大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

トルコでエルドガン大統領が勝利宣言: 積極財政の継続へ

2018年06月25日 | 日記

 

 上:ローマ帝国の巨大建設プロジェクト。387年に完成したイスタンブールのヴァレンス水道橋(1993年撮影)。

 

 2018年6月25日(日)、トルコで総選挙がおこなわれ、現職のエルドガン大統領は過半数の支持を得たとして勝利宣言をおこなった。与党の公正発展党は、単独では過半数に届かないが、連立する民族主義行動党と合わせると議会の過半数を占める見込み。なお、野党は選挙に不正があったと主張しており、選挙結果をめぐってしばらく混乱が続く可能性もある(欧米の一部の選挙監視団は入国を拒否されている)。

 ところでニューヨーク・タイムズ(2018/6/21)によればエルドガン大統領は、選挙がおわったらボスポラス海峡に並行して巨大運河の建設に着手すると主張している。

 エルドガン大統領は、政治では強権的に反対派を排除。その一方で、吊り橋としては世界第4位の長さをほこるオスマン・ガーズィー橋やヤズル・スルタン・セリム橋など巨大建設プロジェクトを実行。公共事業を大幅に拡大することで(積極財政により)、GDPの拡大をはかってきた。NYTによれば、エルドガン氏が大統領になった2002年にはGDPに占める建設業の割合は16%だったのが、現在では22%にまで増加するにいたっている。

 しかし、近年、そうした政策の負の影響もあらわになってきた。先の2つの橋は高い通行料金のため交通量が少なく政府が建設費用の返済のため多額の補助金を支給せざるをえなくなっているとか、与党と建設業者の癒着が進んでいるとか、高物価、トルコ・リラの急激な下落が進んでいるなどである。

 こうしたなか、本来であれば緊縮財政にかじが切られなければならないのであるが、先に述べたようにエルドガン大統領は、これまでどおり積極財政を続ける姿勢を見せている。ちなみに、さきの巨大運河については、ただで通れるボスポラス海峡が近くにあり、ガス・石油パイプラインの敷設によりタンカー通行が減っているなか、はたして十分な船舶利用が見込めるのか疑問視する声も多い。

 物価、為替、景気、財政のバランスをどうとっていくのか、今後を見守りたい。

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