《☆☆☆ 10/5読了 集英社インターナショナル 2015年刊 【プロレス 長州力 ノンフィクション】 たざき・けんた(1968~)》
「真説」とまで言い切る自信に「よし。そこまで言うなら読むよ」と購入。
まず、筆者がいわゆるプロレスライターではないところが吉とでたと思います。
だから例えば「噛ませ犬」「キレてないっすよ」発言みたいなベタなネタ(ネタではないけど)も、巷間語り継がれたイメージによる先入観が全然ないところから真相に迫っていて、好感が持てるし、信憑性も高い。
筆者が長州力に何度も会って取材をする、その描写もなんともいえずよかったです。
居酒屋での長州の佇まいなんて目に浮かぶようでした。
序盤、「長州力」という着ぐるみを着る前の吉田光雄が、周囲の人たちにいかに愛されていたか、という話もとてもいい。
プロレス入りしてからの「長州力」の不遇な時代、一気に光り輝いた時期、そして新日でのクーデター騒ぎ、ジャパンプロレス設立と全日リングへの参戦、Uインターとのトラブル、WJの失敗など、「門外漢」ならではの冷静で常識ある大人目線でまとめられる数々の証言は読み応えがあり、このあたりがほぼ真相なんだろうと思いました。
長州がかなり早い段階で“猪木イズム”に感化されているのが意外だったし、商品としての「長州力」をしっかり意識して高く売ろうとする姿勢(マサ斉藤の影響)や、ブッカー・演出家としての才能にも驚きました。
長州って、実直で不器用で“猪木イズム”の対極みたいなイメージがあったので、そこらへんはだいぶひっくり返りますね。
格闘技者としての誇りとプロレスラーという“見せてなんぼ”な職業とのバランスを案外うまくとっているのもおもしろかったです。
佐山・藤波・長州それぞれの違いも際だちました。
あとはこの本、実に多くの関係者に取材をしてあって、そこから浮かび上がる「吉田光雄」「長州力」の立体感がすごいです。
評伝はこうあってほしいという理想に近い。
巻末、筆者の取材を拒否した3人が明かされますが、その3人が拒否したという事実が物語るものこそは大きい。
とくにマサ斉藤との決別は(全体像が見えないけど)悲しすぎます。
もしも。
レスリングのオリンピック選手・郭光雄がプロレス入りせず、選手人生をまっとうして指導者にでもなっていたら今頃どうなっていたでしょう。
…などと考えて余計切なくなった読後なのでした。
最終的には家族まで失った現在の生活について、終盤ちらっと語られますが、強い光が当たるすぐ横には必ず深い影ができる、その狭間に立ちすくむ孤独な男の姿になんともいえない気分になりました。
/「真説・長州力 1951-2015」田崎健太
「真説」とまで言い切る自信に「よし。そこまで言うなら読むよ」と購入。
まず、筆者がいわゆるプロレスライターではないところが吉とでたと思います。
だから例えば「噛ませ犬」「キレてないっすよ」発言みたいなベタなネタ(ネタではないけど)も、巷間語り継がれたイメージによる先入観が全然ないところから真相に迫っていて、好感が持てるし、信憑性も高い。
筆者が長州力に何度も会って取材をする、その描写もなんともいえずよかったです。
居酒屋での長州の佇まいなんて目に浮かぶようでした。
序盤、「長州力」という着ぐるみを着る前の吉田光雄が、周囲の人たちにいかに愛されていたか、という話もとてもいい。
プロレス入りしてからの「長州力」の不遇な時代、一気に光り輝いた時期、そして新日でのクーデター騒ぎ、ジャパンプロレス設立と全日リングへの参戦、Uインターとのトラブル、WJの失敗など、「門外漢」ならではの冷静で常識ある大人目線でまとめられる数々の証言は読み応えがあり、このあたりがほぼ真相なんだろうと思いました。
長州がかなり早い段階で“猪木イズム”に感化されているのが意外だったし、商品としての「長州力」をしっかり意識して高く売ろうとする姿勢(マサ斉藤の影響)や、ブッカー・演出家としての才能にも驚きました。
長州って、実直で不器用で“猪木イズム”の対極みたいなイメージがあったので、そこらへんはだいぶひっくり返りますね。
格闘技者としての誇りとプロレスラーという“見せてなんぼ”な職業とのバランスを案外うまくとっているのもおもしろかったです。
佐山・藤波・長州それぞれの違いも際だちました。
あとはこの本、実に多くの関係者に取材をしてあって、そこから浮かび上がる「吉田光雄」「長州力」の立体感がすごいです。
評伝はこうあってほしいという理想に近い。
巻末、筆者の取材を拒否した3人が明かされますが、その3人が拒否したという事実が物語るものこそは大きい。
とくにマサ斉藤との決別は(全体像が見えないけど)悲しすぎます。
もしも。
レスリングのオリンピック選手・郭光雄がプロレス入りせず、選手人生をまっとうして指導者にでもなっていたら今頃どうなっていたでしょう。
…などと考えて余計切なくなった読後なのでした。
最終的には家族まで失った現在の生活について、終盤ちらっと語られますが、強い光が当たるすぐ横には必ず深い影ができる、その狭間に立ちすくむ孤独な男の姿になんともいえない気分になりました。
/「真説・長州力 1951-2015」田崎健太