平倉山荘 -- BLOG --

 蔵王を歩く・滑る。日々を記す。空想上の山小屋~たいらぐらさんそう~

湯殿山東斜面大滑走

2014-05-04 | 山・やま・Mt.
湯殿山東面 山スキー滑走
メンバー:2名 斉TO先輩(L)と私

上山7:15=志津=ネイチャーセンター8:40~9:18-石跳川―装束場鞍部(昼食)11:30~12:05―湯殿山山頂直下13:12~13:20-湯殿山東斜面(滑走)―石跳川―ネイチャーセンター14:10~14:30=上山

装備
山スキー(ブリザード+ジルブレッタ404)、アルペンブーツ(ヘッド)、ゴア雨具、ヘルメット、サングラス、夏用キャップ、毛糸帽子、冬用グローブ、ビーコン(ピープス・先輩から借用)

行動記録
先輩から連休中に山スキーに行かないかとメールが届いた。先輩とは、私がスポーツクライミングを始めたころに知り合った同じ市内の方。地元の高校、大学山岳部を経て当時県内で最も先鋭的な山岳会に所属していた方である。ヒマラヤ登山も経験しており本チャンの山屋である。

人工壁のクライミングには何度となくご一緒しているが実際の山行きは今回が初めて。昨年は祝瓶山登山の計画を立てていたが結局は都合がつかず、今回が初山行きというわけだ。お互い忙しいので少しでもいけるチャンスがあったら行っておくべきだ。

誘われた計画は「月山方面への山スキー」。県内の春スキーと言えば月山か鳥海山。この時期、蔵王では長く滑れるところはないはずだ。月山への山スキーとなると1993年の月山肘折ツアー以来の21年ぶり。

山行前日に詳細メールが届いた。週末の業務が忙しかったので手軽なルートをお願いしていた。内容は「湯殿山東面大滑走が楽しいが、手軽なルートならばリフト利用の月山山頂往復」というもの。「湯殿山滑走かぁ。面白うそうだ。」山のベテラン先輩との初山スキー、せっかくのチャンスである湯殿山滑走に連れて行ってもらう事にした。

しかし私自身、今スキーシーズンはスキーを履いたのが一日だけ。仕事が忙しかったことと地元スキースクールの事務局をしているので、休日の度にスキー場に行っても事務仕事で終わる日が続いた。そんなわけで今回のお誘いには体力的にもマテリアル的にも不安のある状態での山行となる。

先輩の車に乗せてもらい上山を出発する。高速道は使わず一般道で志津を経由しネイチャーセンターへ向かう。センター周辺はまだ車は少ない。身支度をしていると先輩が同じ職場の女性の方とお会いする。単独で湯殿山に登りに来たとのこと。

今回は新雪(表層)雪崩の心配はないが念のためビーコンを装着する。私はビーコンを持っていないので先輩からお借りする。出発前ビーコン捜索の方法を確認する。センターからすぐにシールを張って石跳川に沿い歩き出す。

川はまだ雪に覆われているが、所々口を開けている個所もある。「ここでずれ落ちたら川にドボンっだな」という個所もある。1時間ほど登ったところで小休止。風が出てきた。予報では高気圧に覆われ穏やかな日になると思っていたが、日本海側から装束場鞍部を吹き抜けてくる風は強い。

鞍部に向かって行くと進路左手に湯殿山が現れた。標高1500mの山ながらも急峻な山容に圧倒される。「確か、あの斜面のはずだ。」以前に二度滑走している先輩の記憶で今日の滑走ルートを伝えられる。「えっ、あそこを滑るの!!!」。今シーズン一日しかスキーをしていない体力的な不安と山頂周辺のクラック、そして覆いかぶさるような急斜面。不安で急に無口になる自分。「たぶん自分には滑走点までも行けないな」、「途中で引き返します事にしよう」と完全に弱気になっている私。やはり本チャンの山屋さんは次元が違う。「装束場鞍部往復が私にとっては安全山スキーだな。」と内心思いながら鞍部を目指す。

鞍部に近づくと姥ヶ岳方面から山スキーヤーが滑り降りてくる。月山リフトを利用し姥ヶ岳を登りこの石跳川に沿ってネイチャーセンターまで下るルートが人気のようだ。GW連休とあってその数は結構多い。

鞍部手前の風の弱い場所で昼飯を摂る。その後、ヘルメットを被りスキー板をザックに括り付け、滑走点である湯殿山山頂へと続く尾根に取り付く。姥ヶ岳方面から滑って来た10名ほどのスキーヤーとボーダーが同じ尾根を先行する。先行者がいることに内心安堵する。

休憩をとる先行グループを追い抜き、尾根を登ってゆく。クラックを慎重に越えて進む。尾根は狭く藪を越える個所もある。根曲り筍の根本はアルペンブーツの底がよく滑り足を取られる。振り返るとこれまで姥ヶ岳に隠れていた月山が姿を現した「大きい!」。庄内平野側の風景も眺望できる。「素晴らしい景色ですね。」と言葉を発するも、内心はこの後のルートの危険性が気になり風景をじっくり楽しむ余裕はない。先輩はそのこと察してか先頭に立ちリードして行く。二つの小ピークを過ぎたところで鞍部が現れる、その先が湯殿山山頂のようである。滑走点はそこ。ここまで来たら先輩について行くしかないと覚悟を決める。

山頂直前に藪が現れた。これを越えて高みへ進むか、越えずに目の前の雪稜を横切るか。先輩の判断で急な雪稜をトラバースし山頂直下から滑りだすことにする。滑走点到着。先輩のGPS機能付きデジカメで座標を記録しておく。先ほど追い抜いてきたグループも私たちの後を追ってきている様子。

シールを剥がし板を履く。滑り込む先は急斜面。場所によっては下が見えない。先輩は「下から動画撮影するから」と言ってカメラを携え急斜面に滑り込む。頼もしい。私は「昔取った杵柄」などと、この場においてそんな自信は禁物と自分に言い聞かせ滑りだす。「腐れ雪だから転んでも止まるから大丈夫!」と先輩の言。厳しい登山経験のある先輩はカリンッカリンの斜面を経験している。滑落したら…の世界を。

途中からは私が先行して滑ってゆく。なおも急斜面は続く。大き目にターンをしてゆくと、ターンの時に蹴り散らされた雪の塊が自分を抜いて斜面下に転がり落ちてゆく。滑走終了点の石跳川が近づくあたりからやっと気持ちに余裕が出てきた。小さなターンを刻み滑走を楽しむ。先ほど見上げて絶対無理だろうと思っていた斜面を、いま滑り降りている。満足感が湧き上がる。自分の冒険心の枠を越えられた満足感である。近年ブームになっているバックカントリースキーの魅力を味わい、湯殿山東斜面大滑走を終える。

その後、ネイチャーセンターまでは石跳川に沿って緩やかな斜面を、右に左にのんびりとターンしながら滑り降りてゆく。所々、スキーにブレーキのかかる春の雪を踏ん滑ってゆくとネイチャーセンターが見えてきた。

20数年前、カナダでのスキー活動を経験し山の魅力を知り、帰国帰郷後、地元の山をずっと歩いてきた。今回の湯殿山東斜面大滑走は、その中でも記憶に残る山行となった。そんなことを先輩に話しお礼を言い今回の山行を無事終了する。山ってやっぱりイイですね。

石跳川沿いを登る先輩


正面には姥ヶ岳


中央支尾根の左側の谷を滑る。


先行するグループ


振り返ると月山


湯殿山山頂直下をトラバースする先輩


反射して浮かび上がる数日前のシュプール


東斜面滑走中間点で


中間点から石跳川を見下ろす。


滑り降りてきた湯殿山東斜面
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