快読日記

日々の読書記録

読書中『世界の名前』岩波書店辞典編集部 編

2016年04月21日 | その他
4月20日(水)

わたしの名前は父の名から1字とってつけただけの、特に思い入れもないさっぱりした名前だ。
姓で呼ばれることが多くて、その姓は比較的気に入っている。


今読んでる『世界の名前』(岩波書店辞典編集部 編/岩波新書)によると、トルコでは、クッル(毛むくじゃら)、サクラオール(うすのろの息子)、ギョベキ(へそ)、ブダラ(馬鹿)、シャシュ(寄り目)といった姓がある。
寄り目って……容赦ない。

日本のように自然(山、川、森など)や地域からつけられるところ、父系の名前をとるところなど、姓がないところ(意外に多い)いろいろあるが、ドイツは職業由来の姓が多いそうだ。
最多のミュラーは「粉屋」、シュミット(鍛冶屋)、シュナイダー(仕立屋)など、ちなみにヴァーグナーは「車輪工」。
そういえば、トルコのオルドゥルジュという姓の意味は「殺し屋」なんだって。
職業といえば職業。


おもしろ~い!と心の中で叫びながら、チビチビ読む。

読了『おじさん追跡日記』なかむらるみ

2016年02月13日 | その他
2月12日(金)

地元でたまに見かけるおじいさんがいる。
詳しい描写は避けるが、一見、家を持たない人の風体で、いつもリュックに長いひげ。
わたしは心の中で「仙人」と呼んでいる。
最初、仙人はわたしにしか見えない人かと怯えたが、ある日図書館のカウンターでそのリュックから大量の本を取り出し、司書のお姉さんから「よく読んだね~」と誉められていたのを見て安心した。
そこから車で20分近くかかる別の図書館でも目撃された(わたしに)こともある。
歩いているところしか見たことがないので、おそらく移動手段は徒歩、だとすると恐るべき健脚だ。
一度は新宿のバスターミナルでもいつもと同じスタイルでいるのを見た。
意外と行動範囲が広い。

この『おじさん追跡日記』(なかむらるみ/文藝春秋)を読みながら、自分も仙人にインタビューしてみたくなるが、もちろんそんな勇気はない。
前作『おじさん図鑑』よりもさらに深くおじさんたちの生態がわかる。
インテリおじさん、アートなおじさん、キテレツなおじさん(吉田さん←この人が別格)、政治家のおじさん(石破茂←実は女子の好感度は高いと思う)と、かなり幅が広い。
大勢のおじさんが読めるのはいいけど、一人ひとりのページ数が少なすぎるかも、この2倍でも読むよ、と伝えたい。誰に?


夜、『カールの降誕祭』(フェルディナント・フォン・シーラッハ/東京創元社)を読み始める。
ずっと待ってた短編集。
期待大。

読了『ヒトの本性』川合信幸

2016年02月10日 | その他
2月9日(火)

たしかにハリウッド映画(に限らず)とかで、主要人物が無関係な車に衝突したり、ついでみたいに警備員や巻き込まれた市民が射殺されたりすると、ああっ!何の落ち度もないのに。なんて身勝手な映画だ!と思う。
悪い奴が成敗されるにしても、子分まで殺さなくてもいいじゃない!みたいな。
ウルトラマンが怪獣と闘って町を破壊するのだって昔から不愉快だった。

この本によると、そういう反応は男性にはあまり見られないそうだ。
例えば、不公正な者が罰を受ける場面を見たとき、女性は共感し、同じ痛みを感じるのに対し、男性の脳はむしろ快感を覚えるんだって。へえー。こわ~。
だから、暴力の連鎖を断ち切れるのは女性だ、なんていうけど、そんな単純な話ではないと思うわ。

筆者によると、ヒトはそもそも攻撃的な生き物なんかではなく、協力し助け合うものだ。
攻撃や排除を受けると傷つき、その痛みは長年に渡るが、「他人を傷つける」ことによっても同じように心が痛むんだそうだ。
そうかもしれない。

この本、一貫して「性善説」な本で、それは近頃注目の学説らしい。
そうだったらいいなとは思うけど、この説に諸手を上げて賛成という気分にはならない。

これは現実がどうかということより、考え方の問題だ。
(だからこの本が悪いわけじゃないの)
人間は生まれつきいいやつだ、と信じて生きるより、自分を含めてみんな攻撃性や嫉妬や厄介な自意識やなんかを抱えつつ、うまくコントロールしたり解放したりしながら理性を持って生きていかねば、と構えていた方がリスクが少なくて済むと思うんだけど。どうでしょう。

読書中『ヒトの本性』川合信幸

2016年02月04日 | その他
2月3日(水)

「どうしてヒトは「よそ者」には冷たいのでしょうか」(127p)というフレーズに驚く。おお。確かに。
でも、そもそも冷たくすることが「よそ者」認定と同義なんだし、冷たくなかったらその相手は「よそ者」じゃないのではないか。
という屁理屈はさておき。

筆者がいうのは、ヒトの縄張りを守ろうとする意識・伴侶や食糧を守る意識が根底にある→それを侵し奪う者への怒り、というコースで、男性はそれが暴力で、女性は仲間はずれという形で出るという話。

なんだか、なるほどな~と思う反面、つまんねーとも感じる。
そして、本当のことっていうのは往々にして当たり前っぽくて刺激がないもんだ、とも思う。
刺激的でおもしろい説って大抵はまゆつばもので、実はわたしはそういうのがけっこう好きだ。
竹内久美子とか、それはないわ~と笑いながら、今度誰かに話そう、と考えてしまう。

本にも実直なやつとけれん味たっぷりなやつがいて、その間を行ったり来たりしながら、じっくり考えたり大笑いしたりするのって、至福であるなあ、と頷きながら寝る。

読書中『ヒトの本性』川合信幸

2016年02月02日 | その他
2月1日(月)

社会が荒んでいく感覚って、確かに実感としてある気がする。

一方で子供のころを思い出せば、今以上に規範意識は低いし、全体的に世の中がもっとガサツだったような。

本当のところはどうなのか。

よく言われることだけど、日本では戦後をピークに犯罪件数は減っている。
今読んでる『ヒトの本性』(川合信幸/講談社現代新書)はそこらへんをもっと広い規模で見ていておもしろかった。
ざっくりまとめるとこんなかんじ。
“ヒトはどんどん攻撃的になっているという印象は間違っている。古代の原始的社会では戦争や周辺国への制圧や奴隷売買といった暴力で人口の15%が殺されていた。これは20世紀の2度の大戦や大量虐殺・飢饉などの死者の5倍にあたる。
ちなみに14世紀の西欧では10万人あたり40人殺されていた。20世紀の終わりには1.3人に減少している。”
それは教育の普及にも原因があるが(理性が高まると暴力を厭うようになる)、人間というのは集まると互いに気を遣い、過剰に暴力的な人間は排除されるからなんだそうだ。

さらに筆者はこんなふうに言う。
「そもそもヒトは暴力を抑制し、他人と協力しようとする生物なのかもしれません」(124p)

まだ読んでる途中だけど、案外“性善説”な本みたい。

読みながら“人間はほんとにいいものかしら”と、きつねのお母さんになった気分で就寝。

「池上彰・森達也のこれだけは知っておきたいマスコミの大問題」池上彰・森達也

2015年11月07日 | その他
《☆☆ 11/1読了 現代書館 2015年刊 【ジャーナリズム 報道 対談】 いけがみ・あきら(1950~)もり・たつや(1956~)》

今、日本で一番国民に信用されている人なんじゃないですか池上彰。
それで全然調子に乗らないってのがまたすごいですよね、CMにも出ないし増毛もしないし。
この本の中でも、自身の影響力の強さを感じて、個人的な感想や評価は口にすまい、と決めていると言ってましたが、だよねぇという感じです。

これは今年出た本で、話題も新しいのでおすすめ。
ISによる後藤健二さんと湯川遥菜さんの殺害事件、報道ステーションでの古賀発言、それつながりの“各方面からのクレーム(「ご説明させていただきたい」あるいは「ご意見をうかがいたい」という形でやってくるそうです)”に池上彰がどう対応しているか(これがまた痛快)、「シャルリ・エブド」襲撃事件、オウム報道など。

森達也の聞き方もストレートなら、池上彰の答えも率直です。
わたしが聞き手だったら「なんでそんなにフラットで公正で、調子に乗らずにいられるんですか」と聞きたい。
(松本サリン事件の被害者・河野さんの本を読んだときも同じ感想を持ちました)


/「池上彰・森達也のこれだけは知っておきたいマスコミの大問題」池上彰・森達也

「チョンマゲ江戸むらさ記」ペリー荻野 ほりのぶゆき

2015年03月23日 | その他
《☆☆ 2/13読了 辰巳出版 2008年刊 【時代劇】 ぺりー・おぎの(1962~) ほり・のぶゆき(1964~)》

時代劇に関するコラム集。
視聴者目線で突っ込むほりのぶゆきに比べて、普段から出演者などに取材して記事を書いてるペリー荻野の発言がマイルドなのは仕方ないか。
そのおかげで、“冥府魔道”は小池一夫先生の造語なんだって、とか、瑳川哲朗(「大江戸捜査網」の井坂十蔵)はシアターVアカサカの代表なんだよ、とか、「へえー!」なネタがいっぱい読めたので問題なし!

そういえば金田龍之介が出た「子連れ狼」が見たいなあ。
原作と瓜二つだもん顔が。
BSで再放送してくれないかな。

あと、これを読むまでうかつにも気づかなかったのが、中村梅雀のお父さんがあの伝七(よよよい、よよよい、よよよいよい!の人)だったこと。
言われてみればそっくりだー!

梅雀さん、2時間ドラマもいいけど、伝七やりましょうよ!

/「チョンマゲ江戸むらさ記」ペリー荻野 ほりのぶゆき

「と学会レポート ギボギボ90分!」永瀬唯・植木不等式ほか

2015年02月08日 | その他
《☆ 2014/12/18読了 楽工社 2006年刊 【宜保愛子 と学会 霊能者】》

宜保愛子が生前出演したテレビ番組(日本テレビ系列「宜保愛子・新たな挑戦 ピラミッドの謎に迫る」1992年放映)のトリックを解明したイベントの書籍化。

わたしは、霊が見える云々を公言する人は、①商売 ②目や脳神経系の病気 ③注目されたい病 のどれかだと思っているので、①の宜保愛子は客を追い詰めたり脅したりせずに癒やす、プロだなあと感心すらしていました。

彼らの言うとおり、宜保はきっちり下調べをして古代エジプトやツタンカーメンについての知識を仕込み、相手の心理や発言・行為を巧みに誘導し、自身を偉大な霊能者に見せることに成功している、ように見えます。
しかし、それは一種の「芸」であって、タネや仕掛けについてとやかく言うのは、例えば東京コミックショーの蛇を「あれは下に奥さんが…」と言うのと同じなんではないか。
そういうことを言うと、いや、あっちはみんな承知の上で笑ってるからいいんだ、宜保愛子はみんなを騙してる!とお怒りになる向きもあるだろうけど、両者の間には手が込んでるか雑かの違いしか感じられません。

と学会系の人たちが宜保愛子を取り上げるなら、ただのインチキ扱いで終わるんじゃなくて、もうちょっと何かあるかも、と期待していました。
確かに、その巧みなやり方を予測(終始状況証拠と予想しかでてこない)して、「いやあ、うまいわ」みたいなことは言うけど、真意がいまいちわからなかったです。
バカにしたいのか、糾弾したいのか、むしろ見上げたもんだと評価したいのか(それはないか)。
パネリストたちの本音がどこにあるのかつかみ切れませんでした。
読解力の問題かな。

/「と学会レポート ギボギボ90分!」永瀬唯・植木不等式ほか

「日本のリーダーには、武器を持つ覚悟はあるのか!?」大川豊 佐藤正久

2014年10月14日 | その他
《10/2読了 ワニブックス【PULS】新書 2013年刊 【対談 国防】 おおかわ・ゆたか(1962~) さとう・まさひさ(1960~)》

聞き手の総裁にもかなりの知識と経験があり、両者の考え方にあまり相違がないので、たまにどっちがしゃべっているのかわからなくなるくらいよくかみ合ってる対談。

米海兵隊の飛行場を普天間から沖縄県外に移すことが現実的ではない理由や、尖閣諸島を絶対手放すべきでない理由など、ヒゲの隊長の説明はとにかくわかりやすい。

国内外での、自衛隊による災害救助や国際貢献の場面を目にする機会が多く、政治家より軍人の方がずっと信用できるんじゃないの?思う人が増えてませんか。
ヒゲの隊長も誠実なお人柄のようだし。

大川総裁が、“日本は政権与党が弱いときに大災害に見まわれる、運が悪い”といっていましたが、特に東日本大震災時の民主党のダメっぷりには改めてがっかりしました。
例えば菅首相が「災害緊急事態」を出さなかったせいで、現地が大混乱した話。
具体的に言うと、道をふさいだたくさんの一般車両は私有財産なのでどかすことができなかった。
道路が寸断されていて石油を運ぶにも途中までしか行けない、自衛官が交代しようにも危険物取扱の資格がないのでタンクローリーを運転できない、など。
なぜ宣言できないのか。
「個人の権利を抑制することになるから」(165p)だそうです。
菅直人こわい。
民主党こわい。
幼稚で当事者意識がなくて、危機管理が全くできない政治家ってこわい。
中国より韓国より北朝鮮よりこわい。

領土問題だって、敷地内、いや自宅の中に不法侵入されても、追い出そうとしないお父さん(お母さんでもいいけど)だったら、家が乗っ取られちゃうわけですよ。
せっかく捕まえたのに、そのまま逃がしちゃったことがありましたよね、例の中国人船長。

じゃあ、速攻で武器を手に不審者を退治してくれる強いお父さんなら問題ないのか。
相手がもっと強かったら?
子供にも武器を与えて戦うことを要求したら?
さらに武器を買うために家計が逼迫したら?
強いお父さんの家だっていうんで、喧嘩っぱやい家のトラブルに巻き込まれたら?
それでも強いお父さんがいい?
…守ってくれるなら、いい、気がしてきた。

と言いつつ、結局、反戦教育に洗脳されてる世代のわたしは「うーん」と唸るだけ。難しいっす。
「自衛」と「戦争」の間にはどれくらいの距離があるのか。
“世界の悪意”にさらされたとき、この国は守られるのか。
二人の言う「覚悟」を今の与党の政治家はどのくらい持っているのか。

甘ったれた考え方かもしれないけど「中庸」っていう感覚を失わずによく考えていきたいです。

/「日本のリーダーには、武器を持つ覚悟はあるのか!?」大川豊 佐藤正久

「ダメをみがく “女子”の呪いを解く方法」津村記久子 深澤真紀

2014年09月09日 | その他
《9/6読了 紀伊國屋書店 2013年刊 【対談】 つむら・きくこ(1978~) ふかさわ・まき(1967~)》

津村記久子が対談本!と聞けば読まずにいられないわけですが、相手が深澤真紀というので約1年間の躊躇。
あんまりいい印象がないんです。
宮崎哲弥に似てますよね、それはどうでもいいか。

「世間知らず・不器用・KYなままでも、なんとか社会で生き延びていくための技術を語り尽くす。世の中をすいすい渡っていけないことに悩む、すべての女性に捧ぐ。」という帯。

2人の失敗談は、多くの働く人にとって身に覚えがある話だと思います。

“生きにくさ”を語る男性、たとえば、穂村弘と比べると、この2人の話はもっと切実で生々しくて、血が流れるような痛みを感じます。
実際に周囲の人と傷つけあうし、悪意やイライラに巻き込まれていやな目に遭うし。
(そういえば、最近ほむほむがカマトトに見えて困る、それはどうでもいいか。)

深澤真紀はバブルという浮ついた時代だからこそ浮上できたみたいな危うさがあって、その不安定なところと、結局“自分語り”が大好きなあたりがちょっと不快。
感情的で、同じ職場で働くのは遠慮したい雰囲気です。
一方、津村記久子の受け答えは現実的で落ち着いていて堅実。
こっちの方がずっと大人だ。
つきあうならこっちがいい。

でも、
そう思うのは深澤の発言に自分の嫌な面を重ねて見るからなんじゃないか。
あ~、正直なところそうかもしれない。
地に足の着いた津村記久子たちの世代がうらやましいのだ、わたしは。
テレビを見てると、似合わない衣装は浮いてるし、ときどき驚くほど自信なさげ、そういう深澤に自分自身への嫌悪を勝手に投影して、気分を悪くしてるだけなんだ、わたしは。

そんなことを考えながら読了したのでちょっと疲れた。

(後半の津村記久子の母親の話は興味深かった。
いつか作品になるんだろうな。楽しみです。)

/「ダメをみがく “女子”の呪いを解く方法」津村記久子 深澤真紀

「一億人のプチ狂気」ステッグマイヤー名倉

2014年02月14日 | その他
《2/7読了 二見書房 2004年刊 【その他】 すてっぐまいやーなぐら(1974~)》

個人サイト「Otearai web」の1コーナー「私の中のプチ狂気」に寄せられた投稿集。

みんなしれっとした顔の裏でこんなこと考えてるんだ、人に言えない性癖や妄想を一気にカミングアウト!

確かに吹き出してしまうようなものもたくさんあるんですが、
それよりもさまざまな人の“特殊”な部分が結集したせいで、結果的に特殊じゃなくなってきてるところがおもしろかったです。
春日武彦が「狂人の妄想は、実はステレオタイプ」と何かで言っていたのを思い出しました。
つまり、おれってこんな変なことを考えてる、私はこんな変な癖がある、っていっても、けっこうみんな似たり寄ったりなんだという安心。

「CMとかでリンゴ丸かじりとかしてるの見ると必ず「その中にカミソリの刃がタテにしこまれていて、かじったとたんに上下前歯の間の歯茎が切れてブシュウと血が出る」という画を想像してしまって、「ああああいたぁーい」つってつい口を押さえたりしちゃう」(19歳女性)

そういう点で、癒やし本なのかもしれないです。

/「一億人のプチ狂気」ステッグマイヤー名倉

「木皿食堂」木皿泉

2013年10月10日 | その他
《8/31読了 双葉社 2013年刊 【インタビュー エッセイ 脚本】 きざら・いずみ 夫(1952~) 妻(1957~)》

この夏、立川談志のドラマやってましたね。
若い頃を小出恵介、中年以降を中山秀征、晩年が田中泯というキャスト(3人とも好演)。
そしたら脚本が木皿泉。
エンディングで知ってびっくりしました。
談志エピソードのチョイスが絶妙で、構成もひねりが効いていて、短いわりに見応えがありました。

木皿泉といえば「すいか」と「野ブタ」は毎週見てました。
夫婦のペンネームであることはずっと後に知りました。
懐がグイッと深い、大人の作家というイメージがありましたが、エッセイを読むとかなり血みどろな、ジタバタする人みたい(特に妻)で、ちょっと意外。
そりゃそうだよな、達観しちゃってる人に「すいか」みたいな話が書けるわけない、と納得したわけです。

/「木皿食堂」木皿泉

「フォントのふしぎ ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?」小林章

2013年06月08日 | その他
《6/7読了 美術出版社 2011年刊 【デザイン】 こばやし・あきら》

例えばルイ・ヴィトンのロゴ、高そうで風格があって、自信満々ですよね。
そんなに凝ったフォントではないのに、高級感が出るのはどうしてか。

あるいは個人商店で看板を手書きで作ろうとすると、どうしても影を書きたくなる気持ちはよくわかる。
でも、文字の背後に影を入れた瞬間なぜか漂う場末感。

フォントデザイナーである筆者の雑談っぽい解説が親しみやすいし、カラー図版が豊富できれい。

Aを書くとき、向かって右の斜めの線が太めになる(逆だと気持ち悪い)、ゴシック系のXは実は2本の線がズレるようにデザインされている、しかも内側より外側が少し太くなっている、なんてすぐ誰かに話してみたくなる。

たしかにフォントの好みってありますよね。
これはなんとなく嫌いとか、ついこれを使っちゃうとか。
そして、それぞれのフォントに抱くイメージが、誰が見てもだいたい一緒っていうのが不思議です。
フォントって、奥が深いかも。

/「フォントのふしぎ ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?」小林章


「このマゲがスゴい!! マゲ女的時代劇ベスト100」ペリー荻野とチョンマゲ愛好会女子部

2013年04月28日 | その他
《4/26読了 講談社 2010年刊 【時代劇 チョンマゲ】 ぺりーおぎの(1962~)》

ペリー荻野にはちょっとぼやけた印象しかなかったし、
しかも、チョンマゲといえば、まずほりのぶゆきでしょ、「女子部」ってなんだよ、「歴女」みたいなスカしたかんじか、と軽く反感を持ちつつ、
それでも蠱惑的な「チョンマゲ」という文字に勝てずにめくってみたら、
なんと挿し絵がほりのぶゆきでした。
狭いな~、チョンマゲ市場。

確かにマニアックではあるけどモノがチョンマゲなだけに嫌みは皆無、直感的な批評の鋭さといったら無敵、「川っぷちの料亭やりながら鬼平に囲われたい」などの妄想や、テーマ曲への評価もこまかい。
ドラマだけでなく、チョンマゲ小説にも造詣が深い。
この女子部は、カスミとミチヨという編集者2人組(察するに1970年前後の生まれ)で、特にこのミチヨ(杉良好き)という人がおもしろすぎて、すっかりファンになってしまいました。
ミチヨが本を出したら、どんな内容でも買う。

ちなみに、わたしも時代劇大好きなんですが、マゲに目覚めさせてくれたのは千代大海です。
おちょぼ口で、浮世絵みたいな顔してるんだよね、しかもマゲのおかげで目尻が上がるからますますいい男っぷり。
親方になってもチョンマゲだけは続けてほしかったなあ、無理か。
安美錦も(最近髪が減ってきてるけど)マゲが似合うきれいなお相撲さんです。
安倍ちゃん、憲法改正するなら“男は全員チョンマゲ”にしてくれないかな。
そしたら、イケメンの定義がひっくり返って、いい世の中になりそう。

それはともかく、
久しぶりに大笑いしながら本を読みました。
うっかりすると「♪なにぃを~、今日は求めて生きたぁ~」と口ずさんでいる始末。
(「江戸を斬る」のエンディングです)

続編が出ることがもしもあったら、ほりのぶゆきも入れてください。

/「このマゲがスゴい!! マゲ女的時代劇ベスト100」ペリー荻野とチョンマゲ愛好会女子部

「父さんのsh*t発言、つぶやきます 毒舌オヤジとぼくとツイッター」ジャスティン・ハルパーン

2013年01月18日 | その他
《1/14読了 仲達志/訳 阪急コミュニケーションズ 2010年刊 【その他】 Justin Halpern(1980~)》

脚本家としてハリウッドで成功することを夢見る28歳無職の「ぼく」は、恋人も住む部屋も失って実家の厄介になっている。
そこで毎日発射される73歳の父・サムの深~いsh*t発言をtwitterに投稿しだしたら大人気。
そのツイート中心にまとめたエッセイがこの本なのさ。

「ほう、そんなにつらかったのか? しかし幼稚園くらいで音を上げているようじゃ、おまえのこれからの人生はお先真っ暗だな」(27p)

「上映時間より長い時間待たされても見る価値のある映画なんて、おれにとっては存在しない」(103p)(「ジュラシック・パーク」上映館前の大行列を見て)

「なんで床の上で身もだえしているんだ? ……最近流行のブレイクダンスってのか。本物はどうかしらんが、おまえがやっているそれが流行しているなら世も末だな」(122p)

「ブッシュを見てると、あいつは去年、絶対にズボンにクソをもらしたに違いないって思うんだよな」(155p)

扉写真で見るサムはなかなかコクのあるハンサムだ。
しかも、有名になっても取材は一切受けないというからまるでサムライだ。
そして、基本的に彼の言うことはすべて正しい。
「大草原の小さな家」の父・チャールズみたいに強くて知恵がある、そのうえものすごい毒舌家なんだから最高だ。
現代の繁栄を築いた世代の「強い父親」と、「ひ弱な息子」という構造は、アメリカだけの話でははいのさ。

それにしてもこの本が1400円ってのは高すぎると思わないか?
たまにこういう変な買い物をしてしまうぜ。
ブックオフで半額で買うくらいがちょうど楽しめる本だったぜ。

…アメリカンなつもりがスギちゃんみたいになってきちゃったので、今日はここまで。

/「父さんのsh*t発言、つぶやきます 毒舌オヤジとぼくとツイッター」ジャスティン・ハルパーン