傍から見たら何かにとり憑かれている様に見えるだろう。白い手ぬぐいを右に左に振り回し、神仏の山「三吉山」を登っていくその姿。両肩にとり憑いているものを振り払おうとして歩く姿。お盆を過ぎたこの時期にはよくある話。
だがぁぁぁぁ しかし、振り払っているのは「蚊蚊蚊蚊蚊蚊」。
椎名誠の小説「蚊」を読んだことがある。夜の狭いアパートに「蚊」が大群で押し寄せてくると言う話。小説のような大群とはかなり程遠いが、夏の里山はこの不快があったのだ。
ブンブンと我のまわりを飛び回る小虫。それは多分「蚊」なのだろうが、それを確認をする余裕もないほどに襲撃をうける。その攻撃をかわす苦肉の策が「手ぬぐいぶんぶん振り回し作戦」。
一番の攻撃対象は両肩の裏側、ちょうど肩甲骨周辺。ザックの肩ベルトの外側。すでに何匹かの吸血攻撃を見舞わっている。おまけに右肘にも。「あぁぁぁ、チクチクむず痒いぃぃぃぃぃ。」
標高の高い山では蚊の襲撃がない。先日の南蔵王は平和だった。一昨日の中丸山コースでは、登り始めの雑木林からブナ林の間でしか襲撃を受けなかった。しかし、今日のイエからウラヤマシリーズ「三吉山」では終始襲撃を受けっぱなし。
なりふり構わずに手ぬぐいをぶんぶんぶん・ぶんぶんぶん。傍から見たら何かに取りとり憑かれた姿に見えるだろうが、その人の目には「蚊」は見えないだろう。
「あああ、やめた、やめた。帰ろー。」上山葉山まで行く予定を「蚊」の襲撃ために途中敗退。相手がカメバチならカッコ良いのだが、相手が「蚊」では情けない。情けない。
今年のお盆休み山行の締めくくりは、椎名誠小説「蚊」的な山歩きとなる標高574mのウラヤマ「三吉山」の途中敗退で終わった。