守屋貞治作の石仏については、これまでにも何度も記してきた(例 「名工 守屋貞治の石仏を訪ねる⑦)」。善福寺のものは、わたしが守屋貞治作の石仏に触れた当初のもの。生家から近かったことや、前回も触れたようにおばさんの家の近くだったということの親近感もあって、興味を持ち始めた初めのころ訪れた。
この光背前面に「十八番」と刻銘のある如意輪観音は、貞治の石仏のなかでも小ぶりなものだ。貞治が遺した『石仏菩薩細工』には、「如意輪観世音菩薩 同所同寺願主 上穂町舛屋」と記されているもの。ここでいう同所とは「大久保」であり、同寺とは「禅福寺」を示す。
左側面に「施主 大沼嘉蔵」とある。顔の表情と口元の独特な彫り方は、貞治の特徴をよく示している。台座の蓮弁細工は簡易なものだが、このあたりは初期作品から円熟期に入る間のものには多い。小ぶりな石仏なのに立体感があり、この手(小型光背仏)の石仏としては突出している石仏のひとつと言える。
続く
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