◆あらすじ
台湾に渡った雲斎の目的は、もう一人のキマイラであり、今は捕われの身になっている巫炎に逢う事であった。弟子であり、九十九三蔵の兄である乱蔵と巫炎を捕らえた猩猩の話によれば、巫炎は台湾でいくつかの村を焼き尽くし、人を何人も食い殺してきた為、自ら猩猩の下に、捕われたと言うことであった。
そして日本では、円空山を大鳳が訪れ、雲斎と九十九に別れを告げに来ていた。九十九は大鳳を止めることが出来ず、さらにはそこに訪れた異相の外人フリードリッヒ・ボックに敗れた事から、自暴自棄の道へと進んでいくのであった。
そこに帰ってきた雲斎は、九十九の暴挙を止めさせるが、しかし九十九は、かつての力強さを取り戻す事が出来なかった。雲斎は九十九に更なる強さを掴ませるべく、「この石を割れ」と巨大な石を持ち出すのであった。
そして九十九は、龍王院弘の呼びかけに応じて、新宿へと向かう事になる。龍王院弘は新宿で大鳳の姿を見たというのだ。九十九と龍王院弘は闘う事になるが、全く手も足も出ず、そこを通りかかった脇田涼子に救ってもらうのであった……。
◆新登場キャラ
★猩猩……台湾に住む玄道師。雲斎の友人。
★巫炎……キマイラを体内に有する三人目の男。大鳳と九鬼麗一の父親。
★斑孟……猩猩の弟子。九十九乱蔵に心酔する青年で、巫炎に両親を食い殺されている。
★フリードリッヒ・ボック……「ルシフェルの座」を求める謎の男。鬼剄を使う異相の外人。
★脇田涼子……フリーのデザイナー。後に、九十九の初体験の相手になる。
◆この巻の見所
九十九三蔵、石フェチになる。
前半は巫炎と会いに行った雲斎の話がメインですが、それ以降は九十九の話になってきています。かなり面白くなりそうです。
そしてまた、キマイラを狙う第三勢力の存在が見え隠れし始めました。フリードリッヒ・ボックの登場です。これは結構重要な役割を担ってくれそうなキャラクターで、ファンは少ないようですが、かなり頑張って、今後も出演してくれています。
主役が大鳳や九鬼ではなく、九十九ではないかと思わせるようになった原因がこの巻です。正直この後、九十九はマジで出ずっぱりになります。
この巻ではかなり九十九がヤサグレています。ダルマのボトルを何十本もあけてしまったり、無意味な喧嘩を繰り広げたり、挙句の果てには深雪をレイプしようとするなど、不良まっしぐらなところですが、そこから立ち直るきっかけとなったのが……これは、ちょっとネタバレですね。いや、もうネタバレは十分にしているのですが。
このあたりから、物語の核心に向かって、どんどん面白くなっていきます。アクションシーンもこれ以降の作品に通じるものになったり、今まで硬くなりすぎていたものがようやく取れてきたりと、十分読み応えのある内容です。
―WITH MY OWN EYES(TANDU & McLOUD REMIX) / SASH!を聴きながら―