快読日記

日々の読書記録

「壁女 真夜中の都市伝説」松山ひろし

2012年09月13日 | その他
《9/12読了 イーストプレス 2004年刊 【怪談 都市伝説】 まつやま・ひろし》

便器の中から手が出てきて「カミをくれ~。……この髪だっ!」とか、
斧を持った男が隠れてる話とか、
エレベーターに「あと一人乗れる」話とか、
コインロッカーベイビーの「母親はおまえだっ!」ってやつとか、
電車にはねられて首がなくなる小学生とか、
(…きりがないのでやめますが)
「ああっ!この話まだ生きてたんだ~!」という、旧友と30年ぶにり再会したみたいな感動がありました。
自分がどんだけ怖い話好きな小学生だったかもよくわかった。
それらの話は、まるでそのまんまだったり、シチュエーションだけが変わっていたりとさまざまですが、
なんかこう、人が恐怖を感じる話には、ある程度不変かつ普遍的なパターンがありそうですね。
例えば、高速道路を猛スピードで走るおばあさんの話は有名だけど、すでに江戸時代には馬を追い掛ける老婆の噂があったんだそうです。
見た目B級っぽい本ですが、そんな冷静な解説も充実していて思ったよりコクがありました。
その解説では、70あまりの怪談・都市伝説それぞれの話の基になっていそうな事件や事故、小説作品、江戸時代や明治時代に流行った怪談などを提示しているのもおもしろかった。

実はわたし、これを読むまで、夢日記をつけ続けると精神に異常をきたすとか(実際友達にこう言われて夢日記をやめた)、ウォルト・ディズニーは冷凍保存されてるとか、森&クリントンの「フーアーユー?」事件とか、全部実話だと思ってました。
いやあ、照れるなあ。
だれも褒めてないか。

児島都の、楳図テイスト(というより中川翔子テイスト)にちょろっと丸尾末広が混ざった絵もすてきです。

/「壁女 真夜中の都市伝説」松山ひろし
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「西村賢太対話集」

2012年07月20日 | その他
《7/18読了 新潮社 2012年刊 【対談集】 にしむら・けんた(1967~)》

対話の相手:1町田康/2島田雅彦・朝吹真理子/3高橋三千綱/4坪内祐三/5石原慎太郎/6朝吹真理子/7上原善広/8坪内祐三/9高田文夫

冒頭の町田との対談は、互いに遠慮ぎみ。
この二人を会わせてみたいという人の気持ちは分かるけど、結果、譲り合い褒め合い感が目立ちました。
島田・朝吹両者との鼎談では、島田雅彦が先生みたいな立場からあれこれ指摘したりまとめたりしていて鼻につくかんじなのがおもしろい。島田・西村って、相性悪そう。

高橋・石原・高田文夫という大先輩には若干媚びが見え、坪内・上原相手だとリラックスしているのは当然といえば当然ですが、
その辺があからさまなところに人間臭さがうかがえて、かえってよかったです。

一緒に芥川賞を受けた朝吹真理子とは、野良犬(褒めてます)と血統証つきの座敷犬ほどの差があります。
最初は卑屈に見えるほどの警戒態勢、二度めになると少し調子に乗って、あげく見下すような発言まであるのが「ああ、まさに北町貫多だあ!」という感想です。

お金のことを細かく話す高橋三千綱、
読んでてうっかり好きになりそうになった石原慎太郎、
名付け親が丹羽文雄(!)という高田文夫(祝退院)、
そしていかにも頭と育ちが良さそうでクールな朝吹真理子が印象的でした。

そして、妙に威勢が良かったり、ときには相手にへつらったり、
でも率直で、かと思えば実はいろんなことを計算している(必ずしも計算通りに行かないところもまたおもしろい)、
そんな西村賢太のさまざまな面が自然主義的に露わになっている対談集だと思いました。
これも私小説か。

→「苦役列車」

→「暗渠の宿」

→「廃疾かかえて」

/「西村賢太対話集」
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「おやじがき 絶滅危惧種中年男性図鑑」内澤旬子

2012年06月13日 | その他
《6/12読了 講談社文庫 2012年刊(2008年に刊行された単行本に加筆訂正して文庫化) 【イラストルポ おやじ】 うちざわ・じゅんこ(1967~)》

偉そうな風体のおやじも、ヨレヨレにしょぼくれたおやじも、きっと中身はみんな小5男子なんだろうなあ。
言い過ぎか、中1くらいかな。
とにかく、
中身は心細い男の子のまま、容貌だけはグイグイ大人になり、おじさんになり、おじいさんになる。
外見に釣り合う内面を持てないまま、年齢の数字だけがどんどん進んじゃっているのではないか。
ふてぶてしい面構えのおやじの中で、やせた少年が「こんなのボクじゃないやい!」と泣いているのではないか。
だから帯にある「男は枯れるのか、煮詰まるのか」は、どっちも違う気がする。
残酷な話です。すべて妄想だけど。
おばさんもまたしかり、と言いたいところですが、
女の子は小6ころからすでにおばさんなので、あとは容貌が実体にどんどん追いついてくるだけなんですねこれが。

そんな切ない男の子たちを町で見つけて巧みにスケッチし、絶妙な解説を付けた本がこれ。
なんだかんだ言って、内澤旬子大好きみたい。
20分ほどで読めてしまいますが、くりかえし手に取ること必至の1冊です。
56番の、自分の顔を掻いて爪に入った皮膚を食べているおじさんがすごい衝撃。
仲良くなるなら60番のラテン系おやじかな。

コレクションされたおやじは全部で86人。
あなたのお気に入りは誰?

→「身体のいいなり」内澤旬子

→「世界屠畜紀行」内澤旬子


/「おやじがき 絶滅危惧種中年男性図鑑」内澤旬子
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「全米No.1ファッションアドバイザーが教える 誰でも美しくなれる10の法則」ティム・ガン/ケイト・モ...

2012年01月12日 | その他
《1/08読了 野澤敦子/訳 宝島社 2011年刊 【その他 服飾】 Tim Gunn/Kate Moloney》

ティム・ガンをご存知ない人には、“すごくきれいなピーコ”と言ったら伝わるでしょうか。
服飾系大学で学部長までつとめた人だそうです。
以前、教育テレビでやっていた「スタイルアップ」で見たティムは、女性に対してとにかく辛辣で、皮肉で、その冷たそうな唇から発射される手厳しい批判の無駄のなさと殺傷能力に大笑いしました。
(好みの男性にはかなり優しいらしい)
この本も、そのちょっと意地悪な物言いと絶妙な皮肉のセンス(ピーコと、亡きミナコ・サイトウを思い出す)が活きた翻訳になっています。

でも、決して毒舌一色でないところが面白かったです。
終始彼が説くのが、中庸の魅力と価値である、というところに好感が持てました。

そして、わたしはよくシャツを後ろ前に着たり、ボタンをひとつ飛ばしてかけていたり、服が破れていることに夕方気づいたり、ズボンのファスナーが開いていると人に教えられたり、タンクトップの首から右肩を出す格好で着たまま夜まで気づかなかった(確かに1日中動きにくかった)りする、おしゃれ以前の人間なので、これではいかんと思った年の初めなのでした。

/「全米No.1ファッションアドバイザーが教える 誰でも美しくなれる10の法則」ティム・ガン/ケイト・モロニー
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「老化で遊ぼう」東海林さだお 赤瀬川原平

2011年10月15日 | その他
《10/14読了 新潮文庫 2008年刊 【鼎談 対談】 しょうじ・さだお(1937~) あかせがわ・げんぺい(1937~)》

雑誌「小説新潮」に連載された10回の対談(うち3回は鼎談)。
テーマは老化・お金・性・芸術など。

おもしろい会話って、昼休みの屋上のバレーボールみたいなもので、相手が返しやすいボールをあげて上手くつないだり、たまにはキレのいいアタックをしかけたりして、傍から見てても楽しいですね。
この本も、そんなかんじ。
とくに第1回から3回までの、ゲストを交えての鼎談(藤森照信、阿川佐和子、藤原正彦)がおもしろかった。
アガワさんは女子の老化について赤裸々に語りすぎです。
なんだか好きになってしまった。
藤原正彦の数学の話には、いつもうっとりしてしまう。全然理解できないけど。

わたしは東海林&赤瀬川のファン、というわけでもないので、第4回からの対談は、居酒屋で隣のテーブルのおやじの話を聞いてるみたいなかんじで読みました。
芸術について語る回もなんだか野性的でよかった。

昭和12年生まれの2人は、小学校に石盤と蝋石を持って通った最後の世代のようです。
それ「おしん」で見たことあるよー!
ついこの前まで、日本人ってそういう暮らしをしてたんだなあ、と改めて思いました。

あ! 東海林氏の、“仕事がなくなったら冬の青木ヶ原に行く”発言は冗談としても、
わざわざ訪れる自殺者がどんだけ迷惑かってことは富士北麓の住民として言っておかねばなりますまい。

/「老化で遊ぼう」東海林さだお 赤瀬川原平
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「新 人間コク宝」吉田豪

2011年09月11日 | その他
《9/11読了 コアマガジン 2010年刊 【インタビュー】 よしだ・ごう(1970~)》

インタビューされた濃い男たち:梅宮辰夫/木村一八/K DUB SHINE/月亭可朝/ジェリー藤尾/蛭子能収/長門裕之/ミッキー安川/生島ヒロシ/三遊亭楽太郎/赤井英和/吉川銀二/新沼謙治/大和武士/ビートきよし/金山一彦

吉田豪のインタビューって対象への好き好きオーラむんむんで、受ける方はうれしいだろうなあ。
それでついついしゃべりすぎちゃって、読者はどんどんその人が好きになるというしかけ。
今回特によかったのは、月亭可朝・蛭子能収・ミッキー安川の3人。
これ読んだらあなたもこの3人の虜ですよ。

登場する「肉食系」男子たちは全員、実にうれしそうに自分がいかにやんちゃだったかを語っています。
吉田豪という、相手を気持ちよく語らせる天才を前にしたらなおさら。
でも、そこに「おれはまだまだ現役」みたいな見栄や粋がりが隠れてると、ちょっと殻が硬くてだめみたい。
そこへ行くと、今さら怖いものなんかない前出の3人は、肩の力も抜けてて最高でした。

そしてなんと言っても、長門裕之。
南田洋子を介護していた2009年7月と、彼女の死後2010年2月のインタビュー2回が収められています。
これは本当に心に染みる、ほとんど遺言です。
「あなたが好きだ、応援したい」と慕う吉田豪に対して、何の疑いも計算も演出もなしに、まるっきり信じ切って話をしている長門裕之がいい。
なんてきれいな人なんだ。
なんてかわいい人なんだ。
親子以上に年の離れた男二人の語らいが胸を打ちます。

/「新 人間コク宝」吉田豪
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「フクシ伝説 うちのとーちゃんは三冠王だぞ!」落合福嗣

2010年10月25日 | その他
《10/24読了 集英社 2010年刊 【落合福嗣】 おちあい・ふくし(1987~)》

大笑いしたくて買いました。そして、期待以上に笑いました。
でも、読後残るのはなぜか「感動」なんですよ~、これが(笑)

前半のインタビューっぽいのもすごかったけど、
(趣味は「じゃがりこ」とか「嫌いなタイプの女は”チョベリバ”とか言う女」とか)
やっぱり落合ファミリー大集合の後半が最高。
この一家がいいのは「俺たち幸せだね。世間はいろいろ言っても俺たちは俺たちだね。」っていうところ。
それから3人が互いにまるごと受け止めあっているところ。
これが愛なのかも。
「家族」っていうより「チーム」、「味方」ってかんじがひしひしと伝わります。
絶賛しすぎか。
あとで訂正したくなっちゃうか。

いや、たぶん大丈夫。

ところで、福嗣くんは現在、国士舘大学の学生なんだそうです、
と言ったらKずえちゃん(仮名)は「相撲取ってるの?」と答えたけど、
そんな反応も納得のこの貫禄。
母・信子も「まるで海老蔵みたい」と絶賛するこの和服姿を書店で見たら即買い!でおねがいします。

「アガサ・クリスティ99の謎」早川書房編集部/編

2010年04月17日 | その他
《4/13読了 ハヤカワ文庫 2004年刊 【クリスティ】》

クリスティ本人について、ポワロを始めとするキャラクターやシリーズ作品について、など、99の「雑学集」(裏表紙より)。
この手の本は、その熱心なファンやマニアにはだいぶ物足りないだろうし、
クリスティを1冊も読んだことがない、映像化された作品も見たことがないって人にはつまらないですよね、きっと。
その点、わたしみたいな中途半端な読者にはちょうどいい。
深い分析や考察を避けた、サラッと読める「クリスティ読本」なので、読書の合間に手にとる本に打って付け。
「今読んでる本」を邪魔しない、こういう本も必要です。
車の中に置きっぱなしにして、ちょっとした空き時間にコツコツ読んでたら、丸1年かかりました。えへへ。

一番おもしろかったのは、巻末・羽生善治の解説です。
羽生さんとクリスティという組み合わせが、意外としっくりきます。

「人はなぜ恐怖するのか?」五味弘文

2010年02月19日 | その他
《2/17読了 メディアファクトリー(ナレッジエンタ読本19) 2009年刊 【おばけ屋敷 恐怖】 ごみ・ひろふみ(1957~)》

後楽園ゆうえんち時代から、さまざまなおばけ屋敷を作り上げ、成功を収めてきた著者の恐怖論。

客を怖がらす技のあれこれと、そもそも人は何を怖がるのかが、
学者とも表現者とも違う「仕掛人目線」で語られるのが新鮮です。
客にリアルな赤ちゃんの人形を抱かせるとか、手錠をはめるとか、かなり楽しそう。

でも、全般的には若干物足りないかんじです。

それはこの"ナレッジエンタ読本"が、そのジャンルに関心を持たせる入門編、みたいなコンセプトらしいってのと、
表紙の日野日出志の絵が良過ぎて、期待値がグイグイっと上がってしまったせいと、
あとはタイトルと内容のズレですかね。
(人は「何に」恐怖するかはよく分かったけど、「なぜ」は不十分でした。
よく考えたら、「なぜ」はこの人の領域ではないんでした。)

もっと詳しく、みっちり書いてくれるか、「恐怖」をテーマに別の視点を持つ人との対談にするかだったらまた読みたいなと思います。

「あのひととここだけのおしゃべり」よしながふみ

2010年01月04日 | その他
《2009/12/24読了 太田出版 2007年刊 【対談集】 よしなが・ふみ(1971~) 》

よしながふみの漫画を一度も読んだことがないくせに、萩尾望都との対談狙いで借りちゃいました。
それでも、同年代の女子の漫画談義は楽しく読めました。
「lala」と「花とゆめ」はごっちゃになるとか、ヤンキー(と明言してないけど)は紡木たくが好きとかね、わかるわかる~というかんじです。

思わず膝を打ったのが羽海野チカとの対談で示された「やおい」の定義。
曰く、"恋愛関係ではなく、見た目仲良くもないけど、互いを認め合い、ピンチには必ず助け合う関係"。
例えば「NANA」のナナとハチ、お蝶夫人とひろみ、星飛雄馬と伴宙太、力石とジョー、果ては「赤毛のアン」のアンとダイアナや、「トリック」の山田と上田。
なるほど~。
じゃ「エロイカ」の伯爵と少佐も!ですね。


しかし、こうした少女漫画を語るものを読むといつもモヤモヤすることがあります。
それは、高階良子を忘れてやしませんか、みなさん!ってこと。
昭和50年代の女子小学生で、高階作品に触れなかった人はむしろ少数派ではないかと思うんだけどどうですか。
殺人事件シリーズ、乱歩や横溝作品の漫画化、童謡かごめかごめの解釈が怖すぎた「赤い沼」など、多くの名作で少女たちのトラウマになっているはずなんだけどなあ。
24年組よりちょっと上の世代だからか、イマイチ正当な評価を受けていないというか、スポットが当らない、まことに遺憾であります!

…取り乱してしまいました。失敬f^_^

「世界の葬送」松濤弘道/監修

2009年11月07日 | その他
《11/4読了 イカロス出版 2009年刊 【風俗 葬儀】 まつなみ・こうどう(1933~) 》

宗教別・世界各地域別にみた埋葬と葬儀のガイド。
ほとんど考察というのはなくて、さら~っと解説してあります。
しかし、さらっといかないのはその中身。

死体をどう扱うかは、思想や宗教観だけの問題ではなく、地理や気候にも大きく左右されるってのが、当たり前かもしれないけど、はっとしたところ。
他にも風葬(鳥葬)の具体的な手順や、社会主義国家の指導者たちの遺体の処理法など、驚くことがたくさんありました。
「洗骨」なんて、究極の弔いだし、死後、自分ではどうにもできない「死体」になっても、周囲の人間との関係は切れないんだなあ、と思った。

岡本太郎が沖縄で犯した墓荒らしのエピソードはかなり衝撃的。

「背筋の凍る話」桜 金造

2009年08月24日 | その他
《7/31読了 リイド文庫(リイド社) 1999年刊 【雑書 怪談】 さくら・きんぞう》

この夏「怪談師」と名乗る人たちをテレビで見て、苦笑いしつつ、
怪談師!というならこの人だなあ、と引っ張り出してきたのがこれです おやまゆ~えんちー♪

もうすでに表紙から「恐怖と笑いは表裏一体」なのだと教えてくれる名作。
10数年ぶりの再読でも充分怖いです。

桜怪談(そんなジャンルはありませんが)は、稲○淳○など他の人たちと比べて何が違うのか。
答えは、その伏線の巧みさにあると思います。
例えば小さい女の子の話、といってひとつふたつと短い話が続き、
三つめのオチのとき、ひとつめに張られていた伏線と重なる快感が味わえるので、怖さ倍増です。
「伏線」という種が知らぬ間に自分のどこかに植え付けられていた!と気付く恐怖、「ゾクッ」の味が違います。
ショックよりも、「にじむ」恐怖かな。

しかしこれは、1分ネタがもてはやされる昨今では、だいぶ分が悪い。
でも寄席的な場所(ライブ)や活字だったら圧倒的におもしろいんじゃないかと思うんです。

桜金造、深夜でいいからもっとテレビに出て欲しいです。
それが結論(笑)

「柄本明『絶望』の授業」

2009年06月12日 | その他
《6/11読了 NHK「課外授業 ようこそ先輩」制作グループ/編 KTC中央出版 2003年刊 【テレビ 演劇】 えもと・あきら(1948~)》

この表紙の顔を見てください。
どんな表情も読み取れない。
こんな顔、一体何をどうしたらできるんでしょうか。
なんだか怖いです。引きつけられずにはいられないです。

その柄本明が母校の6年生に向けて行なった授業の書籍化です。

そこで何度も繰り返される「恥ずかしい」というキーワードは、俳優が抱えるジレンマ(見られたがる自分を恥じる気持ちか)を指すようでもあり、
「羞恥」こそが「演技」の母、つまり「恥ずかしい」を覚えた瞬間、人は「演技」を始めるんだ、ということを言っているのかもしれない。

そんなことを考えさせる話の後、子供を教室の前に立たせ、みんなで見つめたり、
「ロミオとジュリエット」や「ゴドーを待ちながら」などの一場面を演じさせたり、
最後には「絶望」というテーマで各班に台本を書かせ、その上演会をして授業はおしまいです。

「羞恥と演技」の関係を説明することはそんなに難しいことではありません。
しかし、それを実感させること、恥ずかしがる自分や演技する自分に気付かせるのは大変なことです。
柄本明がここで成功しているかは、いまいちわかりませんが、その「凄み」はグイグイ伝わります。

一方、もし自分が児童で「絶望」というテーマで舞台を作れと言われたらどうするか、真剣に考えました。
主人公が、欲しいものをすべて手に入れ、すべての願いが叶えられ、不死の肉体を得たら――絶望してゲラゲラ笑い狂うかな、とか。

では、今どきの小学生はどんなお芝居を作ったのか。
これが本当に傑作ぞろいなんですよ~。
活字で鑑賞したせいか、わずかに浮き世離れしたところがかえってシュールで。
特に「何も書かれていない黒板を見つめる無言劇」は映像で見たかったです。

「広告批評の別冊11 淀川長治の遺言」

2009年02月21日 | その他
《2/4読了 マドラ出版 1998年刊 【インタビュー 淀川長治 映画】 》

他の人の本で淀川長治のエピソードを見掛けても、本人のものを一度も読んだことがないなあとふと思い立って。

21世紀を目前に亡くなった淀川さんですが、
その「21世紀は人間が人間らしさに見離される時代」という予言には背筋がゾクッとなりました。
自殺したある思想家が遺した言葉「明日の日本は見たくない」を連想したからです。
だからといって、わたしは(あなたも)、生きて行くことをやめるわけにもいかない。
そこで、「人間らしさ」を取り戻す心掛けが必要になるのかもしれません。
ヒントになったのはこんな名言。

「僕は人を憎むくせに人が好きね」

ああ! (図々しいけど)わたしも。
この世で一番嫌なのは人間だし、一番おもしろくてたまらないのも人間ですね、きっと。

穏やかで人のいいおじいさんみたいなイメージしかなかったので、
その感情の激しさや人を見るちょっと意地悪な目、相手を射抜くような鋭さなど、淀川さんの怖さが印象に残りました。
そしてその「怖さ」こそがすごく魅力的です。

「バシャール スドウゲンキ」須藤元気 ダリル・アンカ

2008年10月08日 | その他
《10/6読了 ヴォイス 2007年刊 【対談】 すどう・げんき(1978~)》

「この本は、須藤元気と、ダリル・アンカを媒体とする宇宙生命・バシャールが、東京で行なった対談を書き起こしたものです」(扉より)

は?宇宙生命って何?ダリル・アンカってポール・アンカみたいなもの?(本当に親戚らしい)
のっけから「?」続きの不思議な本でした。

元気好きのKちゃんが勧めてくれなかったらたぶん読めなかったです(笑)。
Kちゃんはこのバシャールからポジティブなメッセージをたくさん受け取ったもようです。

わたしはというと、どんな距離感が正解なのかとまどいながら半笑いで読み進めましたが、
中盤「日本の政治は今後どうなりますか」という須藤の質問に対し、「捕鯨」についての見解しか述べない"宇宙生命"に、思わず「あ゛~」という声をあげてしまいました。
宇宙生命の正体見たり。

そんな"バシャール"ではありますが、須藤元気のからみは軽快です。
茶茶を入れたり、意地悪な質問をしたりしたかと思うと、深く共鳴したり。
まさに「変幻自在のトリックスター」ですね。
なんだか楽しそうだなあ、というのが率直な感想です。

ネガティブでもいいじゃないか、人間だものくだもの。
ネガティブだから見えて来るものもあるもんね。