美術の学芸ノート

西洋美術、日本美術。特に中村彝、小川芋銭関連。真贋問題。他、呟きとメモ。

刑事コロンボとドガ の絵

2020-11-30 22:14:00 | 西洋美術
一昔前から人気のあるTVドラマ刑事コロンボで、評価が高い作品に邦訳「二枚のドガ の絵」(原題は"Suitable for Framing"1971)がある。

このドラマの中に出てくる上流階級に属する美術批評家が犯人なのだが、この「2枚のドガの絵」とは、実際には存在しないドガ の作品ではなく、一般にはあまり知られていないが、現実に存在する作品だ。

それらの作品は、ドラマでは、複製画が使われているのだろう。
その2点のドガ の作品とは、今日、オルセー美術館ある「バレーの舞台稽古」と称されるドガの初期ダンス作品に重要な関連がある2点の素描作品である。

オルセー美術館にある作品の左端部に背中を見せているダンサーと、奇妙に顔だけ見せているダンサーの隣で左手を挙げているダンサーがいるが、彼女たちの素描が、TVドラマ、刑事コロンボの中に出てくるドガの「二枚の絵」だ。

オルセー美術館にあるドガ の作品に関連する2点の素描作品が、TVドラマの中で重要なテーマに絡んでいるのが、ちょっと意外で、面白いが、美術コレクターの叔父を殺した犯人が、ちょっと屈折した有能な美術批評家だから、それらが価値あるものと知っていたのは不自然ではないのだろう。

なお、これとの類似作品はメトロポリタン美術館にもあるが、「二枚のドガの絵 」との関連性は、オルセー美術館の作品との方が分かり易いだろう。

また、2点のドガ の素描のうち1点は、有名なオークション会社クリスティーズで扱われていたようだ。現在もそうかどうかは分からないが、その評価額もコロンボ・ファンには参考になろう。
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マネの「白菊の図」(茨城県近代美術館蔵)〜心あてに折らばや折らむ

2020-11-25 11:38:00 | 西洋美術



「心あてに折らばや折らむ初霜の置きまどはせる白菊の花」(凡河内躬恒)

ピーター・J・マクミランの今日2020-11-25の朝日新聞記事を読んで、茨城県近代美術館にあるマネの「白菊の図」(上図)に思いを重ねた。
今の時期、散歩すると、民家のあちこちに白菊が目立つ。

先の和歌について、マクミラン氏は言う。
「撰者である定家がいかに白という色を好んでいたのかが窺える。特に白いものと白いものを重ねる例には、今回の歌の菊と霜のほか…」

しかし様々な白と白の取り合わせを好むのは何も定家だけではなかろう。

P.ヴァレリーなどにより黒の魅力が強調される画家マネだが、彼の白の扱いもなかなか魅力的だ。

白菊の図にも微妙に白と白とが重ねられたり、小さな画面の中で複数の白が互いに響き合っている。

それは、あの一本のアスパラガスを描いた時もそうだった。

それと、今、思い出したが、マネが描いた、洒落た白いズボンをはいた「ブラン氏の肖像」(国立西洋美術館蔵)。

マネの作品における黒の魅力は、スペイン美術の影響があるかも知れないが、彼の絵画における白の魅力が、ひょっとすると日本美術から来ているとすれば、ちょっと面白い。


※画像は、アーティゾン美術館における「琳派と印象派」展の「美術手帖」記事より引用。
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2020ー11ー4までの呟き

2020-11-10 18:41:00 | 日々の呟き
「余分なものは、はぎとられちゃっているわけだよね、認知症になると。(認知症は)よくできているよ。心配はあるけど、心配する気づきがないからさ。神様が用意してくれたひとつの救いだと。」(認知症患者になった認知症研究者、長谷川和夫さんの言葉)NHK TVより

多和田葉子さんが中村桂子さんに「ウイルスが自然界に存在する意義とは何でしょうか」と問い、その答えを聞いて、「ある意味では、文学はウイルスと似たものなのかもしれません」と言った。今日の朝日新聞より

この問いは多くの人がその答えを聞きたかったものだろうし、多和田さんがある意味では、文学はウイルスと似ていると述べている「文学」は、「芸術」に置き換えても通じるものと多くの人が思ったことだろう。


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2020-10-31までの呟き

2020-11-10 12:54:00 | 日々の呟き
皮肉にも口うるさく家の者に注意していた作家本人が感染してしまうという志賀直哉の『流行感冒』が今日の天声人語に。磯田道史氏の近著を介して紹介。

「有能を認められたオークション会社サザビーズの美術鑑定士としての眼力も、学識というよりは直観と集中力のたまものだったらしい。…こうした人物は、サギ師でなければ物語作者になるほかない。そして…」生井英考氏によるニコラス・シェイクスピア著、池央耿訳『ブルース・チャトウィン』の書評より

横尾忠則氏が岡田暁生氏の『モーツァルト』を書評!
「パパゲーノの特徴として、著者は物まね性、反復性、遊戯性を挙げているが、こうした幼児性(インファンティリズム)こそが芸術の核であり、天才の条件なのではないだろうか。」

ラングリッジ・アーティスト・カラーズ創業者デヴィッド・コールズ『クロマトピア 色の世界 写真で巡る色彩と顔料の歴史』の書評を温又柔さんがしている。


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2020-10-10までの呟き

2020-11-10 12:46:00 | 日々の呟き
ライター、野原広子さんが友人に学歴を「詐称」したという昨日の朝日新聞記事は面白かったね。

東大生の親は富裕層…「身分制度から解放する意味を持っていた学歴が、身分制度に戻りつつあるというような感覚です。」小田嶋隆さんの言葉。昨日の朝日新聞記事より

「健康な人であれば免疫の働きで菌を抑えこむことができ、結核を発症するのは感染した人の1〜2割と言われる」昨日の朝日新聞記事より。
昔から結核にかかっている芸術家の周辺に集まった友人の芸術家には、結核に感染してしまった人とそうでない人がいたが、それは上の理由からかもしれない。

「心理学では、本来守るべき被害者を非難する心の働きを「公正世界信念」という考え方でとらえてきました。」三浦麻子大阪大教授の言葉、昨日10月9日の朝日新聞より

「日本では…自分の意見を堂々と唱えるといったポジティブな意味での個人主義が乏しい…しかし…実は『負の個人主義』が猛烈に強いんです。」歴史学者與那覇潤さんの言葉、10月9日の朝日新聞より




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