星空☆Casting

釣れるものはみんな釣りたい。
夜の海で一人
ひたすら同じ事を繰り返す快感。
さあ、ご一緒に。

「Deep」のメリット

2013-09-21 19:16:49 | アオリイカ

 

2013/9/18/19:30

 

沖の漁り火は28を数える。

背後の山の端からは名月前日、十四夜の月が昇り始めている。

前からも後ろからも照らされて、考え得る限り最も明るい夜の海である。

 

前回の日記と同じ磯に乗った。この時期のマイポイント。ここの事なら何だって知っている。

海には北北西のわずかなうねりがあって短いピッチでショアに寄せて来ている。

背後にある深いスリットの最奥でそのうねりが凝集され水位を高くし、崩れ、その場所でだけ波音をたてた。

 

ほぼ文句もなく求める通りの海であるが、ただひとつ、小さな傷のようにゆるい風が吹いていた。

真正面のdeepに投げたいのにその方向は横風になる。吹き続ける、いやらしい、息の長い風である。

良い事ばかりの人生はひょっとすると存在するのかもしれないが、良い事ばかりの釣りは絶対に存在しない。

 

遠いdeepのボトム狙い。エギはEGIMARU3.5Deep。海の光量を考えてカラーはMM アジオリーブを選ぶ。

そのフルキャストの位置で水深は7~8mである。

 

僕は、ボトムを釣りたいとしても着水後のフリーフォールでは底を取らない。

ただ適当に、何となくボトム付近であろう辺りまで沈めてやれば良いと思っている。

アオリイカがボトムべったりにいるのだとしても(ここにはいるのだが)やや高い位置からしゃくり始めた方がアピールできる範囲は広いのだと信じている。

そしてひとシャクリして、その次のフォールでようやく底を取り、その後足下まで繰り返す。

 

1投目。

ラインは微妙に風を孕んで右方向に膨らむ。

適当に沈めながら、ロッドを風上に捌いてラインの膨らみを修正していく。

ある程度納得のいく水深までエギを沈めたら、2発の瞬間的な強いシャクリで更にその膨らみを小さくする。

ひと呼吸してもう1発ジャークを入れて、ロッドを下げてテンションを強く掛けたまま底を取りにいく。

上手い具合に潮の流れは風向きと同じで、エギも流されて結局ラインはほぼまっすぐになり、丁度その位置でコッとボトムを感じた。

そのボトムのテンションを利用してラインを真に完全にまっすぐにし、やや待ってまた2発、高い位置でジャークを入れてすぐにテンションフォール。

もうそろそろボトムかな、と思う辺りで、ティップに「みしぃぃ」と重量が乗った。迷わず真上にあわせを入れる。

 

どしん!

 

もう何度でも書くが、沖のdeepで掛けたアオリイカの重さはつくづくこの世の良いものを全て集めたような充実感である。

素晴らしいの一言である。

その重さを噛み締めながらゆっくりとリールを巻き、随分手前まで来てアオリイカが水面に出る。

18cm。今のアベレージよりやや大きいか。

しかし写真がだめだな。スマホで写真を撮る横着を覚えてしまった。もうしない。反省。

 

2投目。

同じ方向、同じ距離、同じ感覚で同じ事を繰り返し、しかし今度はボトムに置いたエギがツーーーとトルクのない等速直線運動で持っていかれる。

この手のあたりの常として、やや送り込んでからあわせを入れた。

その等速直線運動は伸ばした触腕を納める動きなのである。エギを引き寄せて、残り8本の腕でひしとエギを抱くのを待つのである。

 

どしん!

 

初っ端から連発の18cm。

今日はやはり良い海なのだなとほっとする。癒される。

 

ところで。

Deep typeのエギのメリットって何だろう?

1.飛距離が出る。

2.deepまでの到達が早い。

3.ボトムを離さず探ってゆける。

4.操作感が明確である。

5.風に強い。

すぐに思い浮かぶのはそんなところだろうか。

しかしこれらはどれもイカを乗せる「前」の話である。釣りがしやすいかどうか?という事に過ぎない。

肝心の「イカに抱かせる事」に関してのメリットはあるのだろうか?

あるのである。そしてそれがDeepエギの最大のメリットだと僕は思っている。

 

それは「ラインテンションと姿勢」という事。

アオリイカが乗るのはほぼフォール中であるが、そのフォール姿勢が「イカを乗せる事」にとってとても重要なのは良く知られた事である。

水平からやや頭下がりの角度。

おそらく死角とか油断とかそう言う事なのだろうと思うが、アオリイカがエギを抱く決断の瞬間にエギがその角度にありがちな事はサイトをやり込めばよく分かる。

ボトムに着けた尻上がりのエギにアオリイカが良く反応するのもおそらく同じ理屈である。

 

問題は遠いdeepでその姿勢を作り出すという事。

シャローやノーマルウェイトのエギでそれをやろうとするとラインテンションを極限まで抜かなければならない。

浮力のあるラインの抵抗がエギの頭を上げさせる。加えてラインテンションを掛けてしまえばどうしたって頭上がりになってしまう。

この日のように風があったり、距離が遠かったり、足場が高かったり、そんな場面でラインテンションを抜く事はあたりをとる事をとても難しくしてしまう。

明るい昼間であればラインの挙動で明確にあたりは取れるのでテンションを抜いても問題はないのだが、

これから秋アオリ終盤に向かう越前エギングのメインの舞台は何も見えない闇磯なのである。

 

あたりが分からずしゃくったら乗ってましたというのはいやなのだ。なぜかとても切ない気持ちになる。

あたりは明確に感じたい。そしてあわせたい。釣った感が違う。そのためにはある程度以上のラインテンションを持たせなければならない。

Deep typeのエギの最大のメリットはここにある。

強くラインテンションを掛けながらも頭下がりのちょうど良い姿勢を作ってくれるのである。

 

付け加えるが、これは決してノーマルウェイトのエギを否定する話ではない。

シャロー帯やデイエギング、あるいはライン負荷の少ない上層の釣りではノーマルウェイトの方がはるかにメリットは大きい。

ゆっくり見せられる時間が作れるという事だから。

あるいは、抜いたテンションの中で微妙なあたりをとるのが面白いんだよと言う変態さんもいるかもしれないw

 

要は適者適材適所である。

僕の、この時期の、この場所は「Deep type」である、という、そう言うお話。

 

さてこの日の釣りの続き。

先の2杯を釣ったところであらかじめ連絡を取り合っていたダイさんが登場した。

この場所は初めてらしい。一通り場所のレクチャーをして2人並んで釣り始める。

 

間もなくまた、ボトム付近のフォール中にコンッ!とあたり。これは即あわせ。

 

どしん!

粒ぞろいでまた18cm。明らかに地合いだな。

 

この日握ったSPECIMEN 85deepは、このウェイトのエギをしゃくる感触がとても気持ちいい。

ダンパーの良く効いた高級車のサスペンションのように、ドフッドフッと、ベリーからやや上の位置で適切な仕事をしてくれる。

そしてやはりバランスである。自重の軽いパッツン系のロッドではないが全く持ち重りがしない。最適なポジションをぴたりと決めてくれる。

しなやかに湿った生物のようなその質感は、GRFシリーズと同様、やはりBREADENの真骨頂なのである。

 

ダイさんも釣り始めて間もなく2つ程続けて乗せる。

エギはノーマルで、着水後からかなりの時間を掛けて底を取っている。

慣れないポイントに、時々軽い根掛かりを発生させて海藻のかけらなども釣り上げた。

ちらとこちらを見ながら

「まだ去年始めたばっかりなんすよ...」

何も言っていないのに、そんな事をつぶやく。

 

そしてやはり食味の話になる。この人と顔を合わせるとそれは避けがたい事である。

何やら美味しそうな単語をいくつも並べて僕の集中力を削いでくれたw

エギを遠くのボトムに放置したまま話に夢中になっていると、そんなタイミングを見計らって右手にトンッと感触が来たりして。

一瞬その意味が分からずわぁ!とあわせ遅れ、何杯か逃してしまう。

でもこの釣りにはどこかのんびりとした余裕がある。気の合う友人と話しながら行うには最適の釣りである。

月に照らされ、漁り火を眺め、波音を聴きながらの屈託のない時間が流れていった。

 

とは言え我々はやる時はやるw

ダイさんは随分上層で今日一の20cmを乗せた。

月で浮いたのか。横を走る定置網の太いロープのシェードに着いていたのか。

上にもいるんだなとdeepにこだわり続ける僕の認識を変えてくれた。

「へっへへ~たっのっしいな~」

などと鼻歌混じりなのがいまいましいけどw

 

僕もいくつか追加。

これは過跳3.5Deepで。

このエギの左右へのスライド幅にはびっくりする。

とーんとーんとーんとティップのやや下を使った軽いしゃくりから生まれるそのぬめぬめとした動きは生命感に溢れている。

直線的ではなく上下方向にも鷹揚のついたそのターンとターンの間の一瞬の間。その瞬間に乗ってくる事が非常に多い。

リズミカルで激しい動きの最中に、フォールを待てずにアオリイカを堪えきれなくさせる何かがあるのだと、思わざるを得ない。

 

腹ぺこで帰宅したがひとつも手を抜かずにイカを捌く。

初秋の定番。アオリイカ定食。KIRIN秋味とともにこれを食べるとあぁ秋が来たのだなぁとしみじみと思うのである。

時間は既に23:00を回り明日は朝から仕事であって、こんなものを食べるべきではない事はよく分かっているのだが...。

 

 

9/20/19:00。

また同じ場所。十六夜の夜。

風もなくうねりもなく、潮だけがめまぐるしく方向を変えながら常に走り続けた。

なぜかサイズがやや落ちたが、それでもある地合いで16~18cmが3つ続く。

 

 

この日は独りで、ゆっくりとじっくりと攻めながら3時間程海に立ち、計15杯を数えたところでロッドを納めた。

 

 

皆さ~ん。エギングはエギの塩抜きをするまでがエギングですよw 

 

よく働いてくれたと労いながらエギを並べる。

 

「頭は低く。腰は軽く。」

 

エギを見るといつもこの言葉が浮かぶのである。

でも難しいよなぁ。

それって。

 

TACKLE DATA 

ROD/BREADEN SPECIMEN 85deep

REEL/ DAIWA CERTATE2506H

LINE/VARIVAS Avani Eging MAX POWER0.8号

Leader/YGK 海藻ハリス3号

EGI/BREADEN EGIMARU3.5deep,過跳3.5deep

 

コメント (17)
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