版画作品の贋作問題が数日前からマスコミを騒がせている。
美術作品の贋作はたいてい忘れた頃にやってくるものだ。ほとぼりが冷めた頃に。
贋金作りよりも版画贋作者に罪の意識が乏しいせいか、今回も版画工房の制作者は画商に頼まれただけでその後どのように使われたか自分の知ったことではないとしてTV取材も受けていた。
自分はたぶん犯罪者ではなく、ただ金が欲しかっただけで、職人として言われるとおり作り、その報酬を受け取っただけということらしい。
2月8日の読売新聞ではサインを入れたのは、画商側のように書いてあったが、ここは重要だ。
偽の署名や偽のスタンプ印を入れた時点で贋作が成立することがあるからだ。
画商は、自ら偽の署名を入れたのか、それとも別に偽の署名や偽のスタンプ印を入れる専門の人物を雇って罪を分散、あるいは曖昧にしようとしたのかどうか、ここは様々な判断をしていくうえで重要なポイントになる。
今回贋作されたのは日本画画壇の巨匠と言われる東山魁夷、平山郁夫、片岡球子、そして洋画壇の人気作家で若くして亡くなった有元利夫らの版画作品で、美術のTV番組などで頻繁に取り上げられた作家たちだ。
これらの作家は、本来筆で絵を描く人たちであって、版画制作についてどれほど詳しいのか私はあまり知らないが、自分が描いた絵の版画を監修してサインするといっても、作家によってそれぞれその厳密さは違うだろう。あまりうるさいことを言わない「巨匠」だっているはずだ。
画商は、自ら偽の署名を入れたのか、それとも別に偽の署名や偽のスタンプ印を入れる専門の人物を雇って罪を分散、あるいは曖昧にしようとしたのかどうか、ここは様々な判断をしていくうえで重要なポイントになる。
今回贋作されたのは日本画画壇の巨匠と言われる東山魁夷、平山郁夫、片岡球子、そして洋画壇の人気作家で若くして亡くなった有元利夫らの版画作品で、美術のTV番組などで頻繁に取り上げられた作家たちだ。
これらの作家は、本来筆で絵を描く人たちであって、版画制作についてどれほど詳しいのか私はあまり知らないが、自分が描いた絵の版画を監修してサインするといっても、作家によってそれぞれその厳密さは違うだろう。あまりうるさいことを言わない「巨匠」だっているはずだ。
おそらく自らが版を制作するなどというのは一般に現代日本画の「巨匠」たちにあっては稀なことだと思うが、多くの人たちは、デパートなどの画廊で「リトグラフのオリジナル」、あるいは「オリジナルのリトグラフ」などという言葉が飛び交うのを聞くと、「オリジナル」という言葉に眩惑されて、作家本人が自ら版(石版や亜鉛版、今日ではアルミ版)を起こして、刷り上げるまでやるのだと解釈するかもしれない。
だがこれは違うのだ。例えば「リトグラフのオリジナル」を「リトグラフによるオリジナル作品」の意味に解するなら、画家は版のもとになる絵を提供し、他人がリトグラフ技法で制作した版画の色味などを監修し、そこに署名や限定枚数を書き込めば、それで売る側はオリジナル版画作品と称してよいのである。
上記、日本画の巨匠たちの版画や複製物はかなり以前から出回っており、私も頻繁にあちこちで見かけたことがある。明らかに網点のある写真による複製物であることも多いが、リトグラフのオリジナル版画と称している高価な作品も各所で売られていた。
「版画を作って売れば先生の絵が高くて買えない人々を喜ばすことができる」などと人気のあるこうした画家たちや、その著作権を有する人たちに言って許可を取り、オリジナルの絵のリトグラフによる「複製版画」や、版画用の絵を画家たちに描かせて工房の職人が版画を制作し、それを画家本人や著作権を持っている人が監修して画商が販売する。これらはいずれも「贋作」ではない。だが、オリジナルの絵のリトグラフによる「複製版画」は、「オリジナル版画」とはふつう呼ばないだろう。
「版画を作って売れば先生の絵が高くて買えない人々を喜ばすことができる」などと人気のあるこうした画家たちや、その著作権を有する人たちに言って許可を取り、オリジナルの絵のリトグラフによる「複製版画」や、版画用の絵を画家たちに描かせて工房の職人が版画を制作し、それを画家本人や著作権を持っている人が監修して画商が販売する。これらはいずれも「贋作」ではない。だが、オリジナルの絵のリトグラフによる「複製版画」は、「オリジナル版画」とはふつう呼ばないだろう。
版画には、芸術家(画家または版画専門の版画家)が絵を描き、自ら版を制作して刷り上げる自画、自刻、自摺による完全なオリジナル版画もあるが、浮世絵のように画家が絵を提供するだけのオリジナル版画も歴史的に認められているから、画家が「版画用の絵」を提供する限り、それは「オリジナル版画」でいいのだが、手で描いた絵の単なる複製であるリトグラフ技法による版画というのは、果たして版画作品としてはいかがなものだろうか。
今回の贋作報道では、日本画の巨匠たちの本物の版画も近年、値崩れしているとのことであるが、私は驚かない。
一方、これまで正規のルートで制作していた優秀な版画工房職人が、金に困って今回のような画家本人や著作権者の監修が及ばないところで「贋作」版画を制作したとするなら、サインの有無の他、作品内容におけるその差異はそもそもどこにあったのかと問えなくもない。