アメリカの貿易・サービス収支の赤字が拡大を続けている。
下はアメリカの貿易・サービス収支の推移をグラフにしたもの。
グラフからは1990年代後半以降、中国に対する貿易・サービス収支の赤字が拡大し、年間の赤字額が1000億ドルから5000億ドル(約60兆円:1ドル=120円で計算)に5倍近く拡大していることがわかる。
第二次世界大戦後、アメリカの貿易・サービス収支は黒字だった。
しかし、上のグラフからもわかるように1970年代半ばから赤字が定着するようになった。その原因は日本だった。
下のグラフをみると1970年代、80年代のアメリカの貿易・サービス収支の赤字のほとんどが日本によるものだったことがわかる。
その結果、アメリカ国内で日本批判が強くなり、プラザ合意による円高誘導、日本車の対米輸出の自主規制と対米直接投資(工場進出)が進むことになった。
今、それと同じことが起ころうとしている。
上のグラフを見ると赤字に占める中国の割合は、1980年代後半の日本より小さいように見えるが、最初のグラフからわかるように赤字の金額がけた違いに大きく、それがいまも拡大を続けている。
なんらかのバックラッシュが起こってもおかしくない。
当時の日本と異なり、現在の中国は巨大で急成長する市場としてアメリカ企業に多くの投資機会を提供しているという大きな違いはあるが、このまま放置されるとは考えにくいほどに赤字が大きくなっている。
トランプ次期大統領は選挙中、貿易問題で中国批判を繰り返し、さきごろは極端な対中強硬派ナバロ氏を通商戦略を提言する組織の委員長に任命した。
中国とアメリカの貿易関係は、これから80年代の日本が経験したような一時的な調整を迎えることになるのか、あるいはそれが回避されるのか。数年のスパンで、その経過をみていきたい。
データの出所:U.S. Bureau of Economic Analysis