3/8日付けの投稿記事で今年の大統領選挙では、新型コロナウイルスの影響で医療保険制度が大きな焦点になると申し上げました。



日本と比較すると、医療費総額で1.6倍、一人当たり費用では2.2倍と言うのが大凡のスナップショットですが、手術や歯科治療、先端医療などは極端に高額になります。
そう言う意味で、医療技術の面では世界の先頭を走る米国ですが、医療制度上の問題もあり、今回のような新型コロナウイルスの蔓延だけでなく、季節性インフルエンザのような一般的な病気の流行に対しても米国は基本的に脆弱なのです。
今日は米国の医療保険事情と今回の新型コロナウイルス対応への問題点、何故それが大統領選挙に影響するのかをご紹介します。
ご存知のように米国には日本の健康保険のような国民皆保険制度はありませんでしたが、無保険者の増加と医療支出の増大に歯止めをかけようと2010年に発足したのが所謂オバマケアです。
オバマケア以前にも高齢者向けの①メディケアと低所得者層向けの②メディケイドの二つの公的医療保険がありましたが強制加入ではありません。
ここでは詳細は省きますが①は連邦政府が運営主体で、一定期間保険税を支払うと65歳から加入可能となり保険対象は入院、外来及び処方薬で、一部以外は毎月保険料を支払うことになり、保険カバー率は70〜80%です。
②については連邦政府のこと援助をベースに州政府が運営主体、保険料の支払いは不要で、医療費は全額公費で賄われます。
オバマケアは上記②のメディケイドの対象を拡大する形で実施されましたが、共和党系知事の州で提訴、州の自治権を侵害するとの違憲判決により州により実施状況が異なることになった経緯があります。
また、公的医療保険①②は、見た目は良いのですが医療費が高額な米国では保険対象の医療行為がかなり限定されること、また、様々な理由で無保険者が現状でも約10%ほどいる状況が続いています。
このような状況で、今回の新型コロナウイルスの蔓延が発生しました。

昨年夏から感染が拡大しているインフルエンザの流行でも15,000人以上の死者が出ましたが、この原因の一つは検査費用だけで3,000ドルもするため無保険者が治療を受けられないことによるものだと言われています。
上の写真は先日の米国議会の超党派公聴会の一場面ですが、今回の新型コロナウイルスの検査費用及び治療費用についてカリフォルニア州選出の下院議員ポーター女史が質問している場面です。
ホワイトボードに書かれている数値は、医療保険を使う前提での個人負担を示していますが、検査だけで低めに見積もっても1,331ドル、この他に病院での隔離入院費用が4,000ドルかかるので、一般の家庭では負担が難しく、感染を阻止するためにも連邦政府の予算での無償化をCDC長官に迫っているところです。
読者の皆さんも米国での医療費が高額であることは何処かでお聞きになったことがあると思います。


日本と比較すると、医療費総額で1.6倍、一人当たり費用では2.2倍と言うのが大凡のスナップショットですが、手術や歯科治療、先端医療などは極端に高額になります。
例えば、場所にもよりますが盲腸で手術、入院した場合は3〜6万ドル、一般の初診料だけでも100〜300ドル、専門医にかかると200〜500ドル、入院する場合は室料だけで1日数千ドルの請求を受けます。
勿論、大手有名企業に勤める幹部社員の場合は、カバレージが広く自己負担分も殆ど無い医療保険を福利厚生として貰っている方や大金持ちが同様の保険を購入できる方もいますがほんの一握りです。
国家非常事態宣言及び緊急予算の編成により今回は検査費用等の無償化が実現しましたが、今回の状況を受けて以前から燻っていた医療保険精度改革問題が大統領選挙の大きな争点になっています。
但し、欧州他の先進国と違い、米国は伝統的価値観である「民間の市場競争原理」、「自治と自己責任」の下で展開してきていること、その結果実質的な医療保険の担い手が寡占状態の医療保険市場の大手の民間保険会社であることなど複雑な要素があり日本のような国民皆保険になるとは思えませんが、どのような落とし所に落ち着くのか注目して行きたいと思います。
関連動画;自作トレーラーの関連動画はYouTubeにアップしてあります。宜しければご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=z-eC-Jokxhw&t=25s
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