6月26日は井の頭の追加調査をし、前と同じく田中さんと大原さんが参加してくださいました。
一つ目は小鳥の森のすぐ脇で行いました。ここはほたる橋の上流と同じく、イヌシデなどの大きな木の下にたくさんのシラカシがあるという林でした。歩道を挟んでヒノキが植えられ ていました。
小鳥の森の脇の様子
松影橋の右岸を歩いていたらクズの繁茂がすごかったです。そのクズが電柱の支えにも登っていましたが、途中で止まっています。そこには「クズ止め」がありました。これはクズの性質をよく理解した優れものです。筒になっていて、側面は黒く、先端が透明なプラスチックになっています。先端を入れたクズはくらい方には伸びないで明るい先端を目指して進みます。そうするとそこで先に進めなくなるという仕掛けです。これがもし円盤状のものだと、クズはそれを乗り越えて進んでいまします。伸びる性質を逆用して阻止するというクレバーな工夫です。
「クズ止め」
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以下、追記・訂正です
私はそう思い込んでいたのですが、違うみたいです。田中さんが連絡をくださって、これは別の道具で、入り口はなく、クズが細い物には絡まるが太いものには絡まらないことを利用するのではないかということです。実際、この道具には開口部はないそうです。
「クズ止め」の下部。クズは入っていない(田中さん撮影)
私が言ったものは確かにあるのですが、「クズ返し」というらしく、もっと直径が広く、先端は円錐状です。
クズ返し
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その先にはいい林があり、東京都が管理しているそうです。大原さんは「法政の裏」と呼んでいるとのことでした。大きな木があり、奥行きが20-30 mはありそうでした。玉川上水に接してこういう緑地があると、玉川上水の緑と繋がって林縁に出る雑草類がなくなり、自然度が高くなります。
左側が「法政の裏」、右側が玉川上水
この脇の玉川上水の調査をしましたが、ミズキが多い場所でした。
一連の調査をして井の頭の林の特徴について、何が起きてきたかについて自信を持って言えることがあります。それはかつてこの辺りも伐採されて明るくなり、ヌルデ、イイギリ、アカメガシワなどのパイオニア低木が入り込んだ時期があり、その時と少し後に風で種子が飛んでくるケヤキやイヌシデが入って育ち、これらパイオニアは消えていき、時間が立ってケヤキやイヌシデは大木に育ち、林は暗くなってきたはずです。そうすると鳥が種子を運んでくるネズミモチ、イヌツゲ、ヒサカキなどの常緑低木、それにドングリで育つシラカシが定着し、現在の林床の優占種になりました。井の頭で言えば、歩道を少し狭くしたことがあるようで、今でもコンクリートの台座が残っています。おもしろいことにそのあたりにはシラカシやネズミモチはなく、ほとんどがムクノキです。このことはフェンスを手前に下げたおかげで直射日光が当たるような場所ではないが、明るい空間ができ、パイオニア低木は入れないが、ムクノキの定着に有利、ただし常緑低木にはまだ時間が足りないという状況ができたことを示しています。
今回、7ヶ所、長さで700 m、本数でざっと1000本ほどを計測しましたから、かなりの手応えでそういうことが起きていたことがわかりました。
井の頭の林床を説明する図