VOL2 わ・た・し流

おとぼけな私ですが 好きな本のことや 日常のなにげない事等 また 日々感じたことも書いていきます。

桃花徒然 その76

2022-12-15 22:06:55 | 永遠の桃花

枕上書  番外編より

(14万歳の帝君が  鳳九とゴンゴンの出現で、

あり得ないレベルにまで  人格が変容する話🤣)

 

術で布団を何枚か出し、鳳九の方に足してあげる。

試しに 横になってから、鳳九は

「少し柔らかい気がする」と言った。

帝君はうなずくと  鳳九に 起きてもらい、

二枚布団を減らすと  もう一度試してもらい、

「今度は  どうかな?」と聞いた。

鳳九は  布団の上で  ゴロゴロ転がって寝返りを

打ち 「大丈夫みたい。だけど  もう少し試して

見る必要があるかも」と言いながら

帝君の腕の中に転がりこんだ。

 

帝君は少し驚き「暑がっていたんじゃなかった?」

というと  「そんなことないよ」と言いながら

彼女は彼の胸に 顔を寄せた。

帝「それでは  今度は寒くなったのか?」

鳳九「寒くないと貴方にくっついちゃいけないの?」

「もう私の事  好きじゃなくなったの?」

・・・帝君にしては珍しい事に、その問いに答え

る事が出来なかった・・・

すると  何故か 彼女の目から 涙が滴り落ちた(!)

このような場面に遭遇した経験などない帝君は

一瞬 固まった。

「(!)貴女・・泣かないで💦」

 

彼女は 涙の溜まった目でしばらく彼を見てから

急に  吹き出して

「嘘だよ🤗」

身体を起こして得意そうに「帝君、今の私の

ウソ泣きは もう熟練のレベルに達したでしょう?

貴方さえ騙せたわ。ものすごく練習したのよ」

帝「なぜ  そんな練習を?」

鳳九「だって、いつもウソ泣きしても  貴方は

ちっとも心配してくれなかったどころか、

もっと大きな声で泣け。人を泣かせるのが

一番好きだ、なんて言うからよ」

 

帝君は鳳九のその話し方  天真爛漫で 生き生き

している姿を  愛らしいと思った。

それでも 口から出る言葉は・・・

「ウソ泣きなら、どうして心配する必要がある?」

 

鳳九は わざとらしく彼をにらみ、拳を当てると

「まだ 反省しないの?」

「今までは私が未熟だったから  見破られた。

でも今回は  貴方に心配させることができたのよ。

私って  凄いと思うでしょう?」

帝君は  それには答えず「先ほど、私の事を

酷い と言ったけど、私は貴女に優しくないのか?」

と問うた。

 

鳳九は 少し恥じて「あ、それは💦そんなことない

貴方はとても良い夫よ。ただ貴方はちょっと

意地悪で、私をしょっちゅうからかうだけなの。

それ以外はとても良くしてくれてる」

そう言うと 帝君の手を取って引き寄せ、甘える

ようにその手に 自分の頬をすりつけた。

子狐が懐く時の仕草と同じだ。

それから、彼女は彼の手の甲に緋色の唇を

押し当てた。

彼の手は  少し震え、手の甲が一瞬で燃え上がった

ような感覚に襲われた・・・

 

彼女は  彼の反応に気づかず、彼の首に両手を回すと

「眠いわ・・・もう話すのは止めて 寝ましょう・・」

と言った。

寝間着の袖が滑り落ちて 帝君の首に  玉の素肌がつき、

甘い息遣いが 耳元を漂った。

「それじゃあ  お休み・・・」自分が言った言葉なのに

その声はよそから聞こえてくるような  妙な感覚だった。

まるで  魂が抜け出たかのような不思議な

真実味の無さだ。

 

少女の横に 寝て  かなりの時間が経った頃に

ようやく 彼は自分を取り戻した。

どうやら自分は  自らの意思で彼女を娶ったようだ。

そして、二人の関係は とても良さそうだ。

綺麗で  ちょっと狡くて 天然で、とても甘え上手な

少女。

彼女の目は キラキラ輝いて、彼を崇拝している事

が態度に現れている。

彼女の全身からは彼の気息が漂い、誰はばかること

無く結界に侵入し、無邪気に彼に抱きつく・・・

彼に甘え、手に頬をすりつける・・・

そんなことを考えながら、帝君はいつの間にか

自分の胸に手を当てていた。先ほど、心臓が 一拍

スキップしたような気がした・・・

 

 

 


桃花徒然 その75

2022-12-13 17:33:36 | 永遠の桃花

枕上書 番外編より

 

過去の帝君だなど  思いもよらず、鳳九は  口に手を

あてて 小さくあくびをすると「帝君、まだ寝ていな

かったの?私を待っていたの?」と言った。

細かく 少女を観察していた帝君だったが、少女の、

まるで当たり前の日常のような態度に

どう答えたら良いのか、そして  どうしたら気分を

害する事なく寝殿から出ていってもらえるかと

思いを巡らせていたのだが・・・考えがまとまらない

うちに  すでに少女は靴を脱ぎ  ベッドに上がりこんで

当然のごとく帝君の腕の中に潜り込んで来た・・・

そうして「ああ、すごく眠いわ・・・」と言うと

三つ数える間もなく 寝入ってしまった。

 

帝君には・・・本当に珍しい事に・・・

なにも話す事もできず、どうしたら良いのかも

分からない・・・状態に陥ってしまった

それでも彼は  彼女を押し出したりはしなかった。

 

蚊帳の中、少女の甘い香りが充満した。

そして、しばらく経った頃  ふと気付いた。

子狐を抱いた時は気付かなかったが、人型に

なって  ぴったり寄り添われ  彼女の息遣いを

感じると、少女自身の甘い香り以外に  彼自身の

気息が混じっている!という事に。

彼女の身体 奥深く、血脈から放たれているのは

彼自身の  彼しか持っていない赤金血が発する

かすかな白檀の香りだった。

  彼女は  彼の血を沢山飲んだはずだ・・・

 

今、自分の襟首を掴んでいる 彼女の長く美しい

指。その人差し指にはまっている指輪が  帝君の

注意を引いた。

指輪の表面には  鳳凰の羽。

彼女の額にある  痣と同じ模様だ。

朱色の中に  朝焼けのような赤金色を帯びている。

その指輪が  彼の気息を帯びた  護身用の法器で

ある事は  一目で分かった。

しかも、それは 単なる法器ではなく、彼の血肉

を用いて作られた物に違いない。

指輪から発せられる 彼の仙澤と気息は 

そうでなければ  有り得ないものだった。

 

26万年後の自分が どのような情愛をこの少女に

持ったかなど、今の彼には想像もつかないが

今、彼女を身近に見るだけで  彼女が自分の一部

であると分かるくらいに

この少女を大切に想い、守ったに違いない。

 

彼女がなぜ簡単に  碧海蒼霊に入って来る事が

出来たのか、帝君はようやく 理解した。

彼女の発する気息は  彼の気息そのものなのだから

彼が有する物はすべて  彼女も有し、彼が施した

結界も  難なく通れるのだ。例えそれが 最高級の

星光結界であったとしても 彼女を阻む事は

出来ないかもしれない  ・・と。

帝君は  少しの驚きと放心状態を味わい

不思議さも感じたが、特別  震撼したという

ほどの感情は持たなかった。

 

と、突然、「ああ、熱い!」(鳳九は仙童に酒を

飲まされている)と言って ぴったりくっついて

寝ていた少女が   寝間着の襟を引っ張りつつ

寝返りを打って帝君から離れた。少女の白い胸元が

露わになる。

帝君は  一瞥して  視線をそらした。

彼女は  横で  一の字になったり人の字になったり

して また 彼の胸に潜り込む。

もとより  サイズの大きい寝間着だったので

彼女の寝姿は  見るに絶えないほどになった。

帝君は  目をつむって  彼女の寝間着の襟を整える。

と、今度は  帝君の腰に 足がのしかかって来た。

寝間着からはみ出して  行儀悪いったらない・・

 

あんなにも優雅に歩いて来た彼女の 

この寝相の悪さといったら🤦‍♂️💦💦💦

帝君は  ビックリした・・・😅

 

帝君は  女性と親しい関係を持つ性分ではない。

当然、異性との接触に気を遣うなどもない。

そして、彼女の足を掴んで自分の腰から

どかそうとした。

 

帝君は  掴んだ足の 滑らかな皮膚の感触に

一瞬 恍惚となって、二秒ほど固まった(🤣)

慌てて手を離すと  彼女は足をどけて  今度は

帝君の首に  両腕を巻きつけて来た(!)

 

とうとう、帝君は  彼女を起こして「おとなしく

寝なさい!あまり動くな😩」と言った。

起こされた少女は まだ寝ぼけた様子で

「寝心地が  悪いの・・」という。

帝「どこが悪いの?」

九「ベッドが少し硬いわ」

 

寝心地が悪いなら、客間に行かせれば良いという

選択をするのがいつもの帝君なのだが、今の帝君は

彼女の為に、ベッドの硬さを何とかしようと

一生懸命  頭をめぐらせた・・・

 

 

 

 


桃花徒然 その74

2022-12-11 11:02:51 | 永遠の桃花

引き続き 枕上書 番外編より

 

寝殿の入り口が開く気配に  ふっと帝君は目覚めた。 

入り口の方から  女性の微かな香りが 夜風とともに

漂ってきた。

 

帝君は  少々 茫然とした・・・

数万年前の記憶が蘇る。当時 魔族の血気を使って

蒼河剣を養生する為、南荒に移り住んでいた事が

あった。

血気を入れる為、結界を緩めていたが、

魔族の女性は  自由奔放で大胆な者が多く、結界を

すり抜けて 夜這いして来る・・者が 後を絶たない

という困った事になっていたのだが・・・

 

しかし、ここはセキュリティ万全の碧海蒼霊。

いったい誰が?

 

そこまで考えて、帝君の思考が停止した・・・

いや!  一人だけいる・・・

客間に寝かせた  ゴンゴンの母上だ。

 

朧月のあかりが女性の姿を照らし出す。

蚊帳の向こうに  真っ赤な衣のほっそりした

女性が写る。

優雅でしなやかな身のこなし、  気ままに

こちらへと向かって来る。

 

以前の彼なら、すぐに自分の回りを結果で

覆い  女性を追い出しているが、

今 彼はただ静かに  近づく人影を見ていた。

彼は  未来の妻が  どのような姿をしているのか

知りたいという思いが強くなっていた。

 

女性はベッドにたどり着いたが、いきなり

蚊帳を開けるのを止めて「 あぁ、寝間着に

着替えなくちゃ」というと  奥にあるタンスへ

向かった。すぐに柔らかな声が聞こえる。

「あれぇ・・・私の寝間着は?・・帝君のものしか

ない・・このタンスで間違いないのに。

まあいいわ、眠いわ・・・帝君のを借りよう」

 

帝君はベッドに座って 手を一振りした。

足元にある貝がらがゆっくり開くと、卵ほどの

夜明珠が現れ、柔らかく蚊帳の中を照らす。

間もなく 蚊帳が押し上げられ、女性の姿が

明珠の優しい光の中で露わになった・・・

帝君は かすかに 顔を上げる。

そうして、二人の視線は  空中でぶつかった。

 

端整で美しい顔だち、  絹のような美しい髪が

背後に広がり  眉間には鮮やかな朱色の花模様。

美色を 一切気にしない帝君でさえ  その美しさ

を認めないわけにはいかない。

自分の  妻を選ぶ目・・趣味はなかなか良い・・

しかし、この年齢差は・・・!

 


桃花徒然 その73

2022-12-09 10:55:37 | 永遠の桃花

枕上書  番外編より

 

(小仙童が抱っこして来た  真っ赤な九尾の小狐・・・

帝君の明晰な頭脳ではぴんと来るものが

あったと思うのですが???)

 

「何の用だ?」

「僕たちは 金鏡湖の横で この珍しい子狐を拾い

ました。帝座は ふさふさしたものがお好きなので

お持ちしました。抱っこしてみますか?」

 

帝君は 確かに  ふさふさしたものが好きで、

見たら  抱っこせずにはいられないたちだった。

子狐は  ふさふさの美しい毛並みをしていた。

そうして、 もちろん 子狐を抱いたが、子狐が

ぴったり目をつぶって動かないので、

「この子は どうしたのか?」と仙童に訪ねた。

「私たちが拾った時には、この狐は 気を失って

いたのです。でもご心配には及びません。

既に  清心丸を飲ませましたので、じきに

目を覚ますはずです」

帝君は頷くと 子狐の額をさすってから仙童たちに

「それなら  ペットとして飼う事にしよう。貴方たちは

居心地の良い巣を作ってあげなさい」

 

その時、着替えを終えて戻って来たゴンゴンは

「巣」という言葉を聞いて  興味をひかれ、帝君を見た。

そして、腕に抱かれている子狐を一目見ると、

目を見開き「ああ、母上!」と叫んだ。

 

折顔上神は ゴンゴンを見、帝君を見、帝君の腕の中の

子狐を見て「あぁ、一家三人が揃ったね!」と言った。

 

帝君の顔は再び白くなった・・・

腕の中の子狐を  下ろそうか下すまいか?・・・

一瞬、自分が誰で  ここがどこなのか?何をするべきか

分からなくなった。

 

小仙童たちは  帝君を見た。「あれえ・・帝君は

この子狐を娶るのですか?なら、巣を作る必要は

ないですよね?😁」

 

(子狐が目覚めたのは  真夜中だった・・・小仙童

たちはうっかり酒で薬を飲ませてしまっていた

のだった(!)

子狐は 客間で目を覚ます・・・)

 

鳳九は  目をこすりながら身体を起こしたが

座り心地に違和感があった。あれ?と思って

確認すると、原身の姿になっている・・・

長らく狐の姿で寝る事がなかったので、?

と思ったが 人型に変身してベッドを降りると

靴をつっかけて  窓辺に行った。

 

東の空高く 満月がかかり、月光に照らされた

地には  紫色の霞が仙山を覆い、碧海には

かすかにさざ波がたっている。見慣れた碧海蒼霊

の風景・・・

 

昼間、仙童が酒で薬を飲ませたせいで、鳳九の

頭はぼんやりしていた為、自分がゴンゴンを探して

時空を超えた事は頭になかったので、碧海蒼霊に

来た事だけを認識した。

 

そうして、自分のいる場所が、客間である事に

気付いた。

?  なぜ私は客間に?  それにしても眠いわ・・・

あくびをしながら、入り口で熟睡している二人の

小仙童の横を通り抜けて  いつもの寝室へ向かった。

 

 

 

 


桃花徒然 その72

2022-12-06 23:59:49 | 永遠の桃花

折顔上神が吹き出して 声高に笑った。

「可愛い若妻!貴方のような小さな子供が 

その言葉の意味を知っているのか?」

「うん、もちろん知っている。  九九は  成人してすぐに

父君に嫁いだし、若くてあんなにも美しいから、

自分のことを 可愛い若妻 って言ってるんだよ」

 

帝君の頭に  いささか疑問が生まれた。

「そうすると、貴方の母君と私は いったい

どのくらいの 年齢差があるのかな?」

 

ゴンゴンは頭の中で計算して  言った。

「37万歳」

 

帝君はしばしの沈黙の後  深刻な表情を浮かべて言う

「・・・万・・というのは余計な数字ではないのか?」

 

ゴンゴンは 自分が  信用に値する人間であることを

示すかのように  帝君と同じく 深刻な表情を浮かべて

「そんなことない。母君と結婚した時、父君は

40万歳でした。母君はその時3万歳だったから

40万引く3万で  37万だよ」

更に「37ではありません」・・とダメ押しした。

 

帝君は  再び沈黙した。いささか恍惚としたような

表情を浮かべているようにも見える。

「そんなに年が離れているのになぜ私たちは結婚した

のか?誰かに無理矢理 強要されたのか?」

 

折顔上神は  生まれて初めてこのような東華を見た。

(これは面白い!)内心ワクワクしながら

帝君の問いにしばし茫然として答えられないゴンゴンに

助け舟を出す。

 

「26万年後の賢兄が どれほど徳望が高くなっているかは

知らないが、今でさえ賢兄に無理矢理何かを強要出来る

者など この世界にはいないでしょう。どう考えても

貴方自身が 自分で決めたはずですよ」

そして  ゴンゴンに向かって言った。

「貴方の母上は きっと 人より優れた非凡なところを

お持ちのはず。だから帝君は  それほどの年齢差が

あっても彼女を娶ったに違いない。

そうだ・・・貴方の母上は どこのお嬢様でしょう?」

 

それなら知っている。ようやく元気を取り戻して

ゴンゴンは折顔上神に視線を向けた。

「貴方は僕の母上を知りません・・・でも、僕の母上の

祖父なら  知っています。貴方の親友の白止上神です」

 

折顔は  お茶を吹き出してしまった!

折顔のお茶をもろに浴びたゴンゴンは 呆然とした・・

 

帝君は  ようやく気を取り戻して折顔を一目見た。

それからゴンゴンを見ると、従者に目配せして

ゴンゴンの着替えを促した。

 

ゴンゴンがいなくなった佛鈴花の木の下で、帝君

と折顔は  顔を見合わせていた。

しばしの沈黙の後、折顔が口を開いた。不思議さと

面白さを浮かべて言う「貴方が  まさか  白止の孫を

娶るとは!」

 

その言葉に帝君が答える前に 二人の小仙童が

走ってやって来た。

楽しそうに、一匹の真っ赤な子狐を差し出す。

帝君は  目の前までやって来た二人を見て

少し頭が痛くなった・・・