快読日記

日々の読書記録

読了『北の富士流』村松友視

2016年10月02日 | プロレス・相撲・ボクシングなど
8月13日(土)

千代の富士が61歳で亡くなったように、元横綱の寿命はとにかく短い。
だから、北の富士が70歳を過ぎても元気で、ますます男っぷりを上げていく様子は賞賛に値すると思う。
ものすごくかっこいい吉幾三みたいだ。

この前、9月場所の正面解説をしているとき、お客さんから「長生きしてね」と声をかけられていたけど、それは多くの相撲好きの気持ちを代弁しているはずだ。

夏休み、村松友視の『北の富士流』(文藝春秋)を読んだ。
力士としての強さはもちろん、人を引きつける魅力や艶の話。
「夜の帝王」と称された遊び人・もてキャラのイメージの奥にある神経の細やかさや優しさ、そこらへんをじっと見つめる筆者の目がいい。

中学のときに読んだ『私、プロレスの味方です』以来、村松友視のエッセイやノンフィクションが大好きなのは、こういう勘所の妙というか、「そう!そこを読みたいの!」というポイントを決してハズさないから。
しかも、「書きすぎ」っていうことがない、絶妙なのだ。
トニー谷を描いた作品でも、その陰鬱な部分が切なく書かれていた。

北の富士についても、周りの人たちをとりこにする華やかさと、立ちのぼる色気、そして愛嬌がくっきりと表現されている。

人柄という点では、子供時代からの故郷の友達の証言がいい。
有名になっても地元を大事にして、そこまでするかという気配りの繊細さ。
みんなに愛される理由がよくわかる。