無明抄

もの言わざるは腹ふくるるわざ・・。かなわぬまでも一市民の発言

華氏911 お薦め、だけど限界も。

2004-09-09 | 蟷螂斧:私的時事論談
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映画芸術として、あるいはドキュメンタリーとして、グランプリに値する映画かどうかは?だという気がするが、マイケル・ムーアの自然な疑問、素朴な怒りが素直に説得力をもって伝わってくることは確かだ。

小泉首相の言うとおり「偏っている」、それも実に正々堂々と「偏っている」し、あからさまに、痛快にブッシュをコケにしている。その意味で「政治的プロパガンダだ」というのもあながち間違っていない。

そんな手法をとりながらムーアは、分かりやすい事実の積み重ねによって、この戦争の胡散臭さを暴き出す。
イラクに送られた兵士達の姿や戦死した兵士の母親の痛切な姿を通じて、建前としての大義や正義の実像を突きつけてくる。

最近、マスコミ、政治家、評論家達が、軽軽しく、したり顔で「武力行使」を語り、「軍事的貢献」ができなければ一人前の国家ではないなどと言うが、そんな連中、民主党の党首とやらにも、「武力行使」とはこういうことなのだぞ。分かっているのかと、見せてやりたい、そんな気がする。

圧巻は、ムーアが米連邦議会の前で議員たちを片っ端から捕まえて、あなたの息子をイラクに志願させましょうと呼びかける場面だ。
イラク攻撃の大義を語り、米国の崇高な使命に拍手したはずの議員たちが、くちごもり、あるいはこそこそと逃げていく。
400数十名の連邦議員のうち、自分の息子を兵士としてイラクに行かせているのはたった一人だという!
「戦争を決めるのは我々だが血を流すのは我々ではない」というわけだ!

米国の栄光のために戦場に送られているのは、軍隊にでも入らなければ学校にもいけず職にもつけない貧しいマイノリティーなのだ。
兵隊不足に悩む軍は、貧しい地域にねらいを定めて、まるで手配師かキャッチセールスさながら、若者たちを軍隊に誘う。
「給料もらいながら学校にもいけるぞ」「外国にもいけるぞ」「音楽やりたいのか、それなら(スターの)○○知ってるか、彼も軍隊で音楽やってたんだぞ」
こんな調子で集められた兵士達は、戦車の中で「野郎どもをぶっ飛ばせ」ってなロックをガンガンかけながら「敵」をなぎたおす・・。

この映画は一見の価値はある。
ただ、一つ、どうしても解せないのは、ムーアが、この戦争を見据えようとするなら避けて通れないはずのパレスティナ問題や、米政権、とりわけネオコンとシオニストの関係等について、全く触れていないことだ。
ブッシュとサウジ王家の癒着ぶり、ネオコンと石油利権の関わりという、ある意味公然の事実を改めて描きながら、この戦争が石油のためと同時にイスラエルのためであり、ネオコンは同時にシオニストでもあるということを完全に無視、あるいは隠蔽している。

その点を見れば、ムーアも所詮せいぜい民主党応援団であって<アメリカ>そのものの病巣にまで踏み込む気はないのかと思わざるを得ない。


と、書いてきたが、こんな指摘を発見↓
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