ギリギリ探偵白書・252


 ギリギリ探偵白書
 「鈴の音・第2話」


 
 業務についての会議を済ませて事務所に戻る途中
 事務所の前でウロウロしているスーツ姿のオッサンがいた。




サザビー「どうしました?」

オッサン「・・・いえっ、何でも・・・」

サザビー「そうですか」

オッサン「・・あのぅ~。T.I.U.の方ですか?」

サザビー「さぁ~」

オッサン「・・・そうですか・・・。」

阿部  「おいおい、何、適当なこと言ってんだ。
     すいません、T.I.U.の者ですが」

オッサン「・・・えっ?・・・実は突然なんですが・・・」


この中年のオッサンは、突然やってきた依頼者さんであった。
依頼の内容は、夏休みに入り、高校生の娘が外泊が多くなり、ついには帰って
こなくなってしまったというものであった。


阿部    「行き先などは?」

依頼者さん 「全く。友達も知りません。ウチは父子家庭なもので・・・」

阿部    「お二人で?」

依頼者さん 「ええ、娘と私だけの二人暮しで・・・」

阿部    「お写真などは?」

依頼者さん 「ええ、持ってきました」

阿部    「では、早速調査を開始しましょう」

依頼者さん 「お願いします」


まず、私は娘さんの家出の手がかりとなるものを探すために依頼者さんと
一緒に自宅へ向かった。

それと平行して、サザビーと田中が写真を元に聞き込みに向かった。


依頼者さんの自宅は非常に綺麗に整理整頓されていた。


依頼者さん 「・・・部屋はそのままにしています」

阿部    「ドアに鍵がかかっていますが?」

依頼者さん 「ええ、娘も年頃なもんで、プライバシーっていう・・・」

阿部    「ピン止めかクリップは、ありますか?」

依頼者さん 「・・・え~と、どこだっけな」


ちなみに私は鍵師である。

数十秒で鍵を開け、娘さんの部屋に入り、残留証拠となるものを整理しながら
ダンボールにまとめた。


阿部    「とりあえず分析したりしますので、これはお借りしていいですか?」

依頼者さん 「・・・ええ、こういう場合、どうなんですか?」

阿部    「どう?といいいますと?」

依頼者さん 「ウチは二人で何でも話し合って決めるような・・・」

阿部    「・・・比較的、事件に巻き込まれたと考えがちですが、
       全てに共通するわけではありません。必ず、見つけ出しますから
       お父さんは、帰ってきたときのケアを考えておいてください」

(チャリーン、チャリーン)

阿部    「ん?」

依頼者さん 「あっ、すみません。これです。お守り・・・」

阿部    「珍しい形ですね」

依頼者さん 「ええ、亡くなった妻の手作りですから」


依頼者さんは、そのお守りを強く握り締めていた。

私はその場を後にして、娘さんの人間関係図をホワイトボードに書き込んだ。
そして、聞き込みに向かっているサザビーらに連絡をした。


阿部    「今、どの辺だ?」

サザビー  「渋谷、新宿、池袋の情報網をまわって、今、渋谷だよ」

阿部    「そうか、それなら、事務所に近いな。戻って来てくれ」

サザビー  「了解」


難解な行方調査など様々な調査をこなしていると、ある種の勘が働くようになる。
つまり、ホワイトボードに書き込みをしている際に、私は娘さんがバイトに行って
いたコンビニに何らかのキーが隠されている事に気が付いたのだ。

サザビーも事務所に帰ってくると、すぐにコンビニの情報をチェックし始めた。


阿部    「コンビニの店員に、大学生がいるな」

サザビー  「・・・ん?こりゃ、恋愛関係かな・・・」

阿部    「オレもそう思っている」

サザビー  「え~と、今、午後6時だから、今からだと7時には着くな」

阿部    「ああ、その彼は今日は5時からバイトに入っているらしい」

サザビー  「いくか!!」

阿部    「記録的なスピード発見かも知れんな」

田中    「・・・あのぅ、僕の事、忘れていません?」

(忘れてた!!)

阿部    「ああ、田中も行くぞ!!」

田中    「オッス!!今、車をまわしてきます!!」


田中の運転する車で、コンビニに向かうと、目的の彼がいた。
名札をつけているので、すぐにわかる。


サザビー  「って、とりあえず、来ちゃったけど、どうする?」

阿部    「あっ、考えてなかった・・・」

田中    「じゃあ、僕がトイレ借りてきますよ」

サザビー  「よろしく・・・」


田中はトイレを借りてから、大量のお菓子を買って帰ってきた。

(張り込むって事か!!)

我々は、張り込みを開始した。
彼は、午前1時に交代のバイトが来ると、自転車で自宅へ向かった。


サザビー  「いいマンションだね」

阿部    「ああ、こりゃ、いいマンションだね」

田中    「とりあえず、部屋まで上がってみましょうよ」

阿部    「そうだな」


私と田中が彼の部屋に向かい、サザビーは周辺を散策しに向かった。


田中    「(小さい声で)表札も合ってますね」

阿部    「(小さい声で)生活臭がしないな。そんなもんか」


部屋を離れようとしたときである。



        続く



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