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小菅の柱松行事から ③

2016-07-22 23:52:17 | 民俗学

小菅の柱松行事から ②より

 『小菅の柱松-北信濃の柱松行事調査報告書』(2008年 飯山市教育委員会)によると、神輿渡御において階段を降りる際に「着流しの若い衆が担ぎ手に加わる」とある。確かに同書に掲載された(P-46)写真には、階段を降りる神輿に、赤い襷を掛けた若い衆が加わっている姿が写し出されている。しかし、今回は階段を降りる際に若い衆が手伝うことはなかった。柱松の行列に加わらなければならない若い衆は、今回は神輿渡御にかかわらないのか、と思うとそうではなく、階段を神輿が降りたあとの押し合いらしき場面には若い衆の姿があった。実はこの日記を書くにあたって、同書の記述を読んだしだいで、それまで若い衆が神輿渡御に参加していたとは思っていなかった。あらためて同書の記述を確認しようと撮影した写真を追うと、階段を降りる際の光景に着流しの若い衆の姿はない。その後わたしは神輿の場所を離れたため、この若い衆がいつ神輿に加わったのかはっきりしない。渡御の先頭が鳥居をくぐろうとするころ、遠景として撮影した写真に赤い襷を掛けた若い衆らしき人々の姿が写っていた。おそらく階段を降りたあとの押し合いのために加わったと見るが違うだろうか。同書の記述は平成19年の柱松行事からのもの。記述から察すると、この年は神輿の渡御時に雨天だったよう。そのため押し合は行われななかったと記されている。前述したように神輿から離れていたわたしは、押し合いを実際に目にしていない。が、記述をおさらいすると、それらしき騒々しさだったのだと先頭にいて察知した。そしてそこに若い衆が写りこんでいるのである。あくまでも想像に過ぎないが。残念ながら予習をしてから見学しなかったがための後悔である。

 さて、神輿の渡御の次は柱松の行列である。神輿渡御が終わると、すでに講堂前広場では、柱松の行事を見るのに適したポジションを、と場所取りが始まっている。いわゆるこの行事が紹介されるときによく使われる写真が撮られるアングルがベストということになるのだろう。遅れをとったわたしたちの仲間も、そんなポジションに陣取ったわけだが、先客がいて好位置とはゆかなかった。そんなこともあり、後ことはその時に考えればよいだろうと、わたしは行列見学に護摩堂に向かった。午後3時を過ぎたころ、奥社参道を降りてきたところにある護摩堂から柱松の行列が、祭りの舞台である講堂前に向かって出発する。氏子総代の両脇に槍2本が先頭になり、猿田彦が続く。神輿渡御には猿田彦のほかに手力雄命と鈿女がついたが、柱松の行列では猿田彦のみ。猿田彦に続くのは松榊と言われるサカキで、列の左手に赤い幣束をつけた松榊、右手に白い幣束をつけた松榊が並ぶ。カツラの木が使われ、前者は上の柱松(お旅所側)、後者は下の柱松のてっぺんに挿される。続いて尾花も上と下の柱に挿されるように2本。続いて火口焼きでこしらえた炭とツゲキ、火打石などを入れた火打ち箱も同じように上と下用にふたつ。次に槍2本と「天下泰平」と書かれた日旗、「五穀豊穣」と書かれた月旗。その後ろに長柄につけられた宝剣旗が2本。そして直径30センチほどの太鼓を左肩に担ぎ、右手に赤い布で覆われたバチを持つ「松太鼓」はくねり山伏と言われ、介添え人がつく。その後ろの龍の頭をつけた刀形の青龍刀旗は、松太鼓と行動を共にするという。次の松子を先導するような位置どりの「仲取」は、赤褐色の面をつけ、頭髪はぼさぼさで異様な様相で太刀を背負う。その背後にいよいよ松神子と言われる子どもが上と下の柱用に2名、若衆につないで連れられて続く。さらに若衆が上下それぞれ2名つく。松榊から火打ち箱までのそれぞれ3名と、松神子に続くそれぞれ3名が「若衆」と呼ばれる人々で赤い襷を掛けている。続いて浴衣の上に法被を着た2人で担ぐ太鼓には、バチを持った白い狩衣姿の伶人1人がつく。笛は伶人8名ほど。間をとらずに巫女4人が続くと、その後ろに御榊と言われる神輿がつく。この御榊は神輿の渡御の際にも参列する。こちらの榊はイヌツゲだという。スギの枝を利用した御玉串に続くのは総代だろうか。そしてエンジ色の狩衣と紫の袴を着用した社司が続き、両脇を青い衣装で山伏風の警護役が2人つくとともに、背後では傘持ちがついて傘を社司にかざす。さらに祭官や警護がついてお旅所まで練る。

 行列は護摩堂南側の階段の上から出発し、階段を降りると大聖院石垣前を北へ向かって、参道を左折して集落内を下る。先頭が講堂前に着くころには、松榊と尾花は先回りして柱松に挿される。以降松神子や御榊などすべてお旅所に向かって進み、行列の練りは終わる。

 

尾花と火打ち箱

 

総代、槍、猿田彦、松榊、尾花と続いて出発

 

 松太鼓(くねり山伏)

 

仲取と松神子

 

松神子

 

尾花が柱松に挿される

 

御榊、御玉串

 

続く

 


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