玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します。

小金井の「草原」と小平の「森林」

2021-09-29 22:16:00 | 調査報告

小金井には樹木はサクラしかないので野鳥も乏しいことがわかってきました(こちら。このことは生物多様性という意味で問題です。私はそれと同時にサクラだけを間隔を開けて植えると森林の植物が育てなくなることを心配しています。それで群落調査をしていますが、現在行っていることの中間報告をします。小金井で10カ所、小平で5カ所を調べました。代表的な景観は写真1、2の通りです。

写真1 小平のコナラ林の林床群落

 

写真2 小金井の「草原」的な群落

 

 植物は1m2の中の植物の被度(植物が覆っている面積の割合)と高さを記録し、その積を「バイオマス指数」として表現します。それをまとめてみたのが表1です。

 

表1 小平と小金井の群落出現種のバイオマス指数

 

 これでわかるのは、両方に共通の植物は7種と少なく、小平だけ、小金井だけがの植物が多いということです。小平だけにあった植物の多くは名前に水色がかけてある森林の植物でした。小金井だけにあったもので注目されるのは大型双子葉草本で、これは小平にはありませんでした。特にツリガネニンジン、アカソ、アキカラマツなどが多くありました。この中にはヒメムカシヨモギのような外来種もあります。外来種は小平の森林にはありませんでした。またアカメガシワのような明るい場所に生える樹木やカナムグラ、アカネ、センニンソウなどのつる植物、ススキ、キツネガヤなどのイネ科が多いのも目につきます。そして森林に生える植物としてはタチツボスミレくらいなものでした。

 まだまだ調査数が少ないのですが、大きな方向性は見えています。それが裏付けられるデータがとれるはずです。

 群落の場合、生物多様性という意味では野鳥のように種類も個体数も少なくなるというわけではありませんが、森林の植物が育てられないことは確かなようです。サクラだけにする方がいいという人は、サクラだけの植生になると何が起きるかということを知るべきです。

 


第2回シンポジウム

2021-09-26 18:26:26 | 最近の動き

2021年9月26日14時より、三鷹駅まえの武蔵野芸能会館で、第2回シンポジウム「玉川上水管理計画の問題点」を開催した。

 

スタッフは13時に集合した。参加者には検温・消毒してもらい、マスク着用の上着席してもらった。

 高槻が玉川上水みどりといきもの会議の経緯などを説明したあと講演が始まった。

 

司会の高槻(加藤嘉六氏撮影)

 

会場のようす

 

 鈴木浩克さんが基本知識の説明をした後、玉川上水保護の歴史を古い新聞記事を通覧することで分析し、いくつもの興味深い事実を「発見」した話をしました。特に重要だと思ったのは、戦後の開発の動きに対して市民が自然を守る動きをし、行政とともに緑を守ったということ、にもかかわらず「27年の空白」により、自然と歴史遺産双方の保護であったはずのものが「空白」後にはほぼ自然は無視されたことを指摘したことである。そのあと、文献を駆使して「法面を守るために伐採する」という水道局の言い分に根拠がなく、むしろ樹木があることが土壌流失や法面崩壊を防いでいることを指摘した。皆さん、非常に興味を持ち、頷きながら聞いていた。

 

発表する鈴木浩克さん(加藤嘉六氏撮影)

 

 そのあとで有賀誠門先生が自宅近くの玉川上水の法面が伐採され、ネット工事された衝撃と、それに対する水道局職員とのコミュニケーションの困難を取り上げ、その背景についての考察を話した。

 

発表する有賀誠門先生(加藤嘉六氏撮影)

 

その後、休憩を挟んで意見交換をした。

 三鷹市議の野村羊子さんはこれまでの玉川上水関係の動きと、三鷹市として東京都に要望を出す運びであると発言した。これについて高槻は、水道局に意見を言っても「市民一人の意見を聞くわけにはいかない」という対応をする、小平市長がしたように市長が書面を書くことが有効なので、ぜひ三鷹市でもそうして欲しいと応えた。

 

会場のようす

 

会場からの発言に応える(加藤嘉六氏撮影)

 

 武蔵野市のある市民からは、それぞれの市での動きはあるが、もっと有効なものとするための連合的な組織はないのかという質問があり、鈴木がかつて7つの市が集まってイベントをしたが組織としてはないと応えた。また武蔵野市は緑を大切にしているが、水道局は無視するように伐採をしたし、今もしようとしているので、阻止するよう要望を出したと伝えた。高槻は、行政としては連合は難しいかもしれないので、我々が市の境界を貫くような活動をして行政が連合する引き金になれば良いと思うと応えた。

 武蔵野市の藤井氏は、伐採を見ていると伐り方に心がない、また柵が高すぎて自然と人間を隔離するように感じると語った。これに対して高槻は、自分は科学者として調査で証拠を出して説得するという姿勢をとるものの、その根底には生物に対する愛おしさがあってそれが一番大切なことだと思うと応えた。

 残念ながら、そこまでで予定の時間になったので閉会とした。

 ご協力いただいたスタッフのみなさま、web配信をしていただいた佐野様、撮影していただいた加藤嘉六様、ありがとうございました(文責、高槻成紀)。

 

** オンライン参加の方を含め、感想・ご意見を以下のアドレス、またはこのコメントにお寄せください。

   takatuki@azabu-u.ac.jp

 

<参加者の意見・感想> こちら

 

++++++ メモ +++++++++

スタッフの役割分担

会場設営              全員

受付                 有賀喜見子、輿水、近藤

司会                 高槻

講師                 鈴木、有賀

会場スナップ撮影      加藤

Zoom                佐野、横須賀、漢人

マイク回し            リー

集金                 田頭

 


参加者の感想・意見

2021-09-26 18:23:42 | 最近の動き

アイウエオ順

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オオクボカズミ

 玉川上水保全の歴史を知り、皆様のご尽力に感謝いたします。
今小金井側はいささか殺風景に見えますが、水面が見えて通船した時代を知ることができます。小金井橋のたもとや、橋の形状もわかります。
 植生の育つままの小平市側を見ると、手入れ拒否のあまり外来植物やつる性の植物がのり面にダメージを与えてことはないかと危惧しています。せっかく清流復活事業で水が流れる玉川上水になったのですから安定した流水とのり面の恒久的な維持案が知りたかった。

 回答:小平で手入れ拒否をしてはいません。外来種が多いのは小金井です。今回はそのことは触れませんでしたが、群落調査をしており、確かな証拠があります。つる植物が多いのは玉川上水の特徴の一つで、それは問題ではありません(高槻)。

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澤口節子(小平市)

  2回のシンポジウムに参加しました。講演の内容は大変勉強になりました。
さらに、第2回で発言された、武蔵野市にお住まいの方の「伐採の仕方に愛がない」
というお話にはまさにその通り、と思わず拍手をしていました。

 流域にどのくらいの自治体があるのかというご意見があり、調べてみましたら、
42.74キロメートルの流域に13の区市があります。これだけ多くの区市が関わって管
理する以上、それぞれの方針(あるいは無方針、あるいは前年に従う、または前例を
作らない)によってやり方は違ってくるでしょう。さらに水道局、建設局と縦割りの
行政が加わって、柵の内と外で区分けされた「心のない、愛のない」姿が顕著になっ
ているように感じました。
 シンポジウムで示された地道な調査や研究で得られた資料を生かして、玉川上水全体
の良い姿を考え、引き継いでいくには、それぞれの行政に働きかけていくだけでは限
界があるように思います。例えばナショナルトラストのような方法を使って、市民が
維持していくというのはどうでしょう。玉川上水の持つ自然と、文化的な遺産として
の価値を守っていく方法を考えられたらと思いました。

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出口綾子(鎌倉市)

 今日は大変有意義な会を聴かせていただき、ありがとうございました。とくに鈴木浩克さんのお話は、経緯も問題意識もふくめ非常にわかりやすく、勉強になりました。
 下流地域での埋め立て・開発の様子を見て上流地域で反対運動が生まれたこと、次に遊歩道案が出てきて多くの人が「これなら良いんじゃないか」と言った(そのこと自体いかにも想像できます)がそれにも反対して守ってくださった市民たちもいてくださったこと、一度は雑木林ともども永久保存すると決まったのに、その後登記問題で「自然を残す」という理念が削られてしまったこと、しかしそれでも、今回のような伐採に対して、市民からの疑問が起きみなさんがこのように声をあげてくださっていること。この一連の流れで、そのつど声をあげ、自然を保護するために具体的に動いてくださった(くださっている)市民のみなさんに、本当に感謝したいと思います。
 私が住んでいる神奈川県の鎌倉でも、さまざまな開発問題が起き続けています(ここ数年は私はとりわけ北鎌倉の「緑の洞門」開発問題に関わっています)。地域などすべて違いますが、史跡的価値もあり自然の価値もあるところの開発問題であるという点が共通しており(開発するとなったら、「危険だ」というキャンペーンが張られることなども共通)、私たちのところでも大いに学ぶ点があると思いました。
 おそらく同様の開発問題は日本中にたくさんあると思います。ぜひ横のつながりで交流させていただけたらと思いました。今後のみなさまの運動や動きにも注目していきたいと思います。

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遠山晴美(武蔵野市)

会議のご報告ありがとうございました。

初めてこの事実を知り、何とか止めなければと強く思いました。やはり、多くの賛同が必要なのでしょう。市議会議員に働きかけるのも良いかと思います。私も知っている議員の方達に働きかけようと思います。

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長澤澄江(小平市)
 シンポジュームに参加させていただきありがとうございました。玉川上水の現状と昔から住む方々の思いを知り良く理解できました
今年の4月に境橋から上流に向かって歩きました。一番の驚きは小金井橋周辺です。きれいに刈られた上水はスッキリしてましたが欅の太株が痛々しく見えました。小金井橋から西の方は真逆で上水の水が見えないほど蔦や雑木で覆われてこれもまたショックでした。水が見える玉川上水を望んでいます。外来植物がはびこり日本古来の植物が消えてしまうことを懸念しています。生物もそれに伴って入ってきてると思います。日本の植物だけ残したいです。選別して植物を切ることはできないのでしょうか。明治の時代に戻すことより令和の時代にあった上水の緑になって欲しいです。
 
 
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西脇真由美(杉並区)

 鈴木氏のレクチャーは大変勉強になりました。
三鷹市市議、杉並区区議も参加されていたのは良かったです。政治権力が必要だと思います。|都議にも動いて貰いましょう。元都庁職員のYouTuber澤章氏によると都庁は1年の2/3を予算編成に費やしていてしかも予算執行が1年半後だとか。
https://www.youtube.com/watch?v=Ghvk0b5uK5Y
都庁の体質に根本的問題があると思います。都庁は都民の方を向いて仕事していません。

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林 康江 (東久留米市)

 コロナ禍で外出がままならなくなり、家からさほど遠くない玉川上水を初めてゆっくりと歩く時間を持ちました。大きく立派な木々に囲まれる側道を歩く時、体感する空気の爽やかさと木漏れ日の優しさ、時折足元を驚かせる木の根っこたち。とても豊かな時間を持ちました。何回か訪れる中で、曜日によっては親子連れも楽しげに歩く和やかな光景がありました
 この上水を作った玉川兄弟のお話を地元の子どもたちは学ぶそうですね。目先の利便性、時間とお金絡みの仕事で子どもたちの学びが教科書だけのものになってしまうのはもったいなすぎると、今日お話を伺って痛感しました。自然を守ることは大切な子供を育てること、未来を守り育てることにつながると改めて感じました。
 三鷹の友人に今日のこの会議のことを伝えました。友人にとっても玉川上水はお気に入りの散歩道で、皆様のような玉川上水に心を尽くし守ろうとして動いてくださる方々の存在を知らなかったと。たくさんの方々に伝え広める可能性があることもまた分かりました。皆様の活動は縦に横にネットワークを広げることで何倍もの力を得られるものと思えました。

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Atsuko higashi(東大和市)

玉川上水沿いに居住しておりながら、過去の歴史や樹木について何も知らずに過ごしてきました。この講演で学んだことを意識しながら、日々の散策を楽しんで行こうとおもいます。

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宮﨑美智子(西東京市) 
 前半の話はわかりやすかったです。資料のイラストや説明は、看板にして玉川上水に出して欲しいくらいです。今もいくつか看板はありますが、昔の話が多くそれはそれでいいのですが、今回の視点から見たものはないように思います。水の歴史についての看板も欲しいです。昔と今では水源も利用目的もまわりの環境も違います。下水の再利用って知られていますかね
 シンポジウム最後に参加者の声が聞けてよかったです。できるならば参加者50人にはそれぞれの想い、問題意識があったと思うので全員の声が私は聞きたかったです。
 回答:意見交換の時間が取れなかったのは申し訳ありませんでした。次回は考慮します(高槻)。
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村上健太(三鷹市)
 鈴木さんの講演は歴史的経緯や科学的知見を踏まえたものであり、また、伐採賛成派がよく引用する論文や意見への反論ポイントが整理されていて今後議論していく中でとても参考になります。
 市民の中で議論していくことももちろん大切ですが、講演の中でも話があったように、市長/区長/都議を動かす政治力も必要と感じました。
 本日出席いただいた市議区議の方々、お力をお貸しください。よろしくおねがいします。
 
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山名寛子(稲城市)

玉川上水に関わる現状について貴重なお話をありがとうございました。玉川上水の地域住民ではなく、今までに見聞きした話から、上水の今後について気になり参加させていただきました。やらない方がいい土木工事などに使われているお金を、自然と人が安全に共生する方向を目指せるよう、公けとしての研究と実践に使うようにはできないかと思いました。そうすれば、人々の意識も高められると思いました。鈴木さんの話に出てきた、植えた木よりも実生で育った木の方が強いということが印象に残りました。地域の人が長年にわたって慈しむように手入れをして、何代もの人々に潤いを与えてきた玉川上水が、緑豊かに生き続けて欲しいと願います。

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武蔵野市くぬぎ橋の木は伐採回避

2021-09-24 06:13:42 | 最近の動き

武蔵野市くぬぎ橋近くの木に伐採を予告する赤テープが巻かれていたので、緊急調査をし(こちら)、9月21日に東京都と武蔵野市に見直しを求める要望書を提出しました(こちら)。9月24日に本会のメンバーである鈴木浩克さんが確認したところ、赤テープが青テープ(剪定)に付け替えられていたそうです。私たちの要望書によるものかどうかはわかりませんが、ともかく伐採を免れたということでほっとしました。


武蔵野市くぬぎ橋の樹木伐採見直し要望書提出

2021-09-21 06:25:03 | 最近の動き

武蔵野市くぬぎ橋の近く(桜堤調理上前)の樹木に赤テープが巻かれ、伐採予定であることがわかったので(こちら)、緊急調査をしました(こちら)。私たちは、9月21日に下記の団体と連名で、調査データを示し、伐採の必要はなく、伐採すれば景観が損なわれ、ヒメニラという絶滅危惧種がなくなる可能性が大きいので、見直して欲しいという趣旨の要望書を東京都水道局と武蔵野市に提出しました。

 

Biotop Guild 2(代表 三森典彰)

井の頭かんさつ会(代表 田中利秋)

井の頭自然の会(代表 鈴木浩克)

グリーフサポートこだいら(代表 森 幸子)
小金井玉川上水の自然を守る会(代表 橋本承子)

小平・環境の会(代表 島 京子)

玉川上水花マップ・ネットワーク(体表 高槻成紀)

地球永住会議(代表 関野吉晴)

ちむくい(代表 リー智子)

どんぐりの会(代表 尾川直子)

はけの自然と文化をまもる会(代表 横須賀雪枝)