これが死の正体なのかと感ずる
地獄にいるかのような
壮絶な苦悶の表情から
おだやかないつもの顔に戻り
私と父の顔を
その目が確かに捉えたあと
二回
間隔を空けて
かぷ
かぷ
と
口呼吸をして
母は動かなくなった
痰が詰まり
取っても取っても取れない
ベッドの上で溺れていく
地響きのような
大きな雑音混じりの呼吸音も
私と父のそばに
最期の最期まで居てくれようとして
惜しむように
限界を越えて
必死に不整で脈打つ心臓の音も
どちらも止んでいる
聴診器を当てても
胸の中に広がるのは
ぽっかり静寂
母の好きだった
ディズニーのCDをかけていて
たぶんそれで行くんじゃないかなという
予感は的中し
エレクトリカルパレードの曲が流れる中
母は旅立った
2024年
4月5日
18時41分
母との12年に及ぶ日常が終わった
新しい日常をなんとかやっていても
おりおりに母がいないという寂しさがやってくる
もう二度と抱きしめることができない
触れることができない
平気な顔もできるし
泣く事も減った
今までを思い出すというよりは
「あ、そういえば…」と
ふとした瞬間に去来する
“もう違うんだ”という感覚
それがとてもこたえる
介護をしていた日々は
私を確実に変えた
最期まで親として
母は私を導いてくれた
幸せになって
私がいなくてももう大丈夫よって
とっくに限界は越えていたのに
それでも
許すかぎりの力を振り絞って
そばにいてくれた
その頑張りを横で見せてもらったから
死ぬまでは絶対に生きなきゃいかんと思う
石炭袋の先で
愛犬と過ごす
母の本当の幸いを願いながら
これから歩む道を
ゆっくりでいいから
一歩一歩大地を踏みしめて進まねばと
母に幸せな日常を送る自分を
見せなきゃと
あなたの息子として
産んでくれてありがとうと
この世界は生きるに値することを
伝えなきゃと
そう思うのです。
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