ましログ

日常と好きなものと母の自宅介護の極私的記録

悪魔のささやき

2015-08-31 08:32:20 | バイコヌール 旅行
【バイコヌール 珍道中 (1)】



ロケットの打ち上げを見に行きたい。
種子島なら行けるだろう。
両親を送り出した後かな。
いつか…
健康で長生きすりゃ、たぶん。



2015年の春のこと。

自分の将来について、
介護について、
少しばかり思い悩む事がありました。


「今やれない事はこの先願っても難しくなっていくだろう」


死ぬまでにしたい事リスト
書いてはみたものの、
いつ実現するんだこれ?
なんて事を鬱々思いふける毎日。


リストを見返しながら、
そういやロケットの打ち上げって
どうやって見に行くんだろうか?
ふと思いたって、ネットを検索してみたわけです。


目に飛び込んできたのは、
「バイコヌール宇宙基地への旅」
の文字。


バイコヌール、、、!?
ああ、ソ連の。
日本人初、宇宙飛行士の秋山さんを打ち上げた場所か。
見てた見てた。
へー、こんなのあるんだね。
2年前の若田飛行士の時に実施されたのかあ。
ふんふん、、、
料金、高え!
無理無理。
なんでこんな高いんだ?
場所がすげー遠くにでもあるのか?
何?カザフスタンかよ!
租借地としてロシアが使用量を払い続けている…
新しくロシア領内に新基地を建設中。
今後はそちらに打ち上げを移行。
へえ~
…したらもう少しで見れなくなるのか。
そうか。
ふ~ん、そうか。
まあロケット見にカザフスタンって。
いやいやいや。
種子島で十分でしょ。
十分。
そうそう十分。
十分………
………
………なのか?
おまえは本当に種子島に行きたいのか?
否、種子島でいいのか?
打ち上げを見たい、そもそもの理由はなんだ?
宇宙の事、なんも詳しくないのに、
思い入れもクソもないのに、
ロケットの打ち上げが見たいと抜かす貴様のその本当の理由はなんだ?
秋山さんの乗ったあの有人ロケットに憧れたからじゃないのか?
スペースシャトルでもH-ⅡAでもBでもなく、
10歳の時に見た砂漠から打ち上がる、あの鋭角の機体じゃないのか!?
正直になれ、このバカちんが!


というわけで、
ネットのおかげで何かのスイッチが入ってしまったようで
無謀にも
ソユーズロケットの打ち上げを見に行く
という計画をたててしまった次第。



次回へつづく。



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あの娘に会いに

2015-08-02 22:43:39 | バイコヌール 旅行
カウントダウンはない。
時計を見ると深夜3時を過ぎている。
何度もテレビで見た光景。
けれどもこれは全く違う。
目の前に画面はない。
誰かが「はずれた!」と声をあげる。
発射台に目をむける。
燃料補給マストが倒れていく。
打ち上げまで40秒を過ぎている。
え?もうそんな時間?
時間の感覚があやふやになる。
考える間もなく、今度は下のマストがはずれる。
突然、
シャーっという轟音と共に
ゆっくりとオレンジ色の光がロケットを照らす。
点火した。
まだロケットは飛び立たない。
大地がぼうっと照らされていく。
煙があがる。
二度目の閃光。
眩しい。
白い。
さっきの比じゃない。
大地が昼間のように照らされる。
見えていた星々が見えなくなる。
まるでドームの中にいるように
空がのっぺりとグレーに照らされる。
緊張して体が震えている。
違う。
胸に響いてる、、、音じゃない。
衝撃波。
体がビリビリと揺さぶられる。
こんなにすごいのか…。
圧倒される私の心など意に返さず
最後の支柱が花ひらく。
ゆっくりとあがっていく ソユーズ TMA-17M 。
あっけなく。
素知らぬ顔で。
ほんの一瞬の出来事。
この場所では何度も繰り返されてきた風景。
私にとっては一生に一度の風景。
加速してゆく機体。
太陽のように丸い閃光が
みるみる星の大きさになっていく。
体を裂くように響いていたメロディーが
だんだんと小さくなる。
自分の息が荒い。
遠い。
さっきまですぐそこにいたのに、
もう手の届かない場所にいる。
天に昇っていく火の玉は
やがて地球の丸みに沿うように
地平線へ落ちていく。
ロケットの後にうっすらと漂う雲。
あっという間に8分50秒。
宇宙船がロケットから切り離される時間。
飛行士が宇宙を感じる瞬間。
周りで起こる拍手。
祭りのあと。
旅の終わり。
寂しいような、満たされたような
自分の感情をとても整理しきれなくて
同行者の菊地涼子飛行士と握手をした瞬間
思わず泣いてしまった。
菊地さんは「よかったね」と
優しく言葉をかけて下さった。
「あそこから見ていたんだよ」と、
25年前、自身がバックアップクルーとして
打ち上げを見ていた場所を教えてくださった。
著書で「けじめをつけにきた」と
その日の事を語っていた菊地さん。
同じかもしれない。
見上げてみれば、
自分の足元も
少しはしっかり見えてくるんじゃないだろうか。
そう思ってここに来た。
ソユーズに会いに。


旅の全記録はコチラから→「バイコヌール珍道中・早見表



写真のデジタル現像処理を友人でありカメラマンの
東氏にやって頂きました。
旅の直前、露出のあれやこれやも指南してくれ
おかげで一生の思い出を記録として残すことができました。
感謝!


東氏のお店はコチラ
リミエ写真機修理工房
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