トヨタ・アクア

助手　「ヴィッツ・サイズのハイブリッド、噂のアクアがついに出ましたね。」

所長　「じゃな。」

助手　「しかし、凄いですね。プリウス超えのリッター当り40キロですよ。」

所長　「10・15モードでじゃろ。最近のミライースとかアルトエコなんかはJC08の数値で宣伝しとるのに、どうなんじゃろうな。」

助手　「うーん、確かに紛らわしいですね。ま、40キロって言う方がインパクトがありますしね。」

所長　「トヨタの発表ではJC08の35.4キロをメインに出しとるんじゃから、そっちで話をするべきなんじゃないかのぉ。」

助手　「そうですね、すみませんでした。でも35.4キロでも十分凄い数字ですけどね。」

所長　「そうなんじゃが、出る前にJC08で40キロ、10・15では44キロとか聞いとったから、そんなモンかって感じじゃけどな。」

助手　「当初はそういう目標で進めてたんでしょうね。でも実際に出すのは至難の技ってコトだったんでしょうね。」

所長　「35.4キロっていう数値も一番下のLグレードだけで、販売の中心になりそうなSやGグレードになると33キロになってしまうんじゃ。それだけシビアな世界なんじゃろうけど。」

助手　「まぁ、どっちにしろ、実際に走らせての燃費とは大きくかけ離れてますし、参考にしかならないんですけどね。」

所長　「じゃが、燃費の良し悪しにみんな意識がいっとるし、購入の決め手になるモンも多いんじゃろ。それにエコカー減税の延長と補助金もまた始まったようじゃしな。」

助手　「みたいですね。いつまでバカなコトに税金を使うつもりなんでしょうね。」

所長　「ま、みんなダメなのはわかっとるんじゃろうけど、それでもやらんとどうしょうもない状況なのかもしれんけどな。」

助手　「でもアクアなんてほっといても売れるんじゃないですか。」

所長　「アクアだけ売れても、この前のプリウスのときと一緒で、予約リストが長くなるだけじゃしな。ほかのクルマが売れんと販売店はキツいじゃろう。」

助手　「じゃあハイブリッドカーだけ外すとか。」

所長　「それは面白そうじゃけど、外す理由はどうするんじゃ。」

助手　「あ、そうか。」

所長　「税金を投入するんじゃから、大義名分が必要なんじゃ。それには環境を謳うのが、一番理解が得やすいんじゃろ。あとは復興ぐらいかのぉ。」

助手　「だったらハイブリッドカー全部を免税なんてやめて、リッター20キロ以上のクルマに絞った方がいいと思うんですけどね。ベンツやBMWの高いクルマが一番恩恵が大きいっていうのもどうかと思いますし。」

所長　「金のない国民のためにやるんじゃったら、その方がいいんじゃろうけど、産業を動かすためにやるんなら、小さいのも大きいのも満遍なく売れた方がいいんじゃないのかのぉ。」

助手　「それもそうですけど。」

所長　「それに高いクルマほど減税効果は大きくなるって言うても、出る台数が少ないから、税収自体の影響もそう大きくないじゃろうし、誰も腹は痛まんじゃろ。」

助手　「・・・理屈はわかるんですけど、なんか釈然としませんね。」

所長　「じゃあ、減税幅のデカいベンツでも買えばいいんじゃないか。70万とか80万もお得らしいぞ。」

助手　「そんなの買えるワケないじゃないですか。」

所長　「そういうコトじゃ。70万も減税を受けようと思うと、1千万以上払わんとイカンのじゃ。減税や補助金の話って、いつも支払う金の話が抜けとるんじゃ。前の補助金が25万で大騒ぎしたときも、新車が25万で買えるワケじゃないんじゃから、そうやすやすと買い替えられるモンじゃないしの。」

助手　「ですね。ところでアクアの話に戻しますけど、どうですか。」

所長　「どうって、そりゃ売れるじゃろ。」

助手　「売れるのはわかってますけど、クルマ自体どう思われます。ボクはデザインも最近のトヨタの中では、一番まとまってていいと思うんですよ。ヴィッツがあのデキですから、プリウスのコンパクトじゃなくっても、アクアをヴィッツとして出すとか、アクアに一本化しても良かったんじゃないですかね。」

所長　「うーん、ワシはあんまり好きじゃないのぉ。」

助手　「えーっ、そうなんですか。どこがダメなんですか。」

所長　「どこって、コトもないんじゃが。」

助手　「欠点らしい欠点が見当たらないクルマだと思いますけどね。プリウスよりも燃費が良くって、それでいて安くって、ヴィッツよりもカッコよくって、質感もいいみたいですし、あと中も広そうですしね。正直、売れて当然のクルマだと思いますけど。」

所長　「誰も売れんとは言っとらんじゃろ。売れると思うんじゃが、好かんと言うとるんじゃ。なんて言うか、プリウスに似せたデザインで、プリウスよりも燃費が良くって、プリウスよりも安くって、あとは、ヴィッツよりも格好が良くって、ヴィッツよりも質感が高い、あとなんじゃったかのぉ。」

助手　「えーっと、ヴィッツよりも広い、ですね。」

所長　「ようするに、なんかと比べてどうのっていう話ばっかりじゃろ。アクアってクルマは、こんなクルマで、こんな面白さがあって、こういうところがいいっていうのが、さっぱり見えてこんのじゃ。強いて言えばカラフルなトコかのぉ。」

助手　「なんか無理やり悪く言ってませんか。所長ってみんながいいって言うのって嫌いでしょ。そういうのを天の邪鬼って言うんですよ。」

所長　「そうなのかもしれん。例えば、女性を好きになるときに、誰々よりも鼻が高いとか、誰々よりも顔が小さいとか、誰々よりも胸が大きいとか、そんなのを比べて好きになったりはせんじゃろ。」

助手　「胸が大きいのは大事ですよ。」

所長　「誰もお前の趣味なんて聞いとらんわ。ヒトを好きになるときって理屈じゃないじゃろ。そういうのがアクアに感じられんのじゃ。」

助手　「それはそうですけど。あれっ所長、なに、ニヤついてるんですか。ひょっとして・・・。」

所長　「・・・・。」


参考資料
トヨタ・アクア（トヨタ自動車株式会社）
トヨタ・プリウス（轟クルマ文化研究所）
トヨタ・プリウスα（轟クルマ文化研究所）
トヨタ・ヴィッツ（轟クルマ文化研究所）
景気対策その2（轟クルマ文化研究所）
『環境メルセデス』（メルセデス・ベンツ日本株式会社）

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