轟クルマ文化研究所

日本のどこかの片田舎、今日も所長の声が響いています。
「馬鹿モン!あれほど雑誌を鵜呑みにするなと言うとるじゃろ!」

ホンダ ZR-V

2023-09-15 18:00:36 | HONDA
助手 「ホンダのZR-Vってどう思います。」

所長 「うーん、なかなか興味深いクルマじゃの。」

助手 「どう興味深いんですか。」

所長 「このクルマを通してホンダの現状や販売戦略なんかが透けて見える気がすると言うか。」

助手 「ああ、何となくわかる気がします。」

所長 「どうわかるんじゃ。」

助手 「いや、最初北米でHR-Vとして発表されたとき、世界統一名称が取り沙汰されているときに、どうしてホンダは違う形のクルマに同じ名前を付けるのか疑問に思ったんですよ。」

所長 「確か日本のヴェゼルが海外ではHR-Vとして売られとるんじゃったな。」

助手 「そうです、そうです。」

所長 「ヴェゼルではアメリカでは小さすぎるって判断なんじゃろうな。じゃがHR-Vの名前がすでに浸透しとるんで後継車の名前を変えるのももったいないんで、そのまま採用したってコトなんじゃろ。」

助手 「数が出る北米市場ならではの措置かもしれませんね。」

所長 「ホンダ全体からすると苦肉の策なんじゃろうけど。で、ヴェゼルとCR-Vの間を埋めるサイズなんで、違う名前を付けてヨソでも売ろうという腹なんじゃろ。昔のオデッセイとラグレイトの関係と一緒じゃな。」

助手 「それにしてもホンダのSUVの名称はややこしいですね。海外専売モデルだと他にBR-VにWR-V、UR-Vなんてのもあるようですけど、どれがどこ向けでどのクラスなのかさっぱり見当が付きませんね。」

所長 「言えとるの。ま、それぞれの販売先で浸透しとるんじゃったら問題ないんじゃろうけど、ホンダの社内でもちゃんと把握できとるのか疑問じゃがな。」

助手 「さすがに本社の開発の人たちは把握してるでしょうけど、関わりのない人はチンプンカンプンかもしれませんね。」

所長 「で、日本に新たにZR-Vが投入されたってコトじゃな。」

助手 「サイズ、価格で売れ筋から外れてしまったCR-Vの代わりにしようというコトなんでしょうね。」

所長 「そういうコトなんじゃろうな。」

助手 「ただ・・・。」

所長 「ん、ただ、なんじゃ。」

助手 「ZR-Vの顔つきってどうなんでしょうね。」

所長 「ああ、確かにちょっとクセのある顔つきじゃの。ボンネットの先端が下がっとるのとライトとグリルの位置関係や形状からくるんじゃろうけど。」

助手 「北米市場ってどうも他とは違う独特の価値観とか審美眼とかあるじゃないですか。」

所長 「確かに理解不能なデザインのクルマもあるのぉ。」

助手 「欧州向けのクルマなんかは日本でもウケがいいんですけど、北米向けにデザインされたのってどうも大味と言うか、良いデザインの評価基準が違う気がするんですよね。」

所長 「わからんでもないの。」

助手 「先代のプリウスのデザインを酷評したアメリカ人が、プリウスのデザインはエンターテイメントやアニメなんかの日本向けのデザインと言ってましたけど、正直、ボクのイメージではアメリカ人向けのデザインの方がよっぽど理解不能ですけどね。」

所長 「それはお前が日本に住んどるからじゃろ。向こうの街並み、乾いた空気や強い太陽光、日本では見られん広く開けた景色、そこに合うクルマが違うのはしょうがないじゃろ。実際アメリカで見るアメ車って日本で見るよりも魅力的に感じるって言うしの。」

助手 「よく雑誌とかにもそういう風に書いてありますよね。そう言えば昔アメリカに行ったコトがあるんですけど、そのときにポンティアックのグランダムがやたら走っていて、見てるうちに欲しくなったコトがあったのを思い出しました。」

所長 「ほぉ。グランダムか、懐かしいの。日本でもそこそこ売れとったんじゃないか。」

助手 「それからグランダムを見掛けるたびに懐かしく思うんですけど、どこが気に入ってたのかよく思い出せないんですけどね。」

所長 「そういうのって結構あるんじゃろうな。」

助手 「それはわかるんですよ。けどそのアメリカ人向けにデザインされたZR-Vを日本に持ってきても売れるとは思えないんですよ。言ってるうちに販売終了のアナウンスが出るのが目に浮かぶと言うか。」

所長 「うーんどれぐらい売ろうとしとるかにもよるじゃろうな。」

助手 「そりゃ、同じクラスの日産のエクストレイルとかスバルのフォレスター、マツダのCX-5なんかの台数が比較対象になるんじゃないですか。間違ってもカローラクロスの台数を意識しないコトでしょうね。大やけどするのは目に見えてますしね。」

所長 「エクストレイル、フォレスター、CX-5辺りと比べられると辛いかもしれんの。」

助手 「そうなんですか。」

所長 「ここんトコのホンダの売り方を見とると、日本で売れとるのって軽のN-BOXとコンパクトカーのフィットに、フィットの派生車種のフリードとヴェゼル、あとはステップワゴンぐらいじゃろ。」

助手 「あとはどんどん販売を終了してますよね。ここ2~3年だけで見てもグレイスにジェイド、アクティ、クラリティ、レジェンド、S660、オデッセイ、シャトル、NSX、CR-V、インサイト、アコードと軒並みなくなってしまいましたしね。オデッセイは復活するらしいですけど。」

所長 「あらためて並べてみると凄い数じゃのぉ。」

助手 「売れる車種に絞ったというコトなんでしょうけど、正直やり過ぎなんじゃないかと心配になりますけどね。」

所長 「言えとるの。ま、それだけ国内で売れる車種が偏っとるってコトなんじゃろうけど。」

助手 「広く浅くより、狭くって浅い市場なんでしょうね。」

所長 「北米や中国なんかではセダンのシビックやアコード、SUVのCR-Vが絶好調らしいが日本ではまったく売れん。需要がズレてしもとるんじゃ。」

助手 「ですね。」

所長 「前にも言ったと思うんじゃが、それでもそういうクルマを欲しいお客も確実におるし、ただラインナップを維持するほども期待できん。そこで新型が出たあと、しばらく売って引っ込めるって販売戦略なんじゃろうけど、どんどん極端になってきとると思うんじゃ。言わばヒットアンドアウェイ戦法じゃ。」

助手 「ヒットアンドアウェイですか。」

所長 「そうじゃ。トヨタや日産がフルラインナップを敷いて大きな商いをしとるのを、ホンダや三菱やマツダが真似をしてみんな苦境に陥ったんじゃ。」

助手 「バブルの頃ですね。販売系列を増やしたり、隙間狙いの新車がどんどん出てきましたよね。」

所長 「そのあと、バブルの崩壊による新車需要の低迷、リーマンショックやら軽自動車の台頭なんかを経て、それぞれ売り方を模索して現在の形になったワケじゃ。」

助手 「マツダや三菱は得意分野に特化してラインナップを縮小、ホンダは国内向けと海外向けを完全に切り離し、トヨタと張り合ってた日産に至っては海外で売れる車種以外を切り捨てたって感じですね。」

所長 「発売してすぐ引っ込めるのはネガティブに映る部分もあるんじゃが、ホンダのお客の規模を考えると常時売るのは厳しいし、かといって海外で売っとるのがあるのに国内で売らんのはもったいなしの。」

助手 「そう考えると期間をきって販売するのは理に適ってますよね。でもそれなら初めから期間限定や台数限定にしておけば、販売終了してもネガティブな印象は与えないんじゃないですかね。」

所長 「わざわざ販売機会を限定するコトもないじゃろ。売れるんなら売り続けた方がいいに決まっとるしの。」

助手 「それはそうですね。」

所長 「じゃから今度のZR-Vにしてもそう長いコト売るつもりはないのかもしれん。」

助手 「出てすぐは結構売れるでしょうけど、長続きはしないように感じますね。」

所長 「うちの近所にもさっそく1台停まっとるわ。散歩のついでにじっくり見たんじゃけど、顔つき以外はまっとうなデザインなんじゃ。フォルムも綺麗じゃし、サイドの面の張りもいい感じじゃし。」

助手 「そうなんですか。」

所長 「あとボディカラーが黒だったんで、グリルが目立たなくなって格好良く見えたんじゃ。」

助手 「確かに黒だといいかもしれませんね。」

所長 「黒だと凄みも出るし、全然似とらんが映画『TAXi』に出てくる悪モンの乗ってとったランエボを思い出したわ。」

助手 「言われてみれば、いい者より悪者が似合いそうなクルマですね。」


参考資料
ホンダ ZR-V(本田技研工業株式会社)
ホンダ・ヴェゼル(轟クルマ文化研究所)
ホンダ CR-V(轟クルマ文化研究所)

コメント (6)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« マツダ CX-60 | トップ | 三菱 デリカミニ »
最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (たかべえ)
2023-09-16 12:07:08
的確なZR-V評ですね。言われるように早々に廃盤になるのが目に見えるようです。顔も、いろんなパーツの寄せ集めで統一感なし。ホンダは迷走していますね。MOTOGPの迷走同様、抜け出せる日は来るのでしょうか
返信する
Unknown (宇垂)
2023-09-20 14:54:07
たかべえさん

ZR-V、本場アメリカでの評価はどうなんでしょうね。
向こうで絶賛されているのであれば正解なんでしょうけど。
日本でも今のところ大人しい感じですが、将来的に雑誌のキワモノ特集の常連になりそうな気が。
返信する
Unknown (llll)
2023-09-30 21:37:45
日本の美的感覚も結構特殊だと思います。背の高い車を自家用にするのが最も多いのは日本でしょう。
返信する
Unknown (宇垂)
2023-10-03 16:00:08
llllさん

>日本の美的感覚も結構特殊だと思います。背の高い車を自家用にするのが最も多いのは日本でしょう。

言われてみれば確かにそうですね。
ただ背の高い車が好まれたり、SUVやセダンが好まれたりするのって道路や環境に左右される部分が大きいのかもしれません。
返信する
Unknown (High-rookie)
2023-12-01 21:06:45
CR-Vは元々「Confortable Runabout Vehicle」の意味で、HR-Vは「Hi-rider Revolutionary Vehicle」の頭文字をとったもので、既存のクルマには収まらない革命的なクルマ、という意味合いから命名との事ですが、ではZR-Vの「Z」ってなんだろうと思って調べてみると、ホンダのサイトでは「お客様や車の個性を解放したい」という想い、
そして、「新しいお客様にもお届けしていきたい」という狙いから、「新しいイメージ」を持つZという文字を冠したSUVとして、ZR-Vと名付けました。
とあります。
急に漠然とした意味になりました。

もちろん昔のように名前に大仰な意味を持たせる時代と違い、わかりやすい記号としての名前をつけるのが最近の流れなので、元々の意味を無視してHR-V(ヴェゼル)とCR-Vの間なので「ER-V」や「FR-V」と着けるのが分かりやすくて本来かもそれませんが、前者だと何となくEVなのか?と思ってしまうし、後者だと後輪駆動なのか?と思ってしまうので、苦し紛れに序列から外して後付けの理由にしたように見えてしまいました。

何故新しい意味がZになるのかは分かりませんが、この顔のグリルがアストンマーチンやヤリスに似ていてホンダらしくないのは置いておいて、ボンネットの張り出しが何かに似ていると思ったら、「CR-Z」を思い出しました。
ひょっとして、ZはCR-Zから取ったのか、それならSUVにハイブリットスポーツの要素を足して新しいものを作るつもりだったのならホンダのサイトの説明も分かるぞと勝手に思い、ZR-V色々調べましたがそんな要素は無さそう‎…
そりゃアメリカではHR-Vですもんね‎…

そうするとZにはただの記号以外の意味合いは無さそうで、それはそれで隠された意味や遊びを持たせるホンダらしくなくてちょっと寂しいです。
(初代ステップワゴンのグレードのw,g,nとかおもしろかったんですどね。)
返信する
Unknown (宇垂)
2023-12-07 16:01:36
High-rookieさん

来年4月発売予定のWR-VのWはウィンサム(魅力的な)という意味らしいです。
他にもホンダにはBR-V、UR-Vと一文字目だけが変わるSUV名の目白押し。

使っていないアルファベットを探して、意味は後付けって感じなんでしょうね。
名前をみるだけでホンダのSUVというのがわかる効果はあるんでしょうけど。
返信する

コメントを投稿

HONDA」カテゴリの最新記事