玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します。

樹木調査 6月28日 杉並

2021-06-28 15:48:00 | 調査報告

6月28日は杉並の補完調査をしました。今回は岩崎橋集合とし、私は前回国分寺駅で通勤特快というのに乗ってしまい「次は新宿」と大失敗をしましたので、今回は三鷹に確実に止まる電車を確認して乗車しました。ニュースで人身事故で中央線が遅れているというので少し早めに出たので10時集合でしたが、9時半過ぎには岩崎橋につき、そこには高橋さんが既に来ておられました。天気予報に反して暑すぎるくらいの天気でした。

 最初に岩崎橋上流の右岸を調べました。ここは太い木としてはヒノキが植えられており、それに次いでムクノキの大きな木がありました。ムクノキは細い木にも多く、半分以上はムクノキというほどムクノキの多い林でした。

 

岩崎橋上流の右岸

 

 

 ここで記念撮影をしました。

皆さん、作業の段取りを飲み込んで、てきぱきと進めてくださったので、いいペースで進みました。

 

調査の様子(大塚さん撮影)

 

 次にその上流の兵庫橋上流の右岸を調べました。

兵庫橋上流右岸(大塚さん撮影)

 

「わたし川の上流とか右左とかよくわかんなくて・・」

「上流下流は流れを見ればわかります。その水の身になって進む方の右側が右岸」

と大塚さん

「そうですよね。ところがおもしろいことにアイヌは逆なんだそうです。川が海に出るところを出口と思いますよね。でもアイヌはサケの立場になってそれを入り口というそうです」

「ヘェ〜」

ここにはあまり太い木はなく、ムクノキ、エノキ、ケヤキがありましたが30cmあまりで、多いのはやはりムクノキの細い木でした。小平の感覚で言うとコナラがなくてムクノキがやたらに多いと言う印象です。

 ここでもう少し行くと牟礼橋で、大塚さんが

「せっかくだから大ケヤキの太さを調べましょうよ」

と言うので、みんなで道路を横切って大ケヤキに行きました。流石に大きくて長径は125 cm、短径でも89 cmありました。周囲は424cmですからこれで計算すると直径は135 cmということになります。ちょっと数字が合いませんが、私の使うT字型の道具は直径60 cmくらいより太い木になると視角の関係でやや過小気味になるせいです。いずれにしても直径1メートルをかるく超える文字通りの大ケヤキですが、交通量の多い道路に挟めれた狭い島のようなところに取り残されてかわいそうな感じでした。

 

 

牟礼の大ケヤキを測定する

 

 私が予定していた2ヶ所は終わったのですが、この時まだ11時過ぎだったので、薄曇りで条件は良さそうだし、皆さんもまだ大丈夫そうだったので、もう一つ向いの左岸を調べることにしました。

 ここは大きなサクラが植えられており、50 cm以上のものも何本もありました。その間に様々な木がありましたが、実に多様で、記録を見てうつすと・・・ムクノキ、ケヤキ、コナラ、エゴノキ、モチノキ、ヒサカキ、ネズミモチ、イイギリ、ムササキシキブ、クワ、シロダモ、アカメガシワ、マユミ、ウグイスカグラ、マサキという具合で、他であまりなかったマテバジイ、ビワ、クスノキ、チャノキ、マメガキも出てきました。シロダモと思ったらヤブニッケイがあって「気をつけなくちゃ」と思っていましたが、その「ヤブニッケイ」がもう一本あったので「ヤブニッケイ、1 cm」と言ったら、大塚さんが

「ニッケイもあるんですよ。あれはニッケイかも」

と言います。私はニッケイは認識していないので、採集してみると、確かにヤブニッケイは葉脈の3本が途中で消えるように弱くなりますが、ニッケイの方は先端まではっきりしています。

 

ニッケイとヤブニッケイ

牟礼橋下流左岸

 井の頭は井の頭公園があって特別に保護が行き届いていると思いますが、ここは玉川上水が開渠である最後の部分で、区部ですから開発も進んでいます。しかし今回樹木調査をしての印象は「その割にはよく残っている」というもので、それには大塚さんたちの真剣な説明の努力が反映されているのだと思いました。すべてではないですが、玉川上水の緑地と並行してグリーンベルトがあったり、歩道を挟んで1列ながら並木があったりするので、林として厚みがある場所が見られました。こういう環境であれば、井の頭ほどではないにしても野鳥が豊富なのは納得できます。

 一方で、井の頭の一部のようにネット張りのような管理はされていないのも評価できます。井の頭では宅地が接近しているなど様々に状況が違うので、単純な比較はできませんが、ネット張りはなんとか回避して欲しいものです。

 協力いただいた大塚さん、高橋さん、笹本さん、田中さん、藤尾さん、ありがとうございました。


樹木調査 6月26日 井の頭

2021-06-26 14:43:12 | 調査報告

6月26日は井の頭の追加調査をし、前と同じく田中さんと大原さんが参加してくださいました。

 一つ目は小鳥の森のすぐ脇で行いました。ここはほたる橋の上流と同じく、イヌシデなどの大きな木の下にたくさんのシラカシがあるという林でした。歩道を挟んでヒノキが植えられ ていました。

小鳥の森の脇の様子

 

 松影橋の右岸を歩いていたらクズの繁茂がすごかったです。そのクズが電柱の支えにも登っていましたが、途中で止まっています。そこには「クズ止め」がありました。これはクズの性質をよく理解した優れものです。筒になっていて、側面は黒く、先端が透明なプラスチックになっています。先端を入れたクズはくらい方には伸びないで明るい先端を目指して進みます。そうするとそこで先に進めなくなるという仕掛けです。これがもし円盤状のものだと、クズはそれを乗り越えて進んでいまします。伸びる性質を逆用して阻止するというクレバーな工夫です。

「クズ止め」

 

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以下、追記・訂正です

 私はそう思い込んでいたのですが、違うみたいです。田中さんが連絡をくださって、これは別の道具で、入り口はなく、クズが細い物には絡まるが太いものには絡まらないことを利用するのではないかということです。実際、この道具には開口部はないそうです。

「クズ止め」の下部。クズは入っていない(田中さん撮影)

私が言ったものは確かにあるのですが、「クズ返し」というらしく、もっと直径が広く、先端は円錐状です。

クズ返し

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 その先にはいい林があり、東京都が管理しているそうです。大原さんは「法政の裏」と呼んでいるとのことでした。大きな木があり、奥行きが20-30 mはありそうでした。玉川上水に接してこういう緑地があると、玉川上水の緑と繋がって林縁に出る雑草類がなくなり、自然度が高くなります。

左側が「法政の裏」、右側が玉川上水

 この脇の玉川上水の調査をしましたが、ミズキが多い場所でした。

 

一連の調査をして井の頭の林の特徴について、何が起きてきたかについて自信を持って言えることがあります。それはかつてこの辺りも伐採されて明るくなり、ヌルデ、イイギリ、アカメガシワなどのパイオニア低木が入り込んだ時期があり、その時と少し後に風で種子が飛んでくるケヤキやイヌシデが入って育ち、これらパイオニアは消えていき、時間が立ってケヤキやイヌシデは大木に育ち、林は暗くなってきたはずです。そうすると鳥が種子を運んでくるネズミモチ、イヌツゲ、ヒサカキなどの常緑低木、それにドングリで育つシラカシが定着し、現在の林床の優占種になりました。井の頭で言えば、歩道を少し狭くしたことがあるようで、今でもコンクリートの台座が残っています。おもしろいことにそのあたりにはシラカシやネズミモチはなく、ほとんどがムクノキです。このことはフェンスを手前に下げたおかげで直射日光が当たるような場所ではないが、明るい空間ができ、パイオニア低木は入れないが、ムクノキの定着に有利、ただし常緑低木にはまだ時間が足りないという状況ができたことを示しています。

 今回、7ヶ所、長さで700 m、本数でざっと1000本ほどを計測しましたから、かなりの手応えでそういうことが起きていたことがわかりました。

井の頭の林床を説明する図


樹木調査 6月21日 杉並

2021-06-21 14:40:25 | 調査報告

 6月21日は浅間橋方面で樹木調査をしました。ところが私が大失敗をしてしまいました。私は小平に住んでいるので、西武線で国分寺に出て中央線で吉祥寺に行き、そこから京王線(井の頭線)で富士見ヶ丘に行く予定でした。少し早めに出て国分寺でホームに降りたらいいタイミングで特快が来ていたので、飛び乗りました。「次は・・・」と言うアナウンスがあり「・・・三鷹です」と言うかと思いきや「・・・新宿です」と言うではありませんか。「ガーン!」これはまずいことになったと、大塚さんにメールで事情を説明し、「遅れるのは30分か、もっとか」と気が気ではありませんでした。意外と早く新宿に着いたので、急いで京王線にいき、調べると意外にも9:46に富士見ヶ丘に着くと言うことでした。これなら10時には浅間橋につけるので、ほっとしました。ところが悪い時には悪いことが続くもので、人身事故で遅れが出ていると言うことでした。それで調べ直すろ9:52には着くと言うことなので、遅れは数分程度になりそうでした。ところがさらにトラブルがあり、踏切で何かの理由で警戒が必要というので停車しました。ただそれはすぐに問題ないということで10時頃には富士見ヶ丘につきました。とんだことになりました。

 途中で有賀先生の奥様を追い抜いたようで、声をかけてもらい、現場に急ぎました。お詫びをしてから調査の段取りを説明し、巻尺担当を有賀先生、位置と植物についてのコールを大塚さん、記録を高橋さんにしてもらうことになりました。

 何しろ浅間橋は暗渠になる手前の緑地がある最後の橋ですから保全的には重要な場所です。ここは柵から玉川上水までの幅があり、林も状態が良いことは確認していました。大塚さんの鳥の調査でもとりが豊富だそうです。早速測定を始めました。

浅間橋上流の様子

 

 

「先生、野外では生き生きしてて、ぜんぜん違う!」

と大塚さん。よくそう言われます。

 大きい木はサクラが多く、少ないながらケヤキやコナラも大きな木がありました。細い木ではエゴノキとムクノキが多いようでした。他の場所で見ないものにヤマトアオダモがありました。調査は順調でしたが、幅が広いだけ、本数が多く、最終的には100mで84本が記録されました。

 

 

 途中で息抜きを兼ねて解説めいたことを話しました。

「これはヤマトアオダモですが、玉川上水の他の場所では見たことがありません。これで一枚の葉っぱです」

「ヘェ〜!」

「複葉と言います。言ってみれば葉の切れ込みが深くなって部分が小さな葉のようになって残ったということです。だから枯れる時は全部が一緒に枯れます」

と言っていると大塚さんが地面に落ちていた果実をとってきてくれました。

「カエデみたいに翼を持っていて、木から落ちる時にヒラヒラと飛びます」

「そうなんだ」

「タモというのはこの仲間で、ヤチダモとかトネリコなどがあります。材が硬いので、王貞治のバットはヤチダモだったそうです」

 

「ミズキが何本か出てきましたが、ミズキは枝を同じ高さに出して、少し上でまたそうするので、遠目にも特徴的ですぐわかります。これは葉っぱですが」

と言ってコナラを探しましたが、ないのでエノキの葉っぱをとってくらべながら

「普通の葉っぱは主軸があってそこから葉脈が真っ直ぐ伸びますね。ところがミズキは初めは同じように伸びるのですが、縁に近づくとカーブして縁に沿ったようになります。これを「流れる」と言います。

「ほんとだ」

 浅間橋の測定が終わって移動する時にミズヒキの花が咲いていたので、有賀先生を待ってから説明しました。

「今年初めてミズヒキを見ましたが、見てください。こちらから見たら赤いですよね」

「赤い」

「でもこちらから見ると」

と言ってひっくり返すと

「あ、白い」

「ですよね。私が想像するに、昔の人は贈り物になどをろえを添えたと思うんです。紅白のめでたいものという志を表したんだと思います」

「ところが街暮らしをするようになると、簡単にミズヒキが見つけにくくなったと思います。その時に、素晴らしいデザイナーがいて、このミズヒキを大胆にあのぐるりと巻いてピンと上に跳ねる形にデザインしたのだと思います。その大胆さが素晴らしい」

「ふーん」

「いや何も証拠はないんだけど私の想像です」

というと有賀先生が

「それ娘にやるからください」

とお土産にするようでした。

 

私がスタスタ歩いていて、静かなので振り向くと皆さん集まっているので引き返すと大塚さんがエサキモンキツノカメムシを見つけたらしく説明していました。

エサキモンキツノカメムシ

「ハートじるし」

「ほんとだ」

「はあー、不思議なもんだね」

 

ノカンゾウの群落がありました。

「ここのヒメジョオンを抜いたら、ノカンゾウが増えてきたんです」

と大塚さん、そこにクロアゲハが飛んできて、花のずいぶん深くまで沈み込むように入ってみつを吸っていました。

ノカンゾウとクロアゲハ

 などなど、楽しい会話が進みました。その後で兵庫橋の近くでもう一つ調査することにしました。ここは上水の土手の肩の幅が2 mしかない上に太いサクラがあるだけで他の木はほとんどないのですぐに100 mが終わりました。

兵庫橋下流の景観(2021.5月、大塚)

 

終わってから、少し雑談をしました。

「玉川上水は東京に残された貴重な緑で、だからこそいい管理で残さないといけないと思っています。こういう調査はそのための根拠になるデータを示すためで、ただ漠然と自然は素晴らしいから守ってほしいと主張しても、それは人の好みの問題だなどと言われ兼ねません。しかし、野鳥が豊富なのはよい林があるからだというデータがあれば説得力が違います。だから、地味ですが、こういう調査が重要なんです。

 コロナで玉川上水を散歩する人が増えましたが、それを見ても、玉川上水の機能は水を流すことよりも緑地としての価値が大きくなっていると思います。そういう意味では有賀さん(奥様)が言われるように、玉川上水の管理は水道局よりも環境局が担ってくれたらいいと思います。これはとても難しい、ほとんど不可能なことかもしれないのですが、なんとかそういう動きになればと思っています」

「幸橋ー新橋の伐採については、三鷹市に大して有賀先生たちがなんとか伐採を回避するように説得して、三鷹市が東京都に考え直すようにもの申してもらうという流れを作って欲しいと思います」

というような話をしました。皆さん大きく頷いてくださいました。

 

 


樹木調査 6月20日 井の頭

2021-06-20 14:38:39 | 調査報告

 6月20日は井の頭の幸橋と松影橋で同じ調査をしました。田中さん、大原さん、荻窪さんが参加され、後で朝日智子さんも合流されました。

 幸橋の左岸(北側)は今後伐採が予定されている場所ですが、岸の「肩」の幅が1mほどしかないため樹木の本数も少なく(27本)、調査もすぐに終わりました。

幸橋下流の左岸

 その後で右岸を調べましたが、こちらは非常に本数が多く、ケヤキ、コナラ、ヤマザクラなどの大きな木の下にシラカシ、ムクノキの細い木がたくさんありました。

 その後に松影橋の上流で調査をしましたが、右岸はクズなどが生い茂ったヤブ状なので事実上調査が困難なので左岸だけを調べました。それでわかったのは、ここは非常に特異で、大きな木はヤマザクラとケヤキだけ、非常に多かったのがニセアカシアとヌルデで、他にも出てきたのはウコギ、イイギリ、アカメガシワなど典型的なパイオニア種だということです。つまり伐採後に入ってくるような植物ばかりでした。このことは、井の頭公園の鬱蒼とした林とは全く性格の違うヤブ的な植生だということです。

松影橋上流の左岸

 昨日と違って暑くなりました。しかし雨の中とは全然違い、順調に調査ができたので、昨日の3倍のデータが取れました。協力いただいた皆様、ありがとうございました。