たとえていうなれば、連続イニング出場記録というのはゴールのないマラソンのようなもの。マイルストーン(道標石)は、もう遥か後ろに遠ざかっていった。もう眼前には目指すべき目標物は何もない。そこにあるのは、どこまでも果てしなく続く長い一本道だ。マラソンランナーにとって、1km頑張ったことのご褒美が1kmゴールに近づくことだとすれば、ゴールのないマラソンというのは走れど走れど1cmたりともゴールに近づきようのないもどかしさとの戦いなのかもしれない。これはキツイ。
たとえていうなれば、連続イニング出場記録というのは「永久(とわ)の一瞬」を積み重ねるようなもの。「一瞬」を何百、何千、何万と積み重ねても「すこし長い時間」であって「永久」たりえない。そこにあるのは、いつまでも絶え間なく続く「永久の一瞬」という幻想だ。アスリートにとって、1年頑張ったことの勲章が1歳年輪を身にまとうことだとすれば、「一瞬」を紡いでいくというのは若さとの等価交換を強いられる悲しさとの戦いなのかもしれない。これはツライ。
「永久の一瞬」を駆け抜けるアスリートは、いつしか「永久」と「一瞬」との隔たりが、ほんの皮膜ほどの距離でしかないことを思い知る。気宇壮大でいて微小繊細な皮膜。すぐにも破けてしまいそうな皮膜の間隙を一人で駆け抜けることの、なんと残酷なことよ。
◇
梅雨もすっかり明けたこの日は、朝から快晴だった。夏休みを間近に控えた甲子園球場。しかも、伝統の阪神-巨人三連戦のこのカードは、どちらも一勝ずつで迎えた第三戦。双方ともに落とせない一戦だった。現在3ゲーム差とはいえ二位と三位の好調同士だけに、チケットは当日券も含めてすべてSOLD OUT。今朝、急遽、観戦を決めた私は、梅田のチケット屋を何軒かまわって、やっとのことでこのチケットを手に入れたのだった。
とても落ち着かない気分のまま、私が甲子園の三塁側オレンジシートに腰を下ろした時は、すでに試合開始30分前だった。
試合前は緊張感も手伝って、いつも落ち着かないものだ。しかし、今日のそれはいつもとは違っていた。試合の勝敗を案じてワクワク、ソワソワと落ち着かない、というのとは明らかに違うものだった。球場につめかけたタイガースファンの多くも皆、私と同じ思いを共有しているに違いなかった。
球場全体には、すでに異様な緊張感がみなぎっていた。そして、微妙な落ち着きのなさを持て余しながら、一塁ベンチに視線をやりつつ、スターティングメンバーの発表をいまや遅しと固唾を飲んで待ち構えていた。
その「落ち着かない」理由とやらを語るには、昨日の試合の劇的なクライマックス・シーンまでさかのぼらなければならなかった。下柳と上原の投げ合いとなったその試合は、1-1のまま延長戦までもつれこんだ。延長11回表のジャイアンツの攻撃、無死一二塁のピンチを0点で切り抜けたタイガースは、その裏、無死からアニキが四球で歩き、五番、六番が凡退後の二死からこの日七番に入った矢野の右中間を一閃する快打が飛び出して、一塁からアニキが長駆ホームインして劇的なサヨナラ勝ちを収めたのだ。
問題はこのとき起こった。際どいタイミングながらも間一髪でホームインが認められたのだが、大きな代償も負わされた。果敢にスライディングを見せたアニキの足と、ホームインさせじとブロックする阿部の足が、ホームベース上で複雑怪奇な交差をみせたのだ。そして、このときアニキの軸足である左脚の足首を痛めてしまったのだ。
「ケガと言わなければケガじゃない」と豪語する男だ。骨折すらも無かったことにできる男である。だが、今回ばかりは事情が違った。サヨナラのホームを踏んだアニキに、チームメイトの手荒い洗礼が待ち受けているはずだったのだが、尋常ならぬ表情で顔を歪めるアニキを見て、チームメイトは誰一人、近づくことすら出来なかった。アニキの足にただならぬ事態が起きていることは、火を見るよりも明らかだった。サヨナラ勝ちの歓声は、状況が明らかになるにつれて沈黙へと収斂していった。本当なら先発好投した下柳、サヨナラ打の矢野、そして先制打と決勝ホームを踏んだアニキの「39トリオ」で、今期初のお立ち台も期待できた幕切れだったのに。
うずくまったまま、しばらく起き上がれなかったアニキは、結局、秀太と中村豊に肩を抱えられてベンチ裏へと消えていったのだ。そのシーンは夜のニュースで繰り返し流された。
「連続フルイニング出場記録」の赤信号を予感させるに十分な映像だった。
◇
今朝のワイドショーやスポーツ紙も慌しかった。報道によると、昨夜、病院で検査した結果、骨折だけは免れたという。しかし、それすら事実かどうか怪しいものだった。誰もこの報道を鵜呑みにしてなかった。そもそもレントゲンの結果など、この男にとってはどうでもよいことなのかもしれない。大事なことは、今日の試合、彼がグラウンドに立って、守って、走って、バットが振れるかどうかということだった。
さすがに鉄人といえども、今回ばかりは楽観を許さない状況に思えた。報道によれば足は二倍くらいに腫れ上がっているという。腫れが引かないことにはスパイクすら履けそうにない。過去に手を骨折した時は、グラウンドに立って、守って、走って、片手ながらもバットを振ることが出来たのだが、足ばかりはそうはいかない。両足揃ってスパイクを履かないことには、守って、走ることはおろか、グラウンドにさえ立つことができない。鉄人といえども、右足一本で試合に出ることは不可能だ。
アニキの連続イニング出場記録は、昨日で1,270試合を数えた。前人未踏の世界記録だから、誰もが記録の行く末を案じた。ワイドショーのみならず、ネットもこの話題で持ちきりだった。某巨大掲示板サイトでも「【野球】アニキのフルイニ記録を応援するスレ」なるものが立ち、活発に意見が飛び交っていた。記録ストップが懸念される状況について、丁々発止でやり取りが繰り返された。皆、口々に今日の試合の雨天中止を望むのだった。
しかし、見上げる空はピーカン晴れ。悲しいほどお天気だった。
今朝の天気予報でも全国的に快晴の一日。せいぜい雨が降ったとしても短時間の夕立くらいしか期待できないという。水はけの良い甲子園のこと。少々の夕立くらいじゃ、お湿りにしかならないだろう。
なかには運を天に任さず、直接、実力行使を訴える者も現れた。中世の黒魔術の書の教えで、雨虎(あめふらし)を黒焦げに焼いて、粉末にして振りまくと大雨を呼べるんだとか。すぐさま実行に移すことを呼びかけていた。但し、この雨虎は、地中海に生息する種類でないと効果が無いということであえなく自爆を遂げた。
濃霧、台風、竜巻、大地震・・・。黒魔術でも、こっくりさんでも何でも良いから天変地異を呼び起こせと、アナーキーでファナティックな盛り上がりも見せていた。そして、ついには甲子園球場に時限爆弾を仕掛けるデマを流そうという過激な発言までとびだして、ついにはこのスレは封鎖の憂き目を見ることになったのだ。
◇
突然、球場全体がざわめきだした。
いよいよスターティングメンバーのアナウンスが始まった。先攻・ジャイアンツのメンバーが告げられたのに続いて、いよいよタイガースのメンバーが告げられはじめた。
「一番センター 赤星。背番号53」
「二番セカンド 関本。背番号3」
「三番ファースト シーツ。背番号4」
ここまでのアナウンスにも、いつもと違う重々しさが漂っていた。
そして、
「四番レフト・・・」
その瞬間、スタンド全体が凍り付いて、心肺が停止したかのような静寂に包まれた。
「・・・リン。背番号31」
静寂を切り裂くように、溜息とも怒号とも喚声ともつかぬ声なき声、言葉なき言葉が球場を渦巻いた。
私の意識は茫洋たる夢空間をさまよって、それから何秒、何分、何十分経過したのかすら分からなくなっていた。
「プレイボール!」
主審の甲高い声が球場全体に響き渡った。
ふと我に返った私は、何度もスコアボードを見やった。何度見ても、そこには「金本」という文字はなかった。甲子園球場、どこを探しまわっても「金本」を見つけられなかった。
2002年の暮れ、広島カープから阪神タイガースに移籍して、翌シーズンの開幕試合から数えて4年半、甲子園のスコアボードに「金本」の二文字が消えたことは一度も無かったというのに、今そのスコアボードには、その二文字が載らないまま、ついに試合は始まった。アニキがタイガースに移籍してから、実に通産654試合ぶりのことだった。
記録はいつか途切れるもの。ましてや連続記録というものは、途切れたとき初めてコミットされ刻印される性質のもの。記録が途切れた瞬間から、その数字が輝きはじめるものなのだ。ゆえに数字が途絶えることは悲しむに値しない。
ならば、悲しからずや?
否、それは夢想するだけで、見たくても見ることのできなかった戀焦がれた恋人(ゴール)が、忽然と眼前に姿を現した途端、瞬間冷凍の思い出にされてしまう悲しさなのだ。
◇
私が観念の深淵から甲子園に引き戻されたときは、すでにイニングは4回を数え、4-0でタイガースがリードしているところだった。誰が得点に絡んだのかすら分からなかった。
そのときだった。それまで無風に近かったスタンドに、突然、浜風が吹きだしたかと思うと、砂埃の匂いとともに、ぽつりぽつりと雨粒が私の手足を刺激した。しばらくすると、霹靂とともに雨粒の数がみるみる増してきて、次第に球場全体を覆った。そして、一気にグラウンドは滝壺と化していったのだ。
「ゲリラ雷雨だ!」
試合は中断した。
突然の雨に人々は慌しく移動を始めた。私は雨が届かない場所に移動しながら、この予想外の雨を歓迎した。そう、今ならまだ試合は成立していない。このまま雨が降り続いて、雨天中止という事態に思いが及んだ。スタンドで右往左往する観客の脳裏にも同じ思いがかすめたのだろうか。いつもなら突然の雨に迷惑顔の人たちも、心なしか喜々としているように見えた。
よくよく考えてみれば不思議な光景だ。負けているほうのチームのファンが喜々とするならともかく、勝っているチームのファンまでもが喜々としてノーゲームになることを望んでいる光景を、私は過去に知らない。ジャイアンツファンと思いを一にして、この雨が降り止まぬことを願うのだった。
時計を見たら、中断してから10分経過していた。
◇
しばらくの間は威勢よく、滝のように落ちてきた雨も、時間の経過とともに、みるみる勢いが衰えてきた。ファンの願いも空しかった。こちらの思いとは裏腹に、この雨が降り止むのは時間の問題に思えた。甲子園のグラウンドは、これくらいの雨じゃ何食わぬ顔で雨水を飲み込んでしまうことだろう。視界も徐々に開けてきたようだった。
やはり雨天中止は望むべくもなかったようだ。
と、その瞬間だった。
バリバリバン、バッキーン!
雷光が幾重にも枝分かれして、漆黒の天空を切り裂いたかと思うと、間髪いれずにけたたましい轟音が球場に響き渡って銀傘に共鳴した。そして、ほぼ同時にポーンという音とともに、6基の照明灯が一瞬にして光を失った。球場全体が闇の中に投げ込まれたようだった。
それから、すぐに雨は降り止んだ。グラウンドは、すこし整備すれば、いつでも試合を再開できるようにみえた。しかし、6基の照明灯は相変わらず消えたままだった。自家発電なのだろうか。わずかばかりの照明灯だけが光を放っているだけだった。
場内アナウンスがながれた。
『お客様にご案内申し上げます。ただいま、落雷による停電のため電力供給が停止しております。復旧するまで、今しばらくおまちくださいませ』
時計を見たら、中断してから20分経過していた。
◇
アニキの身体をアニキ以上に知り尽くし、鉄人ボディを二人三脚で作り上げたトレーニングジム、「アスリート」の平岡洋二が、あるときこう言った。
『きちんと休養をとりながらプレーをした方が、選手寿命は延びるのではないか?』
その言葉にアニキは、こう返した。
『ファンのなかにはわしを見に来てくれる人もいる。球場に来てわしが出てなかったら、その人たちに申し訳ないじゃろう』
アニキを突き動かしている原動力の本性を見たようだった。
シンプルであるがゆえに、揺るがずたじろぐことのない信念。
あとは運を天に任すしかなかった。
サスペンデッドゲームというルールがある。照明設備のない球場で、日没して試合続行が不可能な場合など、サスペンデッドゲームが告げられて、後日、試合が再開される。それだと、このまま試合再開を免れても、アニキの連続記録はストップしてしまう。しかし、幸いなことにもパシフィックリーグと違い、セントラルリーグの規約ではサスペンデッドゲームの規定が見当たらないのだ。このまま照明の回復が遅れれば、サスペンデッドゲームではなく、ノーゲーム再試合になる公算が大なのだ。
いつしか雨は完全に降り止んだ。しかし、落雷による停電が試合再開を阻んでいた。雨天中止の望みがついえた今、このまま停電がずっと続いてくれても構わないと思った。この際、どんな天変地異でもよいから、とにかく試合がノーゲームになることだけを、私は願い続けていた。この試合さえノーゲームになれば、アニキの連続イニング出場記録も今宵で途切れることはない。
実は、今日の試合を終えれば、プロ野球はオールスター戦を控えて5日間の中休みに入る。すでに、アニキのオールスター出場は決まっているものの、あの怪我であれば辞退も認められるはずだろう。
5日間。そう、5日間もあればアニキが不死鳥のようによみがえることを、誰もが確信していた。きっと何食わぬ顔をして、レフトの定位置で構えているに違いないはずだ。だから、この試合だけは、どうしてもノーゲームになることを願わずにはいられなかった。
時計を見たら、中断してから30分経過していた。
今はただ、主審が無人のホームプレートの後ろまで歩み寄り、「ノーゲーム」と告げる瞬間を待つだけだった。このまま光を取り戻さずにいてくれることを、私は、ただただ念ずるだけだった。
すでにこのとき、試合が中断して、もう40分が経過しようとしていた。
◇
『居酒屋でんまん』のカウンターでは、二人の男がビアジョッキを片手に、一日の労をねぎらう儀式が始まっていた。
「柴君、今日はご苦労様だったね」
「嶋田副長こそ、お疲れ様でした。でも、さすがに今日は疲れました」というと、若い方の男はぐぐっと一気にビールを流し込んだ。
「私もこの仕事は長いんだが、変電所に急な仕事が舞い込むのは、いつも青天の霹靂なんだよ」
「こんな間近で落雷に遭遇するのは初めてだったので、頭ん中が真っ白になりました。今、思い返したとき、マニュアルどおりの対応が出来たかどうか自信ありません」
「いやいや、君は良くやってくれたよ。天変地異だけは不可抗力だ。でも、あの状況下、1時間で復旧できたことは上出来だよ」
「副長に、そう言ってもらえてほっとしました。とにかく一刻も早く復旧しようと、もう、そればかりでしたから。ただ・・・」
「ただ、どうした?」
「いえ、すこし気になったことがありまして。確かに落雷により、送電系の安全装置が作動して自動的に送電にストップがかかったのは分かるんですが、後から確認してみたら、実は落雷地点って少し離れていたんですよ。なのに何故か、安全装置が過敏に作動したのが意外でした」
「ほう、そうなの。まあ、ここの設備全体、かなり老朽化しているから、想定外の反応をしたのかもしれんなあ」
「それはそれでいいんですが、その後で設備の保安点検を終えた後、手動で安全装置を解除しようとしたんですが、何故か、すぐに解除できなかったんですよ。何というんでしょう・・・、そう、誰かが手動解除をロックしているかのような・・・」
「ハハハ、まさかねえ。あの時、変電所内には私と君しかいなかったんだし」
「そうですよねえ。でも、何故かきっかり一時間後にホント、ウソみたいにあっさり解除できたんですけどね・・・」
「今度、設備の定期点検のとき、しっかり整備するように指示しておこう。ところで、柴君もだいぶと疲れているだろうから、何なら明日、休暇をとってもらって構わないから。うん、そうしなさい。今日の件の報告書は、明日、私が代わりにやっておくから・・・」
「そうですか。副長、ありがとうございます」
その時、店の片隅のテレビがニュースを告げていた。
『今日の午後7時10分ごろ、甲子園球場付近の変電所に落雷があり、付近一帯で1時間にわたって停電がありました。そのため、本日の阪神-巨人戦は中止となりました。今日、予定していた試合は9月下旬に組み込まれることが球団から・・・』
「そうか、甲子園球場の試合は中止になったんですね。あ、そういえば嶋田副長、大の阪神ファンなんですって。なかでもメチャクチャ金本選手の大大大ファンなんだということ、女子社員イチ、トラキチの如月さんから聞きました」
「いや、まあねえ・・・。そうだ、今度一緒に甲子園でもどうだい?きっと、我等の金本選手の連続イニング出場記録、まだまだ更新を続けているはずだから・・・」
そういうと男は、顔なじみの店の主人にビールのおかわりを目配せしたのだった。
Contents
第一夜 ~焼きそば~
第二夜 ~岡田構想~
第二夜外伝 ~トレード~
第三夜 ~血液~
第四夜 ~シャドー~
第五夜 ~ぐるぐるまわし~
第六夜 ~濁点~
第七夜 ~ミーティング~
第八夜 ~北京~
第九夜 ~B面のメドレー~
第十夜 ~アニキのいない甲子園~
第十夜外伝 ~金本さんのいない甲子園~
Special Thanks
喜八さん
KENさん
でんまんさん
kisaragi-earthさん
たとえていうなれば、連続イニング出場記録というのは「永久(とわ)の一瞬」を積み重ねるようなもの。「一瞬」を何百、何千、何万と積み重ねても「すこし長い時間」であって「永久」たりえない。そこにあるのは、いつまでも絶え間なく続く「永久の一瞬」という幻想だ。アスリートにとって、1年頑張ったことの勲章が1歳年輪を身にまとうことだとすれば、「一瞬」を紡いでいくというのは若さとの等価交換を強いられる悲しさとの戦いなのかもしれない。これはツライ。
「永久の一瞬」を駆け抜けるアスリートは、いつしか「永久」と「一瞬」との隔たりが、ほんの皮膜ほどの距離でしかないことを思い知る。気宇壮大でいて微小繊細な皮膜。すぐにも破けてしまいそうな皮膜の間隙を一人で駆け抜けることの、なんと残酷なことよ。
梅雨もすっかり明けたこの日は、朝から快晴だった。夏休みを間近に控えた甲子園球場。しかも、伝統の阪神-巨人三連戦のこのカードは、どちらも一勝ずつで迎えた第三戦。双方ともに落とせない一戦だった。現在3ゲーム差とはいえ二位と三位の好調同士だけに、チケットは当日券も含めてすべてSOLD OUT。今朝、急遽、観戦を決めた私は、梅田のチケット屋を何軒かまわって、やっとのことでこのチケットを手に入れたのだった。
とても落ち着かない気分のまま、私が甲子園の三塁側オレンジシートに腰を下ろした時は、すでに試合開始30分前だった。
試合前は緊張感も手伝って、いつも落ち着かないものだ。しかし、今日のそれはいつもとは違っていた。試合の勝敗を案じてワクワク、ソワソワと落ち着かない、というのとは明らかに違うものだった。球場につめかけたタイガースファンの多くも皆、私と同じ思いを共有しているに違いなかった。
球場全体には、すでに異様な緊張感がみなぎっていた。そして、微妙な落ち着きのなさを持て余しながら、一塁ベンチに視線をやりつつ、スターティングメンバーの発表をいまや遅しと固唾を飲んで待ち構えていた。
その「落ち着かない」理由とやらを語るには、昨日の試合の劇的なクライマックス・シーンまでさかのぼらなければならなかった。下柳と上原の投げ合いとなったその試合は、1-1のまま延長戦までもつれこんだ。延長11回表のジャイアンツの攻撃、無死一二塁のピンチを0点で切り抜けたタイガースは、その裏、無死からアニキが四球で歩き、五番、六番が凡退後の二死からこの日七番に入った矢野の右中間を一閃する快打が飛び出して、一塁からアニキが長駆ホームインして劇的なサヨナラ勝ちを収めたのだ。
問題はこのとき起こった。際どいタイミングながらも間一髪でホームインが認められたのだが、大きな代償も負わされた。果敢にスライディングを見せたアニキの足と、ホームインさせじとブロックする阿部の足が、ホームベース上で複雑怪奇な交差をみせたのだ。そして、このときアニキの軸足である左脚の足首を痛めてしまったのだ。
「ケガと言わなければケガじゃない」と豪語する男だ。骨折すらも無かったことにできる男である。だが、今回ばかりは事情が違った。サヨナラのホームを踏んだアニキに、チームメイトの手荒い洗礼が待ち受けているはずだったのだが、尋常ならぬ表情で顔を歪めるアニキを見て、チームメイトは誰一人、近づくことすら出来なかった。アニキの足にただならぬ事態が起きていることは、火を見るよりも明らかだった。サヨナラ勝ちの歓声は、状況が明らかになるにつれて沈黙へと収斂していった。本当なら先発好投した下柳、サヨナラ打の矢野、そして先制打と決勝ホームを踏んだアニキの「39トリオ」で、今期初のお立ち台も期待できた幕切れだったのに。
うずくまったまま、しばらく起き上がれなかったアニキは、結局、秀太と中村豊に肩を抱えられてベンチ裏へと消えていったのだ。そのシーンは夜のニュースで繰り返し流された。
「連続フルイニング出場記録」の赤信号を予感させるに十分な映像だった。
今朝のワイドショーやスポーツ紙も慌しかった。報道によると、昨夜、病院で検査した結果、骨折だけは免れたという。しかし、それすら事実かどうか怪しいものだった。誰もこの報道を鵜呑みにしてなかった。そもそもレントゲンの結果など、この男にとってはどうでもよいことなのかもしれない。大事なことは、今日の試合、彼がグラウンドに立って、守って、走って、バットが振れるかどうかということだった。
さすがに鉄人といえども、今回ばかりは楽観を許さない状況に思えた。報道によれば足は二倍くらいに腫れ上がっているという。腫れが引かないことにはスパイクすら履けそうにない。過去に手を骨折した時は、グラウンドに立って、守って、走って、片手ながらもバットを振ることが出来たのだが、足ばかりはそうはいかない。両足揃ってスパイクを履かないことには、守って、走ることはおろか、グラウンドにさえ立つことができない。鉄人といえども、右足一本で試合に出ることは不可能だ。
アニキの連続イニング出場記録は、昨日で1,270試合を数えた。前人未踏の世界記録だから、誰もが記録の行く末を案じた。ワイドショーのみならず、ネットもこの話題で持ちきりだった。某巨大掲示板サイトでも「【野球】アニキのフルイニ記録を応援するスレ」なるものが立ち、活発に意見が飛び交っていた。記録ストップが懸念される状況について、丁々発止でやり取りが繰り返された。皆、口々に今日の試合の雨天中止を望むのだった。
しかし、見上げる空はピーカン晴れ。悲しいほどお天気だった。
今朝の天気予報でも全国的に快晴の一日。せいぜい雨が降ったとしても短時間の夕立くらいしか期待できないという。水はけの良い甲子園のこと。少々の夕立くらいじゃ、お湿りにしかならないだろう。
なかには運を天に任さず、直接、実力行使を訴える者も現れた。中世の黒魔術の書の教えで、雨虎(あめふらし)を黒焦げに焼いて、粉末にして振りまくと大雨を呼べるんだとか。すぐさま実行に移すことを呼びかけていた。但し、この雨虎は、地中海に生息する種類でないと効果が無いということであえなく自爆を遂げた。
濃霧、台風、竜巻、大地震・・・。黒魔術でも、こっくりさんでも何でも良いから天変地異を呼び起こせと、アナーキーでファナティックな盛り上がりも見せていた。そして、ついには甲子園球場に時限爆弾を仕掛けるデマを流そうという過激な発言までとびだして、ついにはこのスレは封鎖の憂き目を見ることになったのだ。
突然、球場全体がざわめきだした。
いよいよスターティングメンバーのアナウンスが始まった。先攻・ジャイアンツのメンバーが告げられたのに続いて、いよいよタイガースのメンバーが告げられはじめた。
「一番センター 赤星。背番号53」
「二番セカンド 関本。背番号3」
「三番ファースト シーツ。背番号4」
ここまでのアナウンスにも、いつもと違う重々しさが漂っていた。
そして、
「四番レフト・・・」
その瞬間、スタンド全体が凍り付いて、心肺が停止したかのような静寂に包まれた。
「・・・リン。背番号31」
静寂を切り裂くように、溜息とも怒号とも喚声ともつかぬ声なき声、言葉なき言葉が球場を渦巻いた。
私の意識は茫洋たる夢空間をさまよって、それから何秒、何分、何十分経過したのかすら分からなくなっていた。
「プレイボール!」
主審の甲高い声が球場全体に響き渡った。
ふと我に返った私は、何度もスコアボードを見やった。何度見ても、そこには「金本」という文字はなかった。甲子園球場、どこを探しまわっても「金本」を見つけられなかった。
2002年の暮れ、広島カープから阪神タイガースに移籍して、翌シーズンの開幕試合から数えて4年半、甲子園のスコアボードに「金本」の二文字が消えたことは一度も無かったというのに、今そのスコアボードには、その二文字が載らないまま、ついに試合は始まった。アニキがタイガースに移籍してから、実に通産654試合ぶりのことだった。
記録はいつか途切れるもの。ましてや連続記録というものは、途切れたとき初めてコミットされ刻印される性質のもの。記録が途切れた瞬間から、その数字が輝きはじめるものなのだ。ゆえに数字が途絶えることは悲しむに値しない。
ならば、悲しからずや?
否、それは夢想するだけで、見たくても見ることのできなかった戀焦がれた恋人(ゴール)が、忽然と眼前に姿を現した途端、瞬間冷凍の思い出にされてしまう悲しさなのだ。
私が観念の深淵から甲子園に引き戻されたときは、すでにイニングは4回を数え、4-0でタイガースがリードしているところだった。誰が得点に絡んだのかすら分からなかった。
そのときだった。それまで無風に近かったスタンドに、突然、浜風が吹きだしたかと思うと、砂埃の匂いとともに、ぽつりぽつりと雨粒が私の手足を刺激した。しばらくすると、霹靂とともに雨粒の数がみるみる増してきて、次第に球場全体を覆った。そして、一気にグラウンドは滝壺と化していったのだ。
「ゲリラ雷雨だ!」
試合は中断した。
突然の雨に人々は慌しく移動を始めた。私は雨が届かない場所に移動しながら、この予想外の雨を歓迎した。そう、今ならまだ試合は成立していない。このまま雨が降り続いて、雨天中止という事態に思いが及んだ。スタンドで右往左往する観客の脳裏にも同じ思いがかすめたのだろうか。いつもなら突然の雨に迷惑顔の人たちも、心なしか喜々としているように見えた。
よくよく考えてみれば不思議な光景だ。負けているほうのチームのファンが喜々とするならともかく、勝っているチームのファンまでもが喜々としてノーゲームになることを望んでいる光景を、私は過去に知らない。ジャイアンツファンと思いを一にして、この雨が降り止まぬことを願うのだった。
時計を見たら、中断してから10分経過していた。
しばらくの間は威勢よく、滝のように落ちてきた雨も、時間の経過とともに、みるみる勢いが衰えてきた。ファンの願いも空しかった。こちらの思いとは裏腹に、この雨が降り止むのは時間の問題に思えた。甲子園のグラウンドは、これくらいの雨じゃ何食わぬ顔で雨水を飲み込んでしまうことだろう。視界も徐々に開けてきたようだった。
やはり雨天中止は望むべくもなかったようだ。
と、その瞬間だった。
バリバリバン、バッキーン!
雷光が幾重にも枝分かれして、漆黒の天空を切り裂いたかと思うと、間髪いれずにけたたましい轟音が球場に響き渡って銀傘に共鳴した。そして、ほぼ同時にポーンという音とともに、6基の照明灯が一瞬にして光を失った。球場全体が闇の中に投げ込まれたようだった。
それから、すぐに雨は降り止んだ。グラウンドは、すこし整備すれば、いつでも試合を再開できるようにみえた。しかし、6基の照明灯は相変わらず消えたままだった。自家発電なのだろうか。わずかばかりの照明灯だけが光を放っているだけだった。
場内アナウンスがながれた。
『お客様にご案内申し上げます。ただいま、落雷による停電のため電力供給が停止しております。復旧するまで、今しばらくおまちくださいませ』
時計を見たら、中断してから20分経過していた。
アニキの身体をアニキ以上に知り尽くし、鉄人ボディを二人三脚で作り上げたトレーニングジム、「アスリート」の平岡洋二が、あるときこう言った。
『きちんと休養をとりながらプレーをした方が、選手寿命は延びるのではないか?』
その言葉にアニキは、こう返した。
『ファンのなかにはわしを見に来てくれる人もいる。球場に来てわしが出てなかったら、その人たちに申し訳ないじゃろう』
アニキを突き動かしている原動力の本性を見たようだった。
シンプルであるがゆえに、揺るがずたじろぐことのない信念。
あとは運を天に任すしかなかった。
サスペンデッドゲームというルールがある。照明設備のない球場で、日没して試合続行が不可能な場合など、サスペンデッドゲームが告げられて、後日、試合が再開される。それだと、このまま試合再開を免れても、アニキの連続記録はストップしてしまう。しかし、幸いなことにもパシフィックリーグと違い、セントラルリーグの規約ではサスペンデッドゲームの規定が見当たらないのだ。このまま照明の回復が遅れれば、サスペンデッドゲームではなく、ノーゲーム再試合になる公算が大なのだ。
いつしか雨は完全に降り止んだ。しかし、落雷による停電が試合再開を阻んでいた。雨天中止の望みがついえた今、このまま停電がずっと続いてくれても構わないと思った。この際、どんな天変地異でもよいから、とにかく試合がノーゲームになることだけを、私は願い続けていた。この試合さえノーゲームになれば、アニキの連続イニング出場記録も今宵で途切れることはない。
実は、今日の試合を終えれば、プロ野球はオールスター戦を控えて5日間の中休みに入る。すでに、アニキのオールスター出場は決まっているものの、あの怪我であれば辞退も認められるはずだろう。
5日間。そう、5日間もあればアニキが不死鳥のようによみがえることを、誰もが確信していた。きっと何食わぬ顔をして、レフトの定位置で構えているに違いないはずだ。だから、この試合だけは、どうしてもノーゲームになることを願わずにはいられなかった。
時計を見たら、中断してから30分経過していた。
今はただ、主審が無人のホームプレートの後ろまで歩み寄り、「ノーゲーム」と告げる瞬間を待つだけだった。このまま光を取り戻さずにいてくれることを、私は、ただただ念ずるだけだった。
すでにこのとき、試合が中断して、もう40分が経過しようとしていた。
『居酒屋でんまん』のカウンターでは、二人の男がビアジョッキを片手に、一日の労をねぎらう儀式が始まっていた。
「柴君、今日はご苦労様だったね」
「嶋田副長こそ、お疲れ様でした。でも、さすがに今日は疲れました」というと、若い方の男はぐぐっと一気にビールを流し込んだ。
「私もこの仕事は長いんだが、変電所に急な仕事が舞い込むのは、いつも青天の霹靂なんだよ」
「こんな間近で落雷に遭遇するのは初めてだったので、頭ん中が真っ白になりました。今、思い返したとき、マニュアルどおりの対応が出来たかどうか自信ありません」
「いやいや、君は良くやってくれたよ。天変地異だけは不可抗力だ。でも、あの状況下、1時間で復旧できたことは上出来だよ」
「副長に、そう言ってもらえてほっとしました。とにかく一刻も早く復旧しようと、もう、そればかりでしたから。ただ・・・」
「ただ、どうした?」
「いえ、すこし気になったことがありまして。確かに落雷により、送電系の安全装置が作動して自動的に送電にストップがかかったのは分かるんですが、後から確認してみたら、実は落雷地点って少し離れていたんですよ。なのに何故か、安全装置が過敏に作動したのが意外でした」
「ほう、そうなの。まあ、ここの設備全体、かなり老朽化しているから、想定外の反応をしたのかもしれんなあ」
「それはそれでいいんですが、その後で設備の保安点検を終えた後、手動で安全装置を解除しようとしたんですが、何故か、すぐに解除できなかったんですよ。何というんでしょう・・・、そう、誰かが手動解除をロックしているかのような・・・」
「ハハハ、まさかねえ。あの時、変電所内には私と君しかいなかったんだし」
「そうですよねえ。でも、何故かきっかり一時間後にホント、ウソみたいにあっさり解除できたんですけどね・・・」
「今度、設備の定期点検のとき、しっかり整備するように指示しておこう。ところで、柴君もだいぶと疲れているだろうから、何なら明日、休暇をとってもらって構わないから。うん、そうしなさい。今日の件の報告書は、明日、私が代わりにやっておくから・・・」
「そうですか。副長、ありがとうございます」
その時、店の片隅のテレビがニュースを告げていた。
『今日の午後7時10分ごろ、甲子園球場付近の変電所に落雷があり、付近一帯で1時間にわたって停電がありました。そのため、本日の阪神-巨人戦は中止となりました。今日、予定していた試合は9月下旬に組み込まれることが球団から・・・』
「そうか、甲子園球場の試合は中止になったんですね。あ、そういえば嶋田副長、大の阪神ファンなんですって。なかでもメチャクチャ金本選手の大大大ファンなんだということ、女子社員イチ、トラキチの如月さんから聞きました」
「いや、まあねえ・・・。そうだ、今度一緒に甲子園でもどうだい?きっと、我等の金本選手の連続イニング出場記録、まだまだ更新を続けているはずだから・・・」
そういうと男は、顔なじみの店の主人にビールのおかわりを目配せしたのだった。
~完~
Contents
第一夜 ~焼きそば~
第二夜 ~岡田構想~
第二夜外伝 ~トレード~
第三夜 ~血液~
第四夜 ~シャドー~
第五夜 ~ぐるぐるまわし~
第六夜 ~濁点~
第七夜 ~ミーティング~
第八夜 ~北京~
第九夜 ~B面のメドレー~
第十夜 ~アニキのいない甲子園~
第十夜外伝 ~金本さんのいない甲子園~
Special Thanks
喜八さん
KENさん
でんまんさん
kisaragi-earthさん
⇒kisaragiさん
一度、かかわってしまったが最後・・・ムフフ。w
私の鈍色の情景と対照的な、kisaragiさんの暖色系の情景のコントラストがええ感じだと思いません?
⇒らんふらんこ
はじめまして。お褒めの言葉、恐縮至極です。
今年も楽な展開とはいかないでしょうが、そこそこの戦いを見せてくれるでしょう。
今後ともよろしくお願いします。
馬の世界に「無事是名馬」と言う言葉がありますが、なんやかんや言っても、兄貴にはシーズン通して無事でいて欲しいものです。
そして、今年はV奪回といきたいですね!
リンクに名を加えて頂き、光栄です。
ありがとうございました!
3月27日ですね。了解。
その日、東京出張いれるようにします(笑)。
⇒kisaragi-earthさん
これはこれは「女子社員イチ、トラキチ」の如月さん。ようこそです。
「金本トライアングル」の皆さんから、「不謹慎やぞ!」とのお叱りもなく、ほっとしております。
私の「金本愛」をお汲み取りいただけましたか。
(あ、例のやつ、アップ期待してますよ^^)
4人のコラボ! 楽しい企画ですね~。とても読み応えがありました!
そして、最後の第十夜…タイトルを見てドキッとしました。
とても臨場感あふれる展開に、思わず入り込んで、
それがまるで現実であるかのような錯覚に見舞われましたよ~。
素晴らしいお話を、ありがとうございました!
返礼として、3月27日(火)大阪巡礼予定です。
ヨロピク(御内密に・・・w)
私ら褒められて育つタイプやもんな。^^
⇒R62号さん
某所ではお世話になりました。
オッサン三人寄り添って褒めあいしてる時のR62号さんの白い目、忘れもしません(笑)。
またヨロです。
⇒春夏秋冬・冬さん
いろいろとお話したかったんですが、私の取り巻きがきっと妨害工作しとったんですよ、きっと。また、機会がありましたら話しの御相手してください。orz
⇒tacocoさん
これはこれは副長じゃない組長さん。m(_ _)m
「居酒屋でんまん」には「強力金本トライアングル」総出演なんですわ。分かりました?^^ゞ
tacoco脚本家先生に褒めていただくと、私でも木に登ってしまいそうです。結局、「夢十夜」のラストは「アニキへのオマージュ」となりました。さあ次は「千夜一夜」と参りましょうか。(無理無理。何か次の展開を、これから練っていきますわ)
ふとチェックするとこんな物語が!
「アニキのいない甲子園」
タイトルだけで卒倒しそうに。
ドキドキしながら読み進み、起承転結の転換の度に嬉しい裏切りに会い、素晴らしいオチへ。
これで「夢十夜」シリーズ完結とは寂しい限り。
次回シリーズ「フィールド・オブ・ドリームズ、十番勝負」で、どない?
ps.
嶋田氏は名前からいって自分だと勝手に思い込むわたしです。
今日やっと金、土の酔いも覚めて、読ませていただきました。マジ泣きそうになりましたぜ・・・。
阪神球団のカラーが好きで、その阪神の選手は皆好き、誰が一番ていうのは特にないんですが、私の中ではやっぱりアニキは特別な存在かなあ。
世界記録保持者という超華やかな存在の裏で、世界中の誰とも、悩みも苦楽も共にできる人がいない、自分自身との壮絶な戦いがありますよね。 そこにものすごくロマンを感じます。
力作、ありがとうございました!
これがあの時、話題になっていた渾身の。。。
マジ泣きしました。ひーーーんっ。
ゾクゾクしちゃいましたよ、全く。
妄想だって、わかっていながら、ドキドキしちゃいました。
ふーーーっ助けてっ!
詳細が決まりましたら公表したいと思います。m(_ _)m
⇒喜八さん
言わずもがな、「夢十夜」のそもそものスタートは、喜八ブログであることは周知の事実。よって、新シリーズは当然、協力してもらいますからね(笑)。
あ、先日、言い忘れましたが、私の一番の自信作は、喜八さんとこの「やきそばダーウィン」のコメントに書いた「甲子園球場にて」のくだりなんですわ。^^
⇒saiさん
コメありがとうございます。東京でお会いできて楽しかったです。
>妄想も、いつまでも続くことを祈って・・・マス・笑
私の妄想力を100としたら、喜八どんの妄想力は軽くオーバー500のレベルです。すごいっす。妄想がいつまでも続くかどうかは、ひとえに喜八どん次第ですから。^^
⇒nsudouさん
はじめまして。「でんまん」さんのお馴染みさんですよね。大将に聞きました。どうぞ、これからもこちらのブログにお寄りくださいませ。
⇒メルさん
はじめまして。
>仕事中に読んでいたのですが、途中で涙が出そうになり・・・
一言。「仕事中に読むな!」(そっちを突っ込むか?)
いや、そう言っていただけると励みになります。メルさんのフットワークは裏でんまんでも話題になってました。これからもよろしく。
⇒KENさん
タイガースファンそれぞれの胸に「Anoter Story」があると思います。(おっ、綺麗なまとめやんw。コメントで本文以上に目立たんようにwww)
さて、新シリーズは当然、KENさんも参加してもらいまっせ。腕立てして備えといてや。
>文中で「雨虎」のご採用ありがとうございました。
>ストーリーに凄い綺麗に溶け込んでました。
綺麗も何も、奥さん、第十夜の妄想の種は実はKENさんとこで見た「雨虎」ですから。あの晩から「雨虎」の言葉を唱えていたら、いつの間にかこんな物語になってしまったんです。これホント!
⇒御崎さん
はじめまして。お名前のほうは、よくお見かけしております。m(_ _)m
>「夢十夜」シリーズ、ずっと追いかけて楽しませていただいておりました。
それはそれは嬉し恥ずかしです。^^ゞ
なんとか、今後もご期待に沿えるように喜八さん達に頑張ってもらいますヾ(ーー )ォィ
⇒居酒屋でんまんのオヤジ
>先に第十夜ありきやったんちゃいますw
第十夜がこれになったんはアンタのせいやがな。アンタが割り込まんかったら、私は第九夜の予定やったんや。第九夜で、これは上げてませんって(笑)。
⇒虎右衛門さん
>まぁこれからよろしくお願いします!
ハイ、アリガトウゴザイマス!w
ガンバラセテイタダキマス!ww
⇒yuさん
今回の話をアップするに際しては、「強力金本フォロワー」であられるyuさんとあの人とあの人のご意見だけが気になっておりました。はい。金本トライアングルのご機嫌損ねんやろか・・・。ご機嫌損ねたら関西ブログ界でやっていけんしなあ・・・、と。^^ゞ
とにかく、このフィクションをどう捉えるかは、皆さんにお任せしたいと思います。
>ところで嶋田副長っていったい何者?
>柴君は阪神ファンではないのですか?(笑)
うっ、ノーコメント。痛いとこを・・・orz
頼みますよ・・・。
もう・・・泣かせないでください。
「・・・リン。背番号31」
この言葉が昨日の深夜からずっと私の頭の中をぐるぐると回っているのですから。
今日のエントリーはマジになっちゃいます。
スイマセンが・・・。
ゲリラ豪雨のあとは落雷停電ですか・・・。それにもめげずフルイニは途切れなかった。
これはもうアニキ一人のものではない。
阪神ファンみんなの願いであり、叫びだったんですね。
ほんとにホッとしたと同時に、ああ、またオールスター後から
アニキの死闘が始まるのか!とちょっとだけつらくなりました。
こんな日がいつか来たら私は正気でいられるだろうか?
これは遠い話のようでいつ来るか分からない、
明日かも分からないことなんですよね。
縁起でもない話ですがいつも覚悟はしているつもり。
究極は「フルイニングが途切れてもう一度フイニングを続けること」
と金本さんも言われていました。
そんなことが起こってもさらっと笑顔で次の日から
また出続けられるような気がします。
かなり高い確率で。
KENさんのAnother Story のようになれば最高。
私は金本さんが野球界におられる限りは何歳になられても
ずっとその生き方を見続けたいなと思っています。
それが身を粉にして阪神のために働いてくれた選手への
せめてもの私の感謝の気持ちなんです。
もちろん私の思いこみですが。
マジでスイマセン。^^;
いわほーさん、喜八さん、KENさんそしてでんまんさんのコラボ、楽しみに拝見しました。
また、第2弾が近々あるのですよね?楽しみにしています。
ところで嶋田副長っていったい何者?
柴君は阪神ファンではないのですか?(笑)
でも、これで終わると思うと、寂しいですね・・・。
まぁこれからよろしくお願いします!
喜八さんのところでもお会いしましょう!
おっちゃん、先に第十夜ありきやったんちゃいますw
いやいやみんな乗せられてもうたw
最後に、参加出来た事嬉しゅう思います。
これで元の実録派ブログに戻れます 笑
「夢十夜」シリーズ、ずっと追いかけて楽しませていただいておりました。
そして第十夜。もうタイトル拝見しただけで全身が緊張するようでした。
実はメルさんと同じで職場で拝見してましたが(爆)没頭しすぎて、課長の声を危うくスルーするところでした…。
そしてKENさんの「Another Story」…。
今度は危うく画面がにじむところでした。ほんとうに。
素敵なコラボレーションをありがとうございました。
次の「夢」を楽しみに待たせていただきます(^^)
これ以上ない終話ですね! お疲れ様でした。
阪神ファンの間にはいろんな噂がまことしやかに囁かれており、
その1つ1つが、妄想の為の寛美なエレメントとなっています。
その中で、最もシリアスな問題ですもんね。
「金本はいったいいつまで走り続けてくれるのか?」
「記録が止まってしまったとき、金本はユニフォームを脱ぐのでは?」
文中で「雨虎」のご採用ありがとうございました。
ストーリーに凄い綺麗に溶け込んでました。
さらっと如月さんも登場してるし(笑)
その翌試合、金本は岡田監督に欠場を直訴。
その結果、連続試合フルイニング出場記録は1270試合でコミットされた。
しかし金本はわずか1試合の欠場を経て、4番レフトとして復帰を果たす。
そしてこの年、三冠王こそ惜しくも逃したものの打率、打点の二冠を獲得。
チームを初のアジア王者へと押し上げた。
◇
シーズン終了後の金本知憲選手インタビューより抜粋
――「あかんと思ったんです」
――「個人の記録なんかのためにファンが勝ちゲームの中止を望む」
――「そんなことがあってはあかんでしょう」
――「僕は記録を続けるために阪神に来たんじゃないんですし」
――「チームを強くするためですから」
――「個人的にはそら嬉しかったですよ。でも、それは、、、ね」
◇
金本の記録がストップしたあの日から、はや9年。
今日、その偉大なる記録が塗り替えられる。
その男の名前が聖地・甲子園にこだまする。
「4番 レフト 、、、、、金本」
その名前を読み上げたウグイス嬢の声も上ずっているようにも聞こえた。
2016年、○月○日。
金本知憲(48歳)、1271試合連続試合フルイニング出場達成。
その偉大なる記録は、鉄人・金本知憲自身により再び走り出した。
余談ではあるが、ファイテン社の発表によると、
48歳のシーズンを迎えた金本の血液年齢は20代前半のそれだったという。
◇
そして記録達成の瞬間、
ベンチで岡田彰布監督は少年のような満面の笑顔を浮かべていた。
13年目の指揮をとる名将は最後にこう呟いた。
「これでええんや。そらそうよ」
数秒鳴らしてから声を押えて出ました。
ノーゲーム、甲子園遠征に行ってる時に経験しましたが「交通費かけて来たのにー」とほんとはむなしいものです。こんなノーゲームなら、「あー、よかった」ですね。
食い入るように読んでしまいました。
私の仲間の「あにき」ファンにも読んでもらいます。
めちゃくちゃ感動しました。
あまりのすごさに、初コメント残します。
あぁあ・・・、ほんとに妄想なんだけど、
にいさんのフルイニの終わりはどんな風になるのでしょうね?
いつまでも、続くと信じてるファンがついてますからね。
妄想も、いつまでも続くことを祈って・・・マス・笑
様々な要素を織り込んで進行してきた夢十夜。
最後は、いわほーさんの渾身の一筆のおかげで、すばらしい大団円を迎えることができました。
参加者の一人として、心から感謝します。
ちょっとした戯れ言から始まったこのシリーズ、存分に楽しませてもらいました。
また、機会があったら遊んでください。
お疲れさまでした。