映画『アナザー・プラネット』

2012年11月12日 | 映画の感想



監督、撮影、編集 マイク・ケイヒル
脚本: マイク・ケイヒル、ブリット・マーリング
ブリット・マーリング ローダ
ウィリアム・メイポーザー ジョン
ロビン・ロード・テイラー
マシュー=リー・アルルバフ

2011年サンダンス映画祭審査員特別賞、アルフレッド・P・スローン賞のダブル受賞を果たした『アナザー・プラネット』。ごく控えめながらも非常に美しいVFX映像と、登場人物たちのアンビバレンツな揺れ動く心情を見事に描いた、低予算SF映画のお手本とも言うべき秀作である。
若干17歳でMIT(マサチューセッツ工科大学:全米屈指の名門)に合格したローダ(ブリット・マーリング)は、パーティ帰りに車で帰路へ。しかし不思議な惑星を夜空に見つけた彼女はそれに気を取られ、ある家族が乗る車に衝突、妊娠していた妻と幼い息子を死なせてしまう。それから4年後、交通刑務所を出所したローダは謝罪のため、生き残った夫ジョン(ウィリアム・メイポーザー)を訪ねる。しかし告白する勇気がなく身元を偽ってしまった彼女は、思いがけずジョンと惹かれうことに。真実を語ることが出来ず罪悪感に苛まれるローダだったが、あの夜に見た惑星が“もうひとつの地球”だったことを知り、ある行動を起こす……。

★★★★★
いや~この映画、半分くらいまで見たところで、大傑作の予感。おいおい、チープな終わり方だけはごめんだぜ!って気分で観てしまうくらい、肩入れしてしまった。全然マークしてなかっただけに、感激が大きい!もうひとつの地球が地球に近づいてくるという、惑星メランコリア的な映画なんだけど、あっちはあっちでイメージアートとしては傑作だったし憂鬱爆弾炸裂の衝撃作だったんだけど、ドラマとしてはやはりこっちだなあ。メロドラマっちゅう見方をすればそうなんだけど、とにかく作品のもつ雰囲気が琴線に触れた。SF映画なんだけど、SF部分は背景であって、ドラマを中心に展開するのもいいし、そのSF設定が、『ゆるし』という作品テーマに見事に絡んでくるラストの展開も秀逸。SFなのにきっと超低予算、でもそんなことまったく気にならない。そこが抑制が効いているってところになって作品自体を高めている。
もうひとつの地球が存在して、向こうにも自分が存在するらしいことがわかっている。そういう設定で作品を作ったら、十中八九シリアスぶってもコミカルなお話になると思う。ところが、この設定のうえで、描かれているのは、ひとりのインテリ女性の逃避や贖罪のドラマなのだ。もうひとつの地球があったら?もうひとりの自分がいたら?その自分が今の自分と同じ過ちを犯しているのか?そんな自分を許すことができるのか?こういう深刻なテーマと、SF設定がこんなに見事に融合できるなんて!
なんといっても、もうひとつの地球を知る前はふたつの地球はまったく同一であり、互いを知った瞬間から別々の存在となり、運命も変化しはじめるっていう発想がユニーク。交通事故なんてほんの一瞬の判断ミスで起きるもの。だからこそ、あの晩に何らかの違いが生まれてもおかしくないわけだ。そしてその後の人生が大きく変わったとしても。そしてこの映画がいいのは、ラストシーンの出色の出来。語りすぎず、抑制の効いた、この映画に相応しいエンディングにこっちまで心が救われた気持ちになる。いい終わり方だなあ。
いや~、この映画は今は有名じゃないけど、絶対にカルトになる。そして十年後、二十年後にも、この映画を「ラスト・コンサート」や「ある日どこかで」みたいに、心の中の宝物映画にしてしまう人がいる、そういうタイプの映画。必見の傑作!主演女優のブリッド・マーリングは役者としても脚本家としても今後、注目に値する。


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