ギリギリ探偵白書・212


 ギリギリ探偵白書
 「赤いスポーツカー・第1話」




その日、私は自分の赤いスポーツカーを磨いていた。
このスポーツカーは、もうレトロの領域に入る年数が経っているが
乗り慣れているという事もあり、出張の時や普段の移動に使っている。

整備良好、機関良好で乗り心地もソコソコ良い。

(・・・ワックスをかけたら、事務所に向かうかな・・・)

その日の私の予定は、午後からの調査指揮であった。

昼食を適当に取ってから事務所に向かい、調査の確認を済ませて、現場に向った。

一番初めに現地確認をしたのは、浮気調査であった。
夫の度重なる浮気行為に悩む主婦からの依頼である。

調査現場には、すでに主任調査スタッフの田中を筆頭に調査スタッフ2名待機していた。


田中   「代表、ワックスかけたんですか?」

阿部   「ああ、時間があったからな」

田中   「僕の車なんて、ボロボロですよ・・・」

阿部   「お前は、駐車が苦手だからな。練習したらどうだ?」

田中   「・・・まぁ、そのうち。で、対象者の移動は車なんで
      バイク1台、自分の車1台の3人体制ですから、大丈夫だと思います」

阿部   「だろうな。対象者の車はベンツでもスポーツタイプだし
      少し改造してあるから、気を付けろよ」

田中   「了解です」


そして、すぐに次の調査現場に移動した。
次の調査は詐欺関連の調査で、詐欺師の素行を代表代理のサザビーが行っている。

しかし、調査現場には誰もいない。

(あれっ?間違えたかな・・・。)

私はサザビーに連絡をした。


サザビー 「おぅよ。今、大通りにあるファミレスだよ」

阿部   「・・・・大通り?デ○ーズか?」

サザビー 「そうそう、メシ食ってるぜ」

阿部   「今すぐ向う」


私は、サザビーが指定したファミレスに向かい、対象者の状態を確認した。

(・・・忙しいそうにしているが・・・)

サザビー 「こっち、こっち」

阿部   「なんだ?」

サザビー 「いやー、万札だと思ったら、千円札だったのよ」

 ※万札・・・1万円札の事(諭吉さんとも言う)

阿部   「で?」

サザビー 「ちょっと貸しといてよ」

阿部   「仕方ねぇーな。ちゃんと返せよ。トイチで」

サザビー 「へいへい。返しますよ」

(トイチ、契約成立!!)


サザビーは面倒くさそうに、私の貸した1万円札を財布に入れながら、現状の調査の
途中報告を始めた。


サザビー 「え~と、今も来てたんだけど、他にも騙されているヤツがいるぜ」

阿部   「そうか」

サザビー 「会話も身元も確認済み。それで、応援をあと2人出してくんない?」

阿部   「ああ、でも、ワタボンは?」

※「ワタボン」・・・調査スタッフ渡辺の愛称。

サザビー 「昨日から下痢だよ。何か、田中の隠していたお菓子を食ってからみたい」

阿部   「ああ、たまに賞味期限が切れてるお菓子があるからな」

サザビー 「団子だったみたいだぜ」

阿部   「もしかしてみたらし団子?」

サザビー 「・・・あべちゃん、知ってるの?」

阿部   「ああ、あれはオレが2週間前に買ったやつだよ」

サザビー 「・・・田中なら腹壊さないとでも思ったのかよ?」

阿部   「ああ、アイツはカビが生えてるカップ麺、食っても平気だからな」

サザビー 「んじゃ、尚更だろ。2人増員で頼むぜ」


私はすぐに事務所に電話し、空スタッフ2名と車1台を手配した。


サザビー 「今のところは任せとけよ」

阿部   「ああ、任せたぞ」


そして、私は事務所に戻った。
サザビーは尾行のスペシャリストである。
1人でも任せて大丈夫だろう。応援の2名はそれから1時間後到着したようだった。

事務所に着くと、私のデスクには多くの書類が積み上げられている。

(・・・・休む間のなく仕事だなぁ・・・)

私は調査指令書や調査契約書などを読みながら、指示すべき事を赤ペンで書き出した。

そんなことをしていると、辺りは暗くなり、そろそろ帰宅する時間になる。
しかし、調査が終了するまで、私の仕事は続く。

次の日になりそうな時間にサザビーから連絡があった。


サザビー 「今日はもう、寝ただろうな」

阿部   「そうか、とりあえず現地解散で」

サザビー 「了解した」


さて、残りは田中が現場指揮の浮気調査である。

そういえば、全く連絡が無い。
私は調査スタッフ用の電話で田中に連絡をした。


田中   「あっ、すみません。今、対象者所有のペンションにいます」

阿部   「早く、報告しろよ」

田中   「代表の言ったとおり、かなり飛ばしますよ」

阿部   「・・・ちゃんと証拠は撮れてんのか?」

田中   「バッチリですよ!!でも、微妙に撒かれる事もあって・・・」

阿部   「ダメじゃねぇーか。ちゃんとしろよ」

田中   「だって、高速でメーター振り切るんですよ」

※「メーターを振り切る」・・・180キロオーバーで走る事。

田中   「それで、バイクの方がダメになっちゃったみたいで・・・」

阿部   「そういう事も、きちんと報告しろよ」

田中   「すみません。代表、応援に来てもらえますぅ?」





        続く



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 ギリギリ探偵白書は、過去に行った調査を本人了承のもと掲載しています。
 尚、調査時期や調査対象者・ご依頼者様の個人情報は本人様の請求以外は開示いたしません。
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