VOL2 わ・た・し流

おとぼけな私ですが 好きな本のことや 日常のなにげない事等 また 日々感じたことも書いていきます。

桃花徒然 その74

2022-12-11 11:02:51 | 永遠の桃花

引き続き 枕上書 番外編より

 

寝殿の入り口が開く気配に  ふっと帝君は目覚めた。 

入り口の方から  女性の微かな香りが 夜風とともに

漂ってきた。

 

帝君は  少々 茫然とした・・・

数万年前の記憶が蘇る。当時 魔族の血気を使って

蒼河剣を養生する為、南荒に移り住んでいた事が

あった。

血気を入れる為、結界を緩めていたが、

魔族の女性は  自由奔放で大胆な者が多く、結界を

すり抜けて 夜這いして来る・・者が 後を絶たない

という困った事になっていたのだが・・・

 

しかし、ここはセキュリティ万全の碧海蒼霊。

いったい誰が?

 

そこまで考えて、帝君の思考が停止した・・・

いや!  一人だけいる・・・

客間に寝かせた  ゴンゴンの母上だ。

 

朧月のあかりが女性の姿を照らし出す。

蚊帳の向こうに  真っ赤な衣のほっそりした

女性が写る。

優雅でしなやかな身のこなし、  気ままに

こちらへと向かって来る。

 

以前の彼なら、すぐに自分の回りを結果で

覆い  女性を追い出しているが、

今 彼はただ静かに  近づく人影を見ていた。

彼は  未来の妻が  どのような姿をしているのか

知りたいという思いが強くなっていた。

 

女性はベッドにたどり着いたが、いきなり

蚊帳を開けるのを止めて「 あぁ、寝間着に

着替えなくちゃ」というと  奥にあるタンスへ

向かった。すぐに柔らかな声が聞こえる。

「あれぇ・・・私の寝間着は?・・帝君のものしか

ない・・このタンスで間違いないのに。

まあいいわ、眠いわ・・・帝君のを借りよう」

 

帝君はベッドに座って 手を一振りした。

足元にある貝がらがゆっくり開くと、卵ほどの

夜明珠が現れ、柔らかく蚊帳の中を照らす。

間もなく 蚊帳が押し上げられ、女性の姿が

明珠の優しい光の中で露わになった・・・

帝君は かすかに 顔を上げる。

そうして、二人の視線は  空中でぶつかった。

 

端整で美しい顔だち、  絹のような美しい髪が

背後に広がり  眉間には鮮やかな朱色の花模様。

美色を 一切気にしない帝君でさえ  その美しさ

を認めないわけにはいかない。

自分の  妻を選ぶ目・・趣味はなかなか良い・・

しかし、この年齢差は・・・!