Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

自然石道祖神数とサイノカミ

2024-03-10 23:32:18 | 民俗学

 2月3日の長野県民俗の会第139回例会において、〝「道祖神の獅子舞」から見えてきたもの〟と題して民俗地図を利用して発表を行った(本日記にはアップしてないが、後日掲載予定)。発表の主旨は、正月を中心にして行われる獅子舞が、ほぼ道祖神とかかわりがあることに触れ、その分布域が山梨県から長野県の東信と南信の諏訪と上伊那、とりわけ伊那市地域にあることを示した上で、「道祖神の獅子舞限界線」を分布図に記載して、その分布域との関係性を自然石道祖神の分布域とトレースしながら示したものだった。

 当日の発表において、長野市戸隠でも道祖神の獅子舞が行われているという指摘を受け、さらにデータを地図上に加え、修正する必要性があることを認識したわけであるが、その修正作業はともかくとして、ここに別の図を示して、自然石道祖神の分布域を様々な視点で捉えてみようと思う。

 

 ここに示した図は、例会後に自然石道祖神の数を示す地図を作成し、その上に他の情報を載せる試みを行ったものである。もともと自然石道祖神の分布状況については、以前本日記でも掲載した例がある。その図は現在試みているQGISとは異なるエクセルバージョンであったが、今回はQGIS上で作成したため、重ね合わせが容易となる。長野県民俗の会第139回例会において示したサイノカミ祭祀場所を示した地図を自然石道祖神の分布域に重ね合わせた図が、今回示したものである。さらにここには未修正の道祖神の獅子舞限界線を載せてみたわけであるが、例会で指摘された長野市戸隠あたりにもサイノカミの自然石があること、またサイノカミの祭祀例が見られることは注目されることで、道祖神の獅子舞限界線を修正することで、自然石道祖神と道祖神の獅子舞分布域がかなり重なる姿が予想される。ただし、いっぽう道祖神の獅子舞が盛んな東信地域に自然石道祖神の分布が重ならないのは、そもそも道祖神数の原典である『長野県道祖神碑一覧』を作成する際に、東信地域のデータが網羅できなかったところに起因する。ようは東信地域には公刊の石造文化財報告書が乏しかったところにある。それらも含めて修正を加えれば、より一層分布域は重複してくるはず。

 その上でこの図を見て指摘しなければならないのは、サイノカミ祭祀例が地図に示されながら自然石道祖神が少ないエリア、ようは下伊那や木曽の存在である。この地域には自然石の代替となる祭祀物があったのか、それとも自然石道祖神の存在が忘れられてしまったのか、それらを解かないと、たとえこの図で自然石とサイノカミ、そして道祖神の獅子舞という異なった例を合わせ解いたとしても、主張は弱いものとなっしまうだろう。いずれにしても、この自然石道祖神の分布状況と異なった事例との重ね合わせから、何か読み取ろうという試みは、始まったばかりである。

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