大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

G20でトランプ氏と習氏の交渉なければ、25%関税発動のカウントダウンはじまる?

2019年06月15日 | 日記

 ウォールストリートジャーナルによれば、穏健派のクドロー国家経済会議委員長は2019年6月13日(木)、6月28日と29日に大阪でおこなわれるG20サミットでトランプ大統領と習主席の会談が実現しなければ、中国からの輸入品3000億ドル(33兆円:1ドル=110円)に対して25%の関税をかける結果になる可能性を示した。

 トランプ大統領は習主席との会談を強く望んでいるが、現在までのところ両者の会談は予定されていない

 両者の会談があっても貿易協議に大きな進展を予想するむきはほとんどないが、事実上中断している貿易協議の再開やそれにともなう関税の一時留保などが期待されている。 

 関税引き上げについてのアメリカ国内の情勢は非常に読みにくくなっている。

 2019年6月13日、ウォールマートやコストコなど米600社はトランプ大統領あてに、関税引き上げを避けるため中国との交渉再開をうながす書簡を提出した。

 しかしその一方で、共和党の穏健主流派ルビオ上院議員と民主党のマーク・ウォーナー上院議員が連名で「安全保障上の理由から、貿易交渉の進展にかかわらずファーウェイ製品を米国内で許可すべきでない」との書簡をポンペオ国務長官とライトハイザー氏に送るといったことがおこっている。

 また、関税引き上げをてこにメキシコから移民問題で大きな譲歩を勝ち取ったことからトランプ氏の支持率は上向いている。

 さらに、貿易紛争による経済悪化を見越して米連銀に対する利下げ期待が高まり、現在、米株はふたたび史上最高値を試す展開になっている。このことは、貿易紛争の悪化を危惧する米連銀の意図とは逆にかえってトランプ氏の関税引き上げを容易にする役割を果たしている。

 とりあえず今週はG20におけるトランプ氏と習氏の会談がいつどのような形で発表されるのか注目したい。


VWチャタヌーガ工場の組合承認選挙、UAWが敗北

2019年06月15日 | 日記

 2019年6月12日(水)から14日(金)にかけてテネシー州にあるVWチャタヌーガ工場で労働組合承認選挙がおこなわれ、833(51.8%)対776(48.2%)の差でUAW(全米自動車労組)が否認された。投票率は93%だった。

 ニューヨークタイムズによれば、VWチャタヌーガ工場の入社時の時給(生産労働者)は15.5ドル(1700円:1ドル=110円)。これが7月からは16ドル(1760円)にアップすることが決まっている。

 時給は勤続とともにアップし、最高は23.5ドル(2600円)。

 このチャタヌーガ工場の時給は地域の賃金の中央値は上回っているが、ビッグ3の賃金を大きく下回る水準となっている。

 オートモーティブニュースによれば、チャタヌーガ工場における生産労働者の平均年収は5.5万ドル(600万円)、熟練労働者の平均年収は7.8万ドル(860万円)。

 これに対し、GMにおける生産労働者の年収は9.5万ドル(1050万円)、熟練労働者の年収は12.3万ドル(1350万円)となっている(残業代および利益分配ボーナス含む)。

 テネシー州は共和党の強固な地盤。選挙では、共和党のビル・リー知事やマーシャ・ブラックバーン上院議員からUAWの承認に反対する発言が相次いだ。

 またUAWでは、一部の幹部が自動車メーカーから便宜供与をうけ労使交渉を企業に有利なように運ぼうとしたとして裁判になっており、このこともUAWに不利に働いたとみられている。

 

過去の関連ブログ

UAW(全米自動車労組)、VWチャタヌーガ工場で組合承認選挙を実施へ (2019/4/12)

UAW、VWチャタヌーガ工場で専門工の組合承認選挙に勝利(2015/12/5)

VWの組合承認選挙にかんして、UAWが異議申し立てを撤回(2014/4/22)

VWチャタヌーガ工場の組合承認選挙でUAWが手痛い敗北(2014/2/26)