○主と二人で 田の草取れば 腰の痛さも苦にならぬ(塩沢)
○夏の田の草 三度が限り あとはおもだかなるがまま(北福地)
○いやの田の草 三度が限り 残るおもだか 取れはせぬ(荊口)
『長野県史民俗編』南信地方に掲載されている田の草取りの歌である。
田の草取りについて同書には詳しくは触れられていない。かつては除草剤というものを使わなかったから田の草は人海戦術だった。手があるほどに草取りの回数も多くしたという。「やるほど良い」されていたが故のことだ。今では幼穂形成期以降は田に入らぬ方が良いとも言われるが、稲作はけっこう微妙なものなのだ。今年は我が家では除草剤がうまく効かなかった。ということで田には草がびっしりと生え、それもけっこう丈も長いものが出ている。まるで除草剤を撒かなかったように。そこで土曜日は「田の草取り」とあいなった。わたしとしては久しぶりのこと。この日記でも何度か触れた田の草取りであるが、何より夏の日が照る日中の仕事には向かないが、雨の中で行う田の草取りもつらいもの。だから曇天下での田の草取りは最も体には優しい。とはいえ、かつては「雨が降ったら田の草取り」と言われるほど雨の日の仕事として捉えられていた向きが強い。逆に捉えれば「雨の日でもできる仕事」だったと言えよう。
先日伊那インターを下った交差点の脇で信州大学の学生が回転式の除草機を押していた。この一帯は信州大学の農場になっていて、アクセスの交差点という環境にしては珍しく水田が広がっている。回転式の除草機も今ではそれほど見られなくなったが、それでも押している姿を時おり見る。我が家にもそれがあって、アルミ製の軽い現代版のもの。軽いから押しやすいが、その分草が取れないかもしれない。その回転式除草機を押してみたのだが、あまりの草の多さと丈の長さで効果を感じられない。そこでいわゆる手で行う田の草取りに戦術を変えた。しかしこの田の草取りは冒頭の歌にある通りなかなかの重労働。何より腰をかがめて作業を続けるわけで、腰にくるし、ふだん使っていない筋肉を使うから必ず翌日以降に残る。つらいから焦ることなく少しずつ進めるのがよい。妻はこの回転式の除草機のことを「八反取り」と言うが、かつて八反取りと言われたものは回転式のものではなかった。回転式のものはあくまでも回転式除草機と言ったようだ。また「八反」とは書かずに「八段」と書いた、とは大正9年に信濃教育会が発行した『女子農業教科書』による。同書には雁爪とか田打ち車と言われる除草機も絵と共に掲載されている。
マジで、手に入れたいです。
大正9年に信濃教育会が発行した『女子農業教科書』
で、電話で問い合わせしてしまいました。
大正7年、昭和2年、昭和7年版の『女子農業教科書』があるそうです。