読後感

歴史小説、ホラー、エッセイ、競馬本…。いろんなジャンルで、「書評」までいかない読後感を綴ってみます。

薩南示現流

2006年11月22日 | 歴史小説
                           津本陽    文春文庫

 学生時代に後輩から薦められて読んで、実戦の描写に衝撃を受けた本。幕末に猛威を振るった薩摩の超実戦剣法・示現流の創始者、東郷重位が主人公。重位自身は安土桃山~江戸初期の人である。
 剣道有段者であり、試し切り等の経験もある津本氏の小説は、他にない剣戟シーンのリアルさが魅力である。実戦で使いにくい細かな技や駆け引きを省き、シンプルな打ち込みと踏み込み・胆力を鍛えまくる示現流の凄みが伝わってくる。大兵の男を肩から腰骨まで両断したり(ヒエ~!)、木刀で真剣を持つ相手の指を破壊したりと、すさまじいシーンが続くが、重位その人は温厚な性格である。
 上方で重位に示現流を伝えた善吉和尚は6つ年下、重位の一番弟子・長谷部四郎次郎は6つ年上と、学ぶのに年は関係ないことを教えてくれる。本書には幕末~明治期に材をとった、4編の短編も収録されている。
 余談だが、『週間ポスト』連載中の小池一夫氏の「新・子連れ狼」では、重位はなんと大五郎を連れて旅をしている。大五郎も水鴎流から示現流に転向 (^.^;