ギリギリ探偵白書・241


 ギリギリ探偵白書
 「お一人様1回・第2話」



 女性は元彼やその仲間から執拗なストーカー行為を受けていた。
 面談の日、その一人を写真に収めた。
 その写真を見せると、女性の母親はひどく感心し、契約となった。
 そして、調査を行う事になった。 





阿部   「そういえば、サザビーはきてるか?」

田中   「あっ、今、会議室にいますよ」

阿部   「わかった。食い終わったら、お前も来い」


T.I.U.総合探偵社代表代理のサザビーは、会議室のソファーで毛布をかぶって寝ていた。

阿部   「おいっ、起きろ」

サザビー 「・・う、・・・ああ」

阿部   「早速だが、調査だ」

サザビー 「ストーカー?だろ?」

阿部   「ああ、ある意味、集団だ」

サザビー 「何人?」

阿部   「多分、5人」

サザビー 「メンバーは?」

阿部   「オレ、サザビー、田中」

サザビー 「・・・田中と現場に行けってことだろ?」

阿部   「ああ」

サザビー 「んじゃ、顔洗って行ってくるべ」

阿部   「頼んだぞ」

サザビー 「ああ」


サザビーは、口の周りが油まみれの田中を連れて、調査現場に向かった。
私は、電話で依頼者である女性にスタッフが2名、張り込みをしながら
相手の身元を調査する事を告げ、調査機材を玄関などに仕掛る事を伝えた。

もちろん、相手に監視されるおそれのある調査機材を仕掛ける作業には
工事現場の人の格好をして、ロングバンで訪問する形をとる。

目立ったほうが怪しまれないのだ。

その作業の間もスタッフは、ストーカーの姿を逃さない。

監視しているストーカーを逆に監視するのだ。

私はその間に元彼について調査を開始した。
調査を開始して3日後。
元彼は、もともと地元では有名な不良少年であり、恐喝、窃盗、暴行など様々な
悪行を繰り返し行っていた人物である事がわかった。

そして、今では出会い系サイトを運営し、恐喝まがいに料金を徴収している事をつかんだ。


阿部    「こりゃ、説得は難しいな」

サザビー  「ヤの付く人たちじゃないの?」

田中    「それにしては、ショボイですよね」

阿部    「まぁな、ただ、そのヤの付く線はない」

サザビー  「こっちは、メンバーを全員つかんだよ」

阿部    「どうする?」

サザビー  「あべちゃん、何か楽しそうだな」

田中    「遊び相手が見つかったからでしょ?」

阿部    「5人だろ?しかも、暴れん坊」

サザビー  「あべちゃん?喧嘩じゃないんだよ」

阿部    「・・・・」

田中    「ストーカーの証拠は十分ですよね。
       あとは、ここからどうするかって事ですよね」

阿部    「元彼のやっている出会い系サイトってあるだろ?」

田中    「ああ、被害爆発ですよ。
       解約できない、変なヤツから請求が来る。しかも全部サクラ」

阿部    「どうして、それを知っているんだ」

田中    「・・・・」

サザビー  「被害者、集めちゃおうか?」

阿部    「集団訴訟?」

サザビー  「う、うん?集団告訴」

田中    「お~し!!自分が喰ってやりますよ。その元彼ストーカー!!」

サザビー  「おいっ、人は食えないぞ」

田中    「違いますよ!!その被害者を集める担当を自分がやりますよ。
       ってことですよ」

阿部    「あれか?腹が減ると人でも食べちゃうのか?(汗)」

田中    「そういうキャラに仕立てようとしてるんでしょ」

サザビー  「まっ、いいじゃない。妖怪腹ペコ」

田中    「腹ペコじゃない!!」

阿部    「んじゃ、妖怪満腹」

田中    「満腹じゃないです!!腹八分です!!」

サザビー  「う~ん、おかわり妖怪ブーっていうのはどう?あべちゃん」

阿部    「いいね。今日から田中はおかわり妖怪ブーだ」

田中    「おかわりでも替え玉でも何でもいいですから。やりますよ!!」


田中は被害者を集め始めた。
そして、田中の代わりに私がストーカー調査に向かった。


サザビー  「おかわり妖怪、何だか張りきってたな」

阿部    「アイツも請求されたクチだな」

サザビー  「ああ、でも、お金がないから払わなかった」

阿部    「多分、その推理は正しい」


一応、ここで、解説しておこう。
なぜ?被害者集団を作ろうとしたのかという事を。

まず、ストーカーの証拠だけであれば、3日間の調査の分で十分だ。
しかし、これで裁判や警察の介入があったとしても、身柄を拘束されるわけではない。
つまり、元彼は自由なのだ。
元彼の性格を分析すると、必ず仕返しをする。
すると、被害が酷くなったり、最悪の場合・・・。

そこで、元彼の運営する悪徳出会い系サイトにターゲットを絞り
そこを徹底的に攻撃すると、仕事の事で、ストーカー行為どころではなくなる。

ついでにストーカー行為をしている時は、元彼や仲間が一人で行動している事が多い。
だから、その行為をしている度に、警察に通報ばかりしたらどうなるか?

リスクを感じた仲間は、しだいにストーカー行為を手伝わなくなるだろう。

これが調査戦略。

そして、この具体的実行案が作戦となる。

この作戦が始まって5日後には、田中は被害者をインターネットで集めると共に
その出会いサイトが名簿業界に流通させた支払い者名簿などに調査を進め
被害者を続々と集めることに成功していた。

私とサザビーは彼らがストーカー行為を始めるたびに、通報したりした。
その内、仲間の中で「やめたい!」と言い始める者が出始めた。

これは、ファミレスで彼らが話し合っている所を調査しているときにわかった。


サザビー   「○×(元彼)帝国崩壊の危機だね」

阿部     「・・・いや、崩壊したな」


私の携帯に田中からメールが来た。
「被害者集団の形成完了です!今、弁護士に告訴状を書かせています!」


阿部     「ほらっ、田中からのメール」

サザビー   「・・・帝国!崩壊!!残念ながら、ストーカー遊びは終わりだな」


次の日、元彼の出会い系サイトは閉鎖された。

そして、元彼のストーカー行為もなくなった。

依頼者の女性は、元の生活を始めた。



        完



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 ギリギリ探偵白書は、過去に行った調査を本人了承のもと掲載しています。
 尚、調査時期や調査対象者・ご依頼者様の個人情報は本人様の請求以外は開示いたしません。
 また、同作品に登場する人物名は全て仮名です。


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