地位を得た人が、よく、
自分をエラく見せるために、部下や後輩を
ぞんざいに言ったりする事がある。
あいつはどうのこうのと、分かった風に言ってみたり、
自分はあれをしてやった、これをしてやった、と、
大袈裟に吹聴したり。
お市は、そういうのを鵜呑みにする人だった。
***
明智は信長の許で、参謀として成果をあげたし、
アイデア・マンで、情報通だった。
戦略に有利な新しい情報を有効に使うことに
長けていた。
信長が、彼なしで天下を取れたかは、
極めて疑問だと思う。
けれどその事が、信長の、
明智に対する複雑な態度の一因だった。
信長は明智を、親衛隊のように傍に置き、頼りながら、
対外的には、憎まれ口を聞いた。
彼なしでは権力は保てないかも知れない、という不安。
けれど、明智が自分より優れていると思われるのは、面子に関わる。
明智は押し出しの強い方ではなく、
むしろ端正で静かな品位のあるタイプだったと思う。
品位という点では、血筋がいい信長よりもむしろ、
際立って見えたと思う。
だから、ヤツは気取っているとか、世間知らずで現実を知らないんだ、とか、
そういう言い方をしたと思う。
***
早くに父親を亡くしたお市にとっては、
日の出の勢いで天下に迫る保護者・信長は、
事実以上に頼もしく、
偶像的に見えていただろうと思う。
彼女は信長を盲信したし、極めて敬愛した。
無条件で“輝ける天下取り”と見て慕ってくれるお市は、
信長には可愛くてたまらない存在だったろう。
それはいい。
だけど同時に、彼女は、明智や秀吉を軽蔑していた。
実際には、彼らなしに信長はあり得なかっただろうに。
お市は、自分が一番信長に愛されていると
考えていただろうが、
実際には、明智の方が、心を許されていたと思う。
お市の前で、信長は、
輝ける兄でいなくてはならなかった。
***
お市もその娘たちも、
明智や秀吉が本当に果たした役割を
知ることはなかったのかもしれない。
だから、反逆者・明智光秀を軽蔑し、
憎み続けていた。
彼女たちは、戦場に出たことはなく、
戦国時代の現実も知らなかったのだろう。
ただ、輝ける兄、信長の栄光を守り、繋げることが、
彼女の執念だったと思う。
***
人を、自分の目で見ないで、又聞きだけで判断すると、
誤るのである。
自分をエラく見せるために、部下や後輩を
ぞんざいに言ったりする事がある。
あいつはどうのこうのと、分かった風に言ってみたり、
自分はあれをしてやった、これをしてやった、と、
大袈裟に吹聴したり。
お市は、そういうのを鵜呑みにする人だった。
***
明智は信長の許で、参謀として成果をあげたし、
アイデア・マンで、情報通だった。
戦略に有利な新しい情報を有効に使うことに
長けていた。
信長が、彼なしで天下を取れたかは、
極めて疑問だと思う。
けれどその事が、信長の、
明智に対する複雑な態度の一因だった。
信長は明智を、親衛隊のように傍に置き、頼りながら、
対外的には、憎まれ口を聞いた。
彼なしでは権力は保てないかも知れない、という不安。
けれど、明智が自分より優れていると思われるのは、面子に関わる。
明智は押し出しの強い方ではなく、
むしろ端正で静かな品位のあるタイプだったと思う。
品位という点では、血筋がいい信長よりもむしろ、
際立って見えたと思う。
だから、ヤツは気取っているとか、世間知らずで現実を知らないんだ、とか、
そういう言い方をしたと思う。
***
早くに父親を亡くしたお市にとっては、
日の出の勢いで天下に迫る保護者・信長は、
事実以上に頼もしく、
偶像的に見えていただろうと思う。
彼女は信長を盲信したし、極めて敬愛した。
無条件で“輝ける天下取り”と見て慕ってくれるお市は、
信長には可愛くてたまらない存在だったろう。
それはいい。
だけど同時に、彼女は、明智や秀吉を軽蔑していた。
実際には、彼らなしに信長はあり得なかっただろうに。
お市は、自分が一番信長に愛されていると
考えていただろうが、
実際には、明智の方が、心を許されていたと思う。
お市の前で、信長は、
輝ける兄でいなくてはならなかった。
***
お市もその娘たちも、
明智や秀吉が本当に果たした役割を
知ることはなかったのかもしれない。
だから、反逆者・明智光秀を軽蔑し、
憎み続けていた。
彼女たちは、戦場に出たことはなく、
戦国時代の現実も知らなかったのだろう。
ただ、輝ける兄、信長の栄光を守り、繋げることが、
彼女の執念だったと思う。
***
人を、自分の目で見ないで、又聞きだけで判断すると、
誤るのである。