
祖母は料理が苦手な人だった。美味しいものを作ろうという意欲がなく短時間で変なおかずを作り出す名人として家族から恐れられていた。彼女の数少ないレパートリーのうちで唯一まともだったのが「ピーマンの肉詰め」である。
祖母はピーマンのヘタを取り、穴からタネを抜き、そこへ合挽きミンチで作った肉味噌を詰めて、全体を油で炒めていた。味付けはかなり濃かったと記憶する。
現在私が作っている肉詰めは彼女のそれとは大きく違う。ピーマンを縦半分に切ってタネを取る。鶏ミンチに塩、コショウ、卵白少々を軽く混ぜ合わせてピーマンに詰めて、フライパンで表面を焼き旨味を閉じ込める。
続いて肉詰めを八方だしで煮て完全に火を通す。薄味なので煮汁に水溶き片栗粉を加えてとろみをつけてあんかけにする。こうすると塩分が低めでもあまり気にならないのである。

私は健康のことを考えて作り方を変えたが、祖母の命日には彼女のオリジナルを再現して仏前に供えようかと考えている。
