Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

記憶を奪う

2019-06-16 23:16:46 | ひとから学ぶ

 昨日、親戚の保険屋さんに車の保険の更新に関する打ち合わせで立ち寄った。今78歳という方は、わたしが車を持った二十歳前からお世話になっている。「ずっと元気でいてもらわないと困る」なんていう会話をするようになってしまったが、昨年車を買い換えたという。このところ盛んにニュースに登場する高齢者ドライバーの事故の話で盛り上がった。その方が昨年買い換えた車はマニュアル車だという。「安かったから」と言うが、わたしが考えているようにマニュアル車なら最近話題のような事故は起きない、そう言われる。そもそもこれまで2度の2日間に渡る高齢者講習を受けたが、この講習で免許が更新できないという例はないと、保険屋さんは言う。見るからに「危ない」と思われる高齢者も、免許更新されているといい、盛んに言われるような事故は、未然に防げるはずだとも。何のための高齢者講習なのか、まったくわからないとも。そして一斉年齢を定めて規制するのは納得できないという。人によってまったく違うというのだ。確かに90歳を超えてもふつうに運転する希な人もいれば、中年でも超高齢者とさほど変わりないような危なっかしい運転をするひとはいる。もちろん最近の若者は、経験不足が多い。危険察知能力は、そうした環境になければ、なかなか整わない能力だ。

 世論は何らかの規制に向かっているが、昨日87歳になった方も訪ねた。昨年、免許を返納したというが、本人に聞くと「返納していない」と答える。その意味が後でわかった。奥様が了解を得ずに返納したという。だから本人にとっては、いまもって「免許はある」と答える。医者の勧めで返納したと奥様は言うが、どうも返納したことで、だいぶ物覚えの低下はもちろんのこと、意欲がなくなってしまったようだ。運転できるということで、自由に身動きできていたのに、手足を奪われたような状況に陥り、急激な変化がやってきている感じだ。もちろん、だからといって危ない状態で運転するのは選択すべきではない。しかし、世の中の高齢者の手足を、一様に奪うような流れだけは、一考してもらいたい。さもなければ、この国の老人の将来はずいぶん暗いものとなるだろう。

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