はくちょうのいる空には、前にも話したとおり天女の忘れた羽衣が浮かんでいる。この羽衣は2枚あって、その1枚は前に撮影した。今晩撮るのはもう1枚、はくちょうの羽により近いほうだ。
天女の羽衣。本当は網状星雲と呼ばれる超新星爆発の残骸で、NGC6960、NGC6992などと言う無粋な名前が振られている。今から7万年前、この場所で一つの星が生涯を終えた。星はその大きさによって最後が違う。太陽くらいの大きさの普通の星は寿命が長く、終焉も比較的穏やかだ。しかし質量が10倍もあるとそうは行かない。中の構造自体が違ってくる。その星たちはほとんど寿命が短く、最後は宇宙空間を揺るがす大爆発で幕を閉じる。それが超新星爆発、スーパーノバだ。飛び散ったガスは大きく広がり、やがて薄れて見えなくなる。羽衣はこの超新星爆発で広がったガスが、今まさに消えようとしているところなのだ。
そして、この超新星爆発だけが、宇宙の中で唯一鉄より重い元素を作ることが出来る。ビッグバンによる宇宙かいびゃく以来、こうした爆発が繰り返されてきたからこそ、僕らは数々の合金を使い、金や銀の装飾品を持つことが出来る。