監督は怒る。そして、星野監督は起用した自分を嘆き、岡田監督はチャンスをモノにできなかった選手を嘆くのだ。


さて、二〇〇六式タイガースは何を見せてくれるのだろう。

その姿に出会える日を、いまかいまかと待ちわびる毎日だ。




あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いします。


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17 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
明けましておめでとうございます!! (ぱぴ)
2006-01-01 22:16:28
いわほーさん、明けましておめでとうございます!!

昨年は大変お世話になりました!

今年も宜しくお願い致します!



…って…

いわほーさん、新年1発目の記事からなんてディープな記事をUPなさったんですかぁ!!!(驚嘆)

日本シリーズの「ささくれだち」に始まり読者に「えっ?」と思わせて、05年の感動と涙を蘇らせ、06年の壮大なる希望と共に終わるとは…

もうしっかりといわほーさんの術中にはまりましたよー!!



そんないわほーさんと今年も虎応援が出来るなんて嬉しいです!!本当に今年も宜しくお願い致します!!





2006年、虎と虎ファンに幸あれ!!
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今年は日本一に! (yu)
2006-01-01 23:50:08
いわほーさん、今年もよろしくお願いします。

新年早々、読み応えのあるエントリー興味深く読ませてもらいました。特に岡田監督の章。



>岡田監督は、いつまでも先輩・後輩の関係性で選手と接している監督のように思うのだ。



これ同感です。岡田監督が選手を信頼していることは、試合中の采配から見ても十分わかるのですが、一人ひとりの選手がそれぞれ監督との強い絆を持っているような気がするのです。特番や新聞での選手の言動から感じることなのですが・・・。そんな見えないところでの選手への気遣いがあるんじゃないのかなって。



とにかく今年も虎ファンみんなで喜んだり、感動したりしたいですね。
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祈・日本一 (gavi)
2006-01-02 04:05:21
いわほーさん、あけましておめでとうございます。



岡田監督の奥の深さはまだ私には読めません。

でも「先輩・後輩」はなるほどなぁ、と思いました。

きっと選手達にとってこれまで接したことがない位置に岡田監督はいるのではないでしょうか。そのぶん今までに味わったことのないプレッシャーや責任感が生じて、その相乗効果で選手のモチベーションが高くなったのではないかな、と勝手に推測してみる(笑)。

要するに「新鮮な関係」だったのではないかな、と。



岡田さんは大変クレバーな監督だと認識しています。選手への気遣いや選手に対する愛情も、決して表に出すわけではなく、心と心だけで意思疎通を図る、ここまですべて考えて行動されているのではないでしょうか?



岡田監督の偉大さはきっと岡田監督に接する人にしかわからないのかも知れません。



今年もどうぞ宜しくお願い致します!

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勝敗は時の勢い (森 無礼)
2006-01-02 07:23:51
明けましておめでとうございます!本年も宜しくご指導

賜りたいと願っております。

久しぶりの記事を面白く読ませて頂きました。お世辞

抜きで流石の分析には感動すら覚えたのです。



日本シリーズの4連敗!何故か私にとっては皆さんほど

のガッカリ感が無かったのが不思議です。

S37の時は東映が相手、勝てると思ったけど2勝4敗

と1分。S39は当時強かった南海相手で負け予想の中

3勝4敗とするも負けは負け。

S60も強い広岡西武だったのに4勝2敗で勝った。



この辺りが短期決戦特有の面白さだと思うのです。

昨年も井川に責任を被せるつもりはないけれど、彼の

崩れがチームのリズムを崩してしまった。それが待機の

不利と相まってアレヨアレヨの結果だったのでしょう。

タラレバは禁句だが、初戦を獲れば全く逆の結果だった

と思うから悔しさは無い!これも安全装置のお陰です!

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新春だけど春よ来い (wan)
2006-01-02 17:36:25
先生~、新年おめでとうございますぅ。

正月からエラいヘビーな記事ですね^^

でも1月はパタパタしてる間に2月になり、あっという間にキャンプにオープン戦…、そして開幕!

いわほーさんと同じく私もワクワクさんです。



ああ、早く春にならんかな。



今年もよろしくお願いいたします!
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新年の誓い (since1970)
2006-01-02 20:18:04
新年、あけまして、おめでとうございます。さっそくのご挨拶、ありがとうございます。さすがの分析で、感心します。>星野の監督は起用した自分を嘆き、岡田監督はチャンスをモノに出来なかった選手を嘆くのだ。

その通りです。星野さんは選手の親分として、選手を叱らずに、自分が悪いと思う。しかし、岡田監督は、「なんで、チャンスをつかまんのや」と自分の事はほっといて、選手を思って嘆く。そこが大きな違いです。文章を読んで「あっ」と思いました。



寡作派のいわほーさん。流石に一本一本が重いです。出来れば、もう少しペースを上げてもらえれば、幸いです。もっと読みたいので、お願いします。



本年も宜しくお願いします。^^
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おめでとうございます (りさ・ふぇるなんです)
2006-01-02 20:38:29
>イニング別得点の平均

面白かったです。

岡田監督はじたばたしないところが「勝利に貪欲ではない」ととらえられがちです。

実際敗けるときは最下位のチームよりも「ありえない負け方」をします。。

でも岡田阪神は確実に失敗を糧にしてきていますので、あっさり勝ってしまうよりも良かったのかもしれません。

日本シリーズではまともにコアラのマーチを見られないほどのトラウマを植えつけられてしまいましたが、岡田はん自身が一番はらわた煮えくり返るほど悔しいはずですのでやってくれるだろうと期待しています。
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本年も宜しくお願いします (ルー)
2006-01-02 22:14:28
私も新年早々こいーネタでビックリしましたよ。交流戦のことが新聞に書いてあったけど岡田監督はいち早く交流戦が勝負だとにらみ

11月くらい(だったかな?)からパリーグにスコアラーを付けてたそうです。

まだその時期何処の球団も来てなかったらしいですが。

だから決してまぐれではなく分析通り勝ったのですね。しかし本当の勝負は今年です。

良い夢が見れますよう今年も宜しくお願いします。
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あけおめ! (いわほー)
2006-01-03 11:44:06
新年早々、ようこそお越しくださいました。



⇒ぱぴさん

新年1発目といえば聞こえは良いのですが、年末にUPが間に合わなかっただけの話でして。^^ゞ

今年は他球団も、球児対策を講じてくるでしょうから、さらなる球児の飛躍を信じましょう。



⇒yuさん

連続フル出場世界記録達成後の金本選手に対する、岡田監督の起用方法の変化にすこし注目しています。記録達成後もフル出場が基本線なのでしょうが、選手生命を延ばして、能力を最大限に発揮するのに、岡田監督は”適度な休み”の勧めを説いているようなので。今シーズン終了時、金本選手の連続フル出場記録が継続しているのかどうか?注目です。



⇒gaviさん

岡田監督が偉大な監督だったのかどうかは、監督を退いた後に歴史の評価を待つしかないでしょうね。いまは、偉大な監督である予感を信じてついていくだけです。また3月の決起集会が楽しみですワ。^^



⇒森無礼さん

私の場合は、過敏ともいえるくらい、日本シリーズにトラウマを覚えました。無礼さんの域に達するには、まだまだ修行が足りないみたいです。今後とも示唆にとんだご意見、よろしくお願いします。



⇒wanさん

先生ちゃうとゆうてまんがな。^^

プロ野球のお正月はやっぱり、2月のキャンプイン。これが始まったら、本当にワクワク、ドキドキ、ソワソワしてくる。それまでの間、もうすこし「観念タイガース」を楽しみましょう。



⇒since1970さん

>もう少しペースを上げてもらえれば、幸いです。

いつもkingkazuさん家を拝見てて思うのは、更新ペースの凄さ。私もご期待に沿えるように、頑張ってみます。一応・・・。^^ゞ



⇒りさ・ふぇるなんですさん

>岡田阪神は確実に失敗を糧にしてきていますので、あっさり勝ってしまうよりも良かったのかもしれません。

わたしもそう思います。岡田采配に関して言えば、基本線は一貫して変わらないが、ディテールは微調整してきているのも事実です。一見した印象よりも、緻密さを感じるようになりました。最近。今年の元会長の活躍ぶりも注目です。



⇒ルーさん

おっしゃるとおり、スコアラーの功績も無視できないと思います。ただ、スコアラーの目と、パリーグで戦ってきた現場の目が組み合わさった時、最大の効果が得られた気がします。





みなさん、今年もよろしくお願いします。

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ご挨拶が遅れました……。 (kisaragi-earth)
2006-01-03 14:48:13
新年、あけましておめでとうございます。



今年初の記事、とても興味深く拝読いたしました。

星野さんとは全く異なる岡田さんの采配、2年目にしてようやくわかりかけてきたところに、いわほーさんのお見事な表現がぴたっと当てはまった思いでした。

来季はどんな岡田イズムの進化を見せてくれるのでしょうか。楽しみです。



そしてイニング別得失点の表も面白かったです。

7回の重要性はもちろん、初回の得点率もタイガースの強みですね。



……う~、いわほーさんの記事を拝読していたら、

開幕が待ち遠しくなってきました(笑)

今年もよろしくお願いいたします!
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