玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します。

樹木調査 2021年6月

2021-06-19 19:31:13 | 調査報告

樹木調査  

高槻成紀

 玉川上水の植生管理と生物多様性というテーマで野鳥調査を行っています。それによると小平と井の頭が野鳥が豊富で、小金井が貧弱だということがわかってきました。これは野鳥にとっての生息環境である森林のあり方と関係があるに違いありません。小平と小金井では一通りの樹木調査をしているので、井の頭と杉並で調査をしたいと思っていました。環境局と水道局の許可が下りたので、調査をすることにしました。

 以下は、調査の様子の記録で、調査結果についてはこちらをご覧ください。

調査協力者:朝日智子、有賀喜見子、有賀誠門、大塚惠子、大原正子、荻窪奈緒、黒木由里子、輿水光子、近藤秀子、笹本禮子、高橋 健、田中利秋、田中 操、藤尾かず子

 

6/19 井の頭(以下)

6/20 井の頭

6/21 杉並

6/26 井の頭

6/28 杉並

 

樹木調査風景(21.6/21)

 

 2021年6月19日の午前中に井の頭のほたる橋の近くで樹木調査をしました。あいにくの小雨で、どうしたものかなと思いましたが、せっかく集まってくれたのでボチボチ進めて、作業が大変なほどになったら中止するということで始めました。私は三鷹の駅で待ち合わせ、田中さんと大原さんと合流して、井の頭に向いました。万助橋を越えて井の頭公園に入ると急に林が暗くなります 。しばらく歩いてほたる橋につくと、輿水さんと近藤さんが待っておられましたので、調査の概要を説明して始めました。まず、50メートルの巻尺を固定して軸を作りました。それから私が測定樹木を指定し、田中さんにスタートから何メートルの位置かを言ってもらい、私が樹種と太さを言い、記録をしてもらうことにしました。記録は大原さんにお願いしました。

 直径測定のために、塩ビ管の、長さ1メートルの棒の先にT字の部品を取り付け、そこに長さ50cmの横棒をつけました。直径が50 cm以上の場合はもう1本つけて文字通りT字になるような道具を用意していたので、それで測定しました。

調査風景

 

 私は小平で同じ調査をしたことがありますが、ここは特に低い樹木にシラカシなど常緑樹が多い印象を受けました。そこに時折ケヤキやイヌシデの太い樹があるという感じです。小雨が降るのでちょっと作業が大変でした。

 

 終わってから小鳥の森を見ましたが、樹木も藪もよく発達していて、いかにも野鳥にとっても昆虫にとっても居心地の良さそうな様子でした。

 

鬱蒼とした小鳥の森の様子

 その近くに大きなコナラの伐採痕があり、荻窪さんが「ナラ枯れで枯れたので伐採されたんです」というので、年輪を数えて見ました。

年輪を数えたコナラの伐採痕。背後は小鳥の森の観察用の覗き窓のある壁。

 

中心の2cmほどは数えられませんでしたが、90本の年輪が確認できました。高さが20cmほどありましたから100歳ほどだったことがわかりました。

コナラ伐採痕から読み取った年輪幅(左側が外側)

 

「私が生まれたのがこの辺なわけです」(笑)

「私はこの辺ね」と有賀さん。

「この辺で戦争。そういうことをこの木はずっと見てきたわけです。そういうことを想像すると、大木を切るということはそう易々とはできないはずですよね。この木はいわば寿命かもしれないけど、やたらには切ってはいけない。大木の前に立つと、自然に手を合わせたいような気持ちになりますよね」

 それから伐採が予定されている新橋と幸橋の間も見ましたが、伐採の必要があるとは思えませんでした。立派なケヤキがありましたが、これが根を張って土壌を安定させることはあっても、あることがマイナスとは思えません。これを伐採したら、直射日光があたり、雨が地面を叩いて土壌流失が起きる可能性の方がはるかに大きいと思いました。

伐採が予定されている場所のケヤキ

 

 さらに下流に行って右岸にネットを張ったところを見ましたが、生物多様性に全く配慮にない土木工事だと痛感しました。

ネットで覆われた右岸(南側)を左岸から見る

右岸からみた様子

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樹木調査のご案内

2021-06-15 10:18:12 | 最近の動き

本会では玉川上水の4カ所で野鳥の調査をしています。その調査は順調に進んでいますが、野鳥にとっての環境評価をするために、調査地の樹木調査を行います。一定の距離をとって、生えている樹木の名前を確認して、直径を測定します。可能な方はご参加ください。

集合:6月19日(土)、朝10時に三鷹橋(三鷹駅の南ぐちを出て左側)

場所:井の頭公園(新橋、幸橋、ほたる橋あたり)

内容:樹木の種類と太さを測定。距離は作業を見ながらきめます。

解散:お昼くらいで解散とします。

その他:調査の進捗によっては、午後も継続する可能性がありますが、参加は自由です。

マスク着用をお願いします。


玉川上水の名勝小金井(サクラ)復活プロジェクトの検証及び今後の整備は、市民の理解と合意を得て進めることを求める陳情書

2021-06-04 16:44:20 | 書類

2021年6月4日

小金井市議会議長

鈴木 成夫様

                                                        

小金井玉川上水の自然を守る会 共同代表  橋本承子

             小金井市緑町3-12-29  042-387-5721

共同代表 田頭祐子 

小金井市貫井北町5-23-7 090-9382-8871

小金井自然観察会  会⾧ 大石征夫

小金井市貫井南町 4-12-3 090-4392-2556

はけの自然と文化を守る会  代表 横須賀雪枝

                小金井市中町 1-5-2  042-315-5727

環境 NPO エコメッセ小金井運営委員会 委員⾧ 小山美香

小金井市本町1-4-16-501 080-6574-0115

NPO 法人グリーンネックレス  代表 土肥英生 

小金井市前原町5-18-15 042-304-2422

玉川上水花マップネットワーク   代表 高槻成紀 

小平市美園町3-29-2  080-1093-9565

 

玉川上水の名勝小金井(サクラ)復活プロジェクトの検証及び今後の整備は、市民の理解と合意を得て進めることを求める陳情書 

【陳情の主旨】

小金井市「玉川上水・小金井桜整備活用計画」が策定され10年経過しました。この間、小金井市と東京都は協議して樹木の伐採を行ってきました。市民からは市に対して、桜保護の観点だけでなく、他の樹木も大切にして欲しいと求めてきました。樹木伐採にあたっては桜の保護団体も含め、複数の市民や市民団体が現場で立ち合い、市や東京都と話し合ってきました。そうした現場での話し合いや議会答弁の中で市は、交通危険がある樹木や、桜の生育を阻害する、また法面の崩壊につながる樹木については伐採し、それ以外の樹木は【残せるものは残す】と答えてきました。

しかし毎年の皆伐に近い樹木伐採で緑陰が失われ、玉川上水周辺の環境は大きく変わりました。桜並木の復活に期待する声がある一方で、五日市街道の排気ガスや騒音による上水周辺の環境悪化を訴える住民の声や、景観が失われた驚きと悲しみの声も増えています。季節ごとの花や木の実を楽しみにしていた子どもたちの失望や、鳥の声が減ったという声も聞かれます。名勝小金井(サクラ)の保存・復活には賛成していた市民の中からも、「これはやりすぎだ」との意見も聞かれるようになりました。

2020年12月10日に行った小金井市生涯学習課と伐採の事業者と市民との現場の立ち会いでは、「残す」と言っていた樹木が、今年1月からの陣屋橋付近の伐採でほとんど伐られました。12月22日の市・生涯学習課と都・水道局の話し合いの場に、なぜか市民は立ち会うことができないままに、近隣住民の「この木を切らないでください」と書いて木に括り付けたカードもむなしく、蕾をびっしり付けたたった1本のコブシも切られ、今年の伐採区間、陣屋橋~関野橋間もほぼ皆伐状態です。この間の、市と市民とで話し合い育んできた信頼関係が損なわれるような強度の伐採には強く抗議します。

この小金井地区の管理手法には、周辺市からも疑問視する声が上がっています。小平市長からは令和2年6月26日付で「1.サクラの補植作業は、生物多様性を持った多様な生態系が維持されるよう配慮してください。2.サクラの補植作業の時期、方法などについて、地域の住民や自然保護団体と事前に意見を聞く場を設けるなど、丁寧な対応に努めてください。」との公文書が東京都知事あてに出されました。

また今年3月の市議選に向けては、市民団体「玉川上水みどりといきもの会議」が玉川上水と小金井桜に関するアンケートを実施し、市議候補者28名から回答がありました。

そこでは「名勝復活のためには桜以外の樹木は排除すべき」と答えた人は0名。「桜並木の復活は望むが、その生育を阻害しない低木などは残すべき」との意見が大多数でした。

こうした状況を踏まえ、私たちは小金井市で活動する環境団体として、市議会のご理解を頂きたく以下陳情いたします。

 

【陳情項目】

1.市は今後の整備のあり方について市民の意向を調査してください。

・意向調査の対象範囲は、HPやTwitterなども活用し、前回よりも広げてください。

・意向調査は「出来る限り桜と他の樹木の共存を望む」意見も出しやすい設問にして、自由記述欄も必ず設けてください。

 

  1. 市は東京都とも協議し、以下の調査と検証を行い今後の管理に反映させて下さい。

・ケヤキをはじめとする樹木と法面崩壊の関係については、植物生態学、地質学、地形学などの専門家によって、多角的多面的に検証してください。

 

3.今後の管理・伐採について、市は市民の理解と合意を得てから進めてください。

・今後、整備区間のひこばえは皆伐せず、「他の樹木に配慮しながら進めます」という議会や市民の声への回答で出された市長方針を守ってください。

・小金井橋から茜屋橋間の整備は、近隣市とも意識を共有して行って下さい。

 


小金井市議会への陳情書について

2021-06-04 16:40:47 | 記録

玉川上水の名勝小金井(サクラ)復活プロジェクトの検証及び今後の整備は、市民の理解と合意を得て進めることを求める陳情書(こちら)を提出したことの背景など

 

小金井玉川上水の自然を守る会 共同代表  橋本承子、田頭祐子  

 

■陳情の要旨

1. 今後の整備のあり方について市民の意向を調査してください。

2. 樹木と法面崩壊の関係などの調査と検証を行い、今後の管理に反映させて下さい。

3. 整備区間のひこばえは皆伐せず、未整備区間の整備は、近隣市とも意識を共有して行って下さい。

 

■陳情書の提出に至った経過・理由

平成22年(2010)から始まった小金井地区の伐採では、毎年現地で市と東京都と共に立ち会い、「法面を守り、桜の生育を阻害しない木は残す」と市は約束してきました。しかし、2021年の正月明けからの伐採作業では、「残せる」と言っていた木が伐られ、市民との約束は守られませんでした。

12月の立ち合いでは残せるはずのコブシの木には、1月になり伐採の印である赤いテープが巻かれました。それを見た近隣住民によって、コブシの幹には「このコブシを切らないでください」と書いたカードが括り付けられました。しかし、この周辺にはたった1本しかないコブシの木は、法面にあったとの理由で蕾をびっしり付けたまま伐採されました。せめて花の咲いた後に伐る、高い枝だけ剪定する、などの手法もあったはずです。このような生物多様性を顧みない強度伐採は、これまで積み重ねてきた市民と行政の信頼関係を損なうものです。玉川上水全域の史跡としての価値へも影響します。このような事実経過が、陳情で訴えなければと思い至った直接の動機です。

 

■陳情の狙い

この10年で玉川上水の小金井区域には、夏の暑さをやわらげる緑陰は無くなりました。ここを見た市民たちの意識も、「小金井なんだから小金井サクラ優先」から「ここまでやる必要はない。やりすぎだ」と変化しています。新たな市民意向調査の実施によって今後の整備は、「桜だけでなく、他の樹木も共存する整備」へとシフトする根拠にしたいと考えます。

そのためにも、樹木伐採による法面の乾燥・崩落との関係などは、現計画を進める立場の専門家だけでなく、多面的に検証して欲しいと期待します。

また玉川上水全体の価値について、史跡保護や生物多様性の視点を持ち、市民参加で議論できる場を作る事も訴えたいと考えています。