大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

アメリカ、対中関税の25%への引き上げ実施

2019年05月10日 | 日記

 ワシントンポストは、米中貿易協議は関税引き上げを止めるような合意にはいたらず、当初の予定どおり2019年5月10日からアメリカは中国からの輸入2000億ドル(22兆円:1ドル=110円)分について関税を10%から25%に引き上げることになったと伝えた。

 ワシントンで開催されている米中高官会議は金曜もひきつづきおこなわれる予定。

 ちなみに関税引き上げは、5月10日に到着した分ではなく5月10日以降に中国から出荷された分にかかる。

 このため実際の引き上げ関税が課されるまでの数週間、ひきつづき緊迫した状況での交渉が続くと見込まれている。

 ちなみに、これを私がしるかぎりもっともはやく報じたのが朝日新聞(5/9夕刊)。米紙より早い報道だったように思う。

 朝日新聞は、今回の関税引き上げ対象は資本財や中間財が多く、ハイテク部品のように航空便を使うものはあまりないとしている。

 


トルコ経済、低迷続く

2019年05月08日 | 日記

 トルコ経済が低迷から抜けられないでいる。

 2018年中ごろ、トルコアルゼンチンといった新興国で通貨暴落が発生した。

 その後、緊急利上げ、為替介入、IMFの緊急融資(アルゼンチン)などがやつぎばやにおこなわれ、2018年10月ごろトルコやアルゼンチンの通貨は下げどまった

 そして2019年にはいるとアメリカで利上げ期待が後退し、新興国の通貨問題はこれでしばらくおやすみかと思われた。

 しかし、2019年2月ごろからアルゼンチン・ペソやトルコ・リラがふたたび下落をはじめ、アルゼンチンでは2018年の通貨危機時をこえて通貨安が進んでいる

 トルコ・リラは2019年のピークにはまだ相当の距離があるものの、2月以降じりじりと通貨安(対ドル)が進んでいる。

 少し前、フィナンシャルタイムズが、トルコ中銀が国内銀行から短期で借りた外貨(かなりの金額)を中銀の外貨準備にいれて水増し公表していたことをスクープ。その後、トルコ・リラが大きく下落してニュースになったが、実際のところトルコ・リラの下落はそのかなり前から始まっている(ちなみに、このスクープは何かの賞を取ると思う)。

 その背景にあるのが高いインフレ率と経済の悪化である。

 トルコのインフレ率(CPI)は2018年10月に前年比25.24%をつけた後いくらか低下しているが、依然として20%前後という高い水準にとどまっている(下の図)。

 

 その一方で経済は低迷を続けている。

 実質GDPは2018年Q3が年率-1.57%、Q4が-2.45%と2四半期連続でマイナスを記録(下の図)。

 

 

 これを私の研究分野である自動車でみてみると、トルコはヨーロッパへの輸出拠点として自動車産業が発展しているが、2018年の自動車生産台数は158万7,836台と前年より約9%の減少となっている。

 この減少は現在も続いており、2019年3月の自動車生産は前年比-18.4%となっている。

 こうしたことからトルコから撤退する自動車メーカーも出始めており、年18万台の生産能力をもつホンダは2021年に同国の生産から撤退すると発表している。

 当然のことながら失業率も上昇しており、2019年3月の失業率は14.7%と過去10年で最高となっている。

 こうした経済状況は、エルドアン大統領ひきいる公正発展党が2019年3月の総選挙で大きな敗北をきっする原因になった。

 インフレを抑え、海外投資を呼び込むには通貨の安定が不可欠。

 アルゼンチン・ペソとともにトルコ・リラの動向にしばらく注意したい。

:ブログの内容については十分吟味しているつもりですが、間違いがないことを保証するものではなく、また将来の経済、政治変化を考慮に入れたものでもありません。

 

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米中貿易協議で中国、先週末にこれまでの合意内容の見直しを要求

2019年05月07日 | 日記

 ウォールストリートジャーナルなどによれば、米中貿易協議において先週末、中国側からこれまでの合意内容の見直しを求める要求がでていたことが明らかになった。

 2019年5月6日(月)におこなわれた会見において、ライトハイザー氏は、先週末に中国からこれまでの合意から離れる動きがあったと発言。

 「交渉の実質的な後退」があったことを示し、2019年5月10日(金)から2000億ドル(22兆円:1ドル=110円)について関税を10%から25%に引き上げる考えをしめした。

 ムュニーシン氏も、この数日、中国の方向に大きな変化があったと発言し、米交渉団で見解が一致していることを示した。

 なお、今週5月8日(水)から予定されていた米中高官協議については、6日(月)に中国外務省から交渉団が訪米準備をしているとの発表があった。

 ただし訪米日時についての明言はなく、訪問団も当初予定されていた100人から小規模なものになるとの報道が多い。

 これについてライトハイザー氏は、5月9日(木)と10日(金)に中国からの訪米団と交渉をおこなうことを予定しているとしている。

 先週、トランプ大統領が対中関税の引き上げを宣言したとき、交渉のためのブラフ(はったり)ではないかという見方があったが、今回の会見で米中貿易協議が大きなデッドロックに直面しつつあることが明らかになった。

 

2019/05/06   中国、今週の米中協議をキャンセルか?

2019/05/06   トランプ大統領、今週金曜日に対中関税を25%に引き上げると宣言

2019/05/03   米中貿易協議、来週末までに大枠決定か?

2019/04/04 米中貿易協議、間もなく妥結か?  

2019/03/20 米中貿易協議、来週、北京で高官協議: 2つの課題 

2018/09/18 米政府、9月24日から中国からの輸入(22兆円)に10%の関税を発動 

2018/09/16 米中貿易摩擦の現状: トランプ大統領、22兆円の追加関税を数日内に発表予定? 

2018/05/12 トランプ大統領、輸入車に20%の関税を提言 

2018/04/08 トランプ政権、輸入車に国内より厳しい排ガス基準、試験を検討

2018/03/03 トランプ大統領、鉄鋼の輸入に25%の関税: 日本への影響は中国より大きい 

2016/12/23 拡大するアメリカの対中貿易赤字とトランプ次期大統領 

 


トランプ大統領、今週金曜日に対中関税を25%に引き上げると宣言

2019年05月06日 | 日記

 2019年5月5日(日)のお昼ごろ(アメリカ東部時間)、トランプ大統領はツイッターで今週金曜日に2000億ドル(22兆円:1ドル=110円)分の対中関税を10%から25%に引き上げると宣言した。

 現在、アメリカは中国からの輸入500億ドル(5.5兆円)に対し25%の関税を、2000億ドル(22兆円)に対し10%の関税をかけている。

 2000億ドルの関税は、当初は2019年1月から25%に引き上げられる予定だったが米中協議の進展をうけ3月からに延期。そして3月実施も、その直前にふたたび延期となっていた。

 トランプ大統領は今回、突然、これを5月10日(金)から25%に引き上げると宣言した。

 トランプ大統領は、関税がかかっていない残り3250億ドル(36兆円)についても、すぐに25%の関税を課すとしている。

 今回の関税引き上げ宣言の意図については、(1)補助金問題などについて交渉の最後のつめ(中国の妥協)を急がせるためのブラフ(はったり)であるという見方と、(2)まとまりかけた交渉内容に中国内部から異論が出て、これまでの合意内容の大幅な見直しをアメリカが迫られた(ことへの対応)、といったような見方がでている。

 5月15日(水)にモラー特別検察官の議会証言(トランプ氏にきわめて不利な内容)があるかもしれないということも、トランプ大統領の今回の決定に影響を与えているかもしれない。

 意図はともかく、ウォールストリートジャーナルやCNBCなどで5月10日までに米中協議の大枠決定かという報道があった直後だけに、世界に大きな衝撃がはしっている。

 5月8日(水)からワシントンではじまる米中協議のゆくえに注目したい。

 

2019年5月6日午前9時13分追記

 2019年5月6日、ウォールストリートジャーナルは、5月8日(水)からワシントンで予定されていた米中貿易協議を中国がキャンセルすることを考慮していると速報した。

 

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