玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します。

生物多様性を感じる―都立東大和公園―

2021-08-29 23:10:02 | エッセー

2021年8月29日

生物多様性を感じる―都立東大和公園―

 

長峰トモイ(東大和市在住)

 

 私は花マップの観察会で玉川上水も歩きますが、東大和市に住んでいるので東大和公園での観察会にもよく行きます。それで玉川上水とは少し違う動植物のことを書いてみます。

 都立東大和公園は昭和40年代後半に団地開発が計画された際、多くの市民がこの里山の自然を守りたいと東大和市と共に東京都に働きかけて都立最初の丘陵地公園として開園しました。

 正門を入ってすぐのところに「ときどき池」と言う池があります。ときどきしか水をたたえないのでこの名があります。近辺にエノキ、風の通る空間、クヌギなどがあるおかげで国蝶のオオムラサキが飛翔します。オオムラサキの幼虫はエノキの葉を食べて成長し、成虫になった7月中旬~8月上旬には優雅に飛翔し、クヌギの樹液を吸っている個体を見かけます。以前は昆虫標本にするほどいたようですが、昨年は見られ、今年は見られないという状況です。

オオムラサキの成虫

 

 秋から冬にはこのエノキの実を好んで食べるイカル、オナガ、シメ、ツグミ、ジョウビタキ、カワラヒワなどを見かけます。 

 定例観察会は毎月第4水曜日の午前中です。毎年感激することの一つはマルバアオダモの開花で、真っ白な花が白雲を思わせるように日当たりの良い場所に咲きます。例年は5月の連休前後が見ごろなのに、昨年は4月下旬,今年は更に早く4月中旬 でした。これと前後して松林ではハルゼミの声がします。「声はすれども姿は見えず」です。

マルバアオダモの花

 

 また5月中旬以降は林の日陰でオオバノトンボソウを探すのも例年のお決まりです。

オオバノトンボソウ

 

8月下旬になるとマルバアオダモがたわわに実り、散歩道にも落ちています。

 

マルバアオダモの果実

 

9月になるとオケラやコウヤボウキが開花し、秋の雑木林の紅葉は玉川上水と同様美しいものです。

1月になるとホカロンを腰、足に入れ防寒をしてエノキの樹木の下で幼虫探し。オオムラサキや、ゴマダラチョウの幼虫が見つかれば寒さも消えます。冬場は鳥の詳しい方も参加されます。

 

オオムラサキの幼虫

以上花マップの玉川上水の観察会では見ることの少ない植物等を記してみました。

 


小平の創価高校脇の樹木調査

2021-08-28 20:04:36 | 日記

小平の創価高校脇での樹木調査

高槻成紀・豊口信行

暑い日が続く8月28日に小平の栄光橋と水車橋の間にある創価高校の脇で長さ100 mのベルトをとって樹木調査をしました。暑かったせいか今日の参加者は豊口さんだけだったので、時間がかかるだろうと覚悟をしてはじめました。このあたりは高校生がよく歩くところで、白梅大やムサビの学生もよく歩きますが、土曜日だったので、さほどでもありませんでした。

調査地の景観

 

調査地の位置関係

 

 汗をかきながら私が樹木の名前を確認して直径を測定し、豊口さんが距離を読んで記録をすることにしました。調査は順調で、1時間半ほどで100mを2本(用水沿いと上水沿い)調べました。

 出現したのは34種で、これまで出ていない樹種はクスノキだけでしたが、ヤマトアオダモ、カクレミノ、ハナビワ、サザンカ、ヒイラギ、クマシデなどは一度くらいしか出なかったと思います(表1)。クスノキは鳥が種子散布したものと思われます。歩道に鳥の吐き出しがあり、ミズキの果実が食べられていました。

 

表1 小平市創価高校脇の樹木調査で出現した樹種の

平均直径と本数(長さ100mのベルト)

クマシデ

 

 平均直径を比較すると、クヌギが49.3 cmで最大でしたが、2本しかありませんでした。コナラは平均直径は30.8 cmで本数も17本あり、この林で重要でした。イヌシデは平均直径が19.6cmですが19本あり、やはり重要でした。本数が多くて細かったケヤキ、エゴノキ、ネズミモチなどが低木層で重要でした。

 太い樹木から順に並べて、落葉樹と常緑樹に分けて示したのが図1で、太い木は落葉樹で常緑樹は細い方に入っていました。

 

図1 小平市創価高校脇の樹木を太いものから細いものへと並べた図

 

これは小平の他の林にも共通のことでした。本数は211本で(表1)、やはり本数が多い林でした。

 

 水車橋で断面を調べました。

水車橋の脇で断面を取る高槻(汗びっしょり)

 

全体で30 mあり、やはり幅の広い林であることがわかりました(図2)。上水の両岸の幅はほぼ10 mで水路の幅は4−5mでした。「壁」は垂直に近く、下部には土壌の堆積があって、そこにアオキやヤツデなどの常緑低木が多く生えていました。小平の多くの場所と同じく北側に1.5 mほどの幅の用水があります。ここでは道路は南側にしかありません。

 

図2 水車橋付近の断面図。ただし垂直方向は不正確。

垂直の「壁」の下部に土壌が堆積し、アオキ、ヤツデなどが生えているようす

 

 余談ながら、調査が終わってから豊口さんが黒いアゲハを見つけました。交尾をしており、白い模様があったので豊口さんが「モンキアゲハみたい」と言いましたが、モンキアゲハの白い模様はもっと黒の中に「抜けたような」白だったと思い、「ナガサキアゲハかもしれない」と、スマホを調べたら確かにナガサキアゲハでした。もともとは九州などの暖地にいたチョウですから、温暖化によって北上してきたようです。

 

ナガサキアゲハ

 

まとめ

 以上、小平で野鳥調査で歩く範囲から4ヶ所を選んで樹木調査をし、いずれもコナラ、イヌシデ、ケヤキなどの落葉広葉樹の大きいきが林冠を占めており、低木層には場所によって量は違いますがネズミモチ、ムラサキシキブ、エゴノキなどがよく見られました。林は幅が30 mほどあり、樹冠を入れれば34-35 mほどもある緑の量の多い林です。このことは「林の鳥」の生息地として適していると考えられます。

 


小平鷹の台での樹木調査

2021-08-22 21:03:44 | 日記

小平で中央公園近くと津田塾大学南側で調査をして、いずれも100メートルあたり240本前後もの破格の高密度であることがわかり、やはり小平の玉川上水の林は豊かだということが裏付けられました。8月22日には3回目として鷹の台を調べました。

 ですからこれまでと同じように100メートルの長さを調べますが、本数が多いことが調査経験者が多かったのと、やや樹木がまばらだったので1時間余りで終わりました。

調査のようす

 

 結果をまとめてみると、100メートルに168本でやはりやや少なめで、これは井の頭の小鳥の森近くでの155本に近い値でした。

 不明を含み27種の樹木が出現し、平均直径はクヌギが一番太く、コナラとケヤキがこれに注ぎました(表1)。本数ではネズミモチ が33本で最も多く、コナラ、ムラサキシキブ、イヌシデ、エゴノキがこれに注ぎました。コナラは太さでも本数でも大きい値を取り、この林の主要な樹種と言えます。

 

表1. 出現樹種の平均直径(cm)と本数

  直径の太い樹木から細いものへ落葉樹を黄緑色、常緑樹を青でと並べたグラフを描くと、太い木は落葉樹で、ここではコナラとケヤキに太い木がありました(図1)。常緑樹は細いものが多かったのですが、多かったのはネズミモチ、トウネズミモチでした。

図1. 鷹の台での樹木直径を太いものから順に並べたグラフ

 

 鷹の台を含め、小平3カ所と井の頭の小鳥の森を比較したのが表2で、平均直径は10 cm前後で、意外にも津田塾大学が8.6 cmと一番細く、小鳥の森が12,1 cmでした。平均値は細い木が多数あるとそれに引きずられます。そこで直径20 cm以上の本数を数えて、全体の本数に対する割合を求めると、津田塾大学では13.5%と最も少なく、中央公園と小鳥の森が22%台でした。つまり、太い木の太さはどこでもさほど違わないのですが、相対的に本数が少ないと全体の返金直径が小さくなるということです。

 

表2. 小平4カ所と井の頭小鳥の森の樹木調査の比較

 同じ小平で、林の太さ構造が太いものはコナラやケヤキの大木であり、下層に常緑低木が多いと言っても津田塾大学ではシラカシが多く、すぐ近くの鷹の台ではネズミモチとトウネズミモチが多いという違いがありました。こういう違いが野鳥の生息に影響を与えるということもあるかもしれません。

 鷹野橋に戻って玉川上水の断面の水平距離を測定しました。小平では玉川上水の両側に幅4, 5 mの歩道があり、北側に用水があります。北側の歩道には両側に膝くらいの高さの柵がありますが、南側は片側だけです。上水の両側は幅2, 3 mの平坦面あるいはゆるい斜面があり、そこからほぼ垂直な壁になっています。上水の幅は基本的に10 mほどです。鷹野橋のあたりでは南側の壁が垂直ではなく急斜面ですが、他の場所の多くは南北ともに垂直壁です。

 というわけで南北の緑の幅は25 mほどあり、やはりこのあたりは良い雑木林のような状態であることが確認できました(図2)。

図2. 鷹野橋での玉川上水の断面図. 右が北. ただし縦方向は不正確です.

 

ご協力くださったみなさま、ありがとうございました。


タケオオツクツクと伊奈氏

2021-08-19 16:50:10 | エッセー

<エッセー>

タケオオツクツクと伊奈氏

大塚惠子

 

 杉並の上水では、今年も「セミ抜け殻しらべ」を行なっています。埼玉県の辺りにタケオオツクツクという外来のセミが、限定的に出現するので、以前から見に行きたいと思っていました。タケオオツクツクはその名のとおり竹に産卵し、中国製の輸入竹箒に卵がついて広がったと言われています。

 

タケオオツクツクの抜け殻

 

 タケオオツクツクの出現時期には遅かったのですが、お盆に川口市の赤山城址という所へ行きました。行った時は、まだ明るかったですが既に鳴いていました。ヒグラシと同じく日暮れ前の数時間よく鳴きます。

 城址では、タケオオツクツクのためではなく、竹林が保全されていました。竹林の周辺は、土塁や桜、畑、外環道に囲まれていました。整備されていると同時に自然も残る場所でした。

赤山城址近くの竹藪

 

 看板を見て驚いたのは、赤山城址は、玉川上水の水道奉行だった伊奈氏が治めていた場所だったということでした。河川や新田の開発、富士山噴火被災地の復旧など、ありとあらゆる事業に携わった一族だそうです。


樹木調査 8月7日 津田塾大学南

2021-08-07 17:31:32 | 日記

8月7日に小平での2回目の樹木調査を津田塾大学南側で行いました。天気が心配されたのですが、暑いくらいでした。この辺りは小平でも林が立派なところです。というのは玉川上水そのものは特別ではありませんが、津田塾大学に樹齢100歳ほどのシラカシの林があって、それとつながっているからです。

津田塾大学南側の玉川上水歩道の様子

 

今回は私を含めて6人だったので、前回と同じように上水側と用水側の2つにわかれて進めました。

巻尺を張る

 

 50メートルが終わって1時間近くが経ちました。次の50メートルは上水側は少し樹木が少なかったので早めに終わりました。上水側はムラサキシキブが非常に多く、用水側はエゴノキ、ミズキ、シラカシが多いという違いがあったようです。

調査の様子

 

作業が終わると汗びっしょりになりました。ドリンクを飲んで記念撮影をしました。

今回は松山さんが久しぶりに参加してくださいました。それからシンポジウムのあとで連絡をもらった澤口さんが初めて参加してくださいました。

 結果をまとめると樹種が32種もありましたから、中央公園南側と同様、小平以外の場所と比べて多様でした。直径の平均値が20cmを超えたのはコナラとクヌギだけでした。本数ではムラサキシキブが45本もあり、シラカシ、エゴノキ、コナラ、ミズキが多く見られました。本数が多くしかも太いのはコナラだけでした。

 太さの分布を見るとL字型になり、太い木はコナラを中心とする落葉樹()で、細い中には常緑樹()がありました。この形は中央公園近くと基本的には同じでしたが、中央公園の方が直径10-20cmの木が多いためにL字の縦部分が右に膨らんだ形になりました。

樹木の太さを太い順に並べた図。:落葉樹、:常緑樹

 

 結果はいずれも小平の林が多様で落葉樹が主体であることをよく示しており、野鳥が豊富なことを説明してくれそうです。

 

 気になったのはナラ枯れで、出現した26本のコナラのうち9本(34.6%)がナラ枯れだったことです。太さを見ると太い方に偏っているようでした。

コナラの太さとナラ枯れ

 ナラ枯れの木は木屑(フラス)が出ていて、葉が完全に枯れたものから、一部だけが枯れたものまでありました。

 

木は木屑(フラス)が出た木

 

調査範囲の少し外には「カシナガホイホイ」を巻いた木がありました。

「カシナガホイホイ」を巻いた木

 

一部が剥がれていたので見ると確かにカシノナガキクイムシがくっついていました。

カシノナガキクイムシ

 

 帰りに中央公園の辺りを歩いていたら、大石さんに似た人がいました。ちょっと自信がなかったので、声をかけるとまさにそうでした。月曜日に観察会があるのでその下見をしているとのこと、えらいですねえ。私は下見などしたことがありません。見習わなくては。

ご協力いただいた、大西さん、澤口さん、辻さん、松山さん、リーさん、ありがとうございました。