チリチリリン

風にゆれる風鈴のように
こころ休まる音を届けたい

「アマンダと僕」

2019年06月30日 | 映画の話

 

『姉の死後、姪のアマンダ(イゾール・ミュルトリエ)をどうするか友人に問われたとき、「子育てなんて心の準備ができていないし、頼る人もいない」と泣き出すダヴィッド。父親候補としては、かなり頼りない。そんな彼に、アマンダは2つのことを気づかせる。ひとつは、彼女がダヴィッドを必要としていること。もうひとつは、アマンダをいちばん愛している人間こそが彼女の保護者になるべきだということだ。「I need you」と「I love you」。生きるうえでいちばん大切なことは何かを、この映画はみつめている。

 随所にちりばめられた自転車のシーンが印象的だ。ドラマの前半、ダヴィッドと姉は、速さを競いあいながらパリの街中を疾走する。その姉の死の現場に、ダヴィッドはペダルを踏みこんで近づいていく。そして、母を失ったアマンダは、ダヴィッドが漕ぐ自転車の後部席で彼の背中にそっと頬を押し当てる。さらに、笑顔が戻った2人は、かつての姉とダヴィッドのように、スピードを競って川沿いの道を駆け抜ける。ここでの自転車は、喜びと悲しみのターニングポイントをつなぎながら、2人の人生のロードマップを描き出していく。走ることと生きることが一体になった構成が、とびきり清々しい。(矢崎由紀子)』

 

テロで女性の命が失われた時、残されたのはまだちょっと姉に頼っていた若い弟と7歳の娘、悲しみを共有しながら次第に家族になっていく過程が自然で好もしい。東京国際映画祭でグランプリを獲ったそうだ。

映画レポートのように自転車シーンが多く、パリの街並みがつぶさに見て取れる。ダビッドはアパートの管理人の仕事をしている。アパートといっても長期住居もあるが、旅行の際の短期滞在もある。私もフランス旅行の際アパートを借りてそこを拠点に歩き回ったので、その雰囲気が懐かしく、街の景色もその時が思い出されて本当に嬉しかった。

連なる屋根の上の無数の煙突はみんな赤く塗られていて......それを初めて見たときの感動を思い起こし、その場面だけで涙が出そうになった。

 

 

 

 

 


コメントを投稿