
今から10年くらい前のこと。
長谷川トメオという高校一年生がいた。
祖父は、
90歳で老衰の身にあって、
トメオを枕元に呼んだ。
祖父は言った。
「今から7代前。長谷川家と三沢家との真剣勝負が不本意な両者相打ちとなり、仇討ち等のことを鑑みて、両家において、この決着を7代後につけることにした。その7代目にあたるのがお前や。すぐに、剣道の防具一式を揃え、恨みをはらすのだ」と、
力説した。
トメオは、
「剣道とかヤダ!バスケ🏀するんだから」と口答えすると、
祖父は、
「ならば仕方ない。大学行きの資金はお前が用意せよ」と言った。
トメオはそばにいた父親に、
「父さん。俺、防具揃えて明日、剣道部に入るから」と言った。
父親は、
「お前が自分に良いと思うことを行うように」と忠告した。
トメオは剣道部の顧問をしている白髭のジジイから、
「剣道とは目に見える物を打つものではない。心に見える物を打つ!」と言われた。
部のキャプテンが来て、
「顧問は先週、くも膜下出血で退院したばかりだから、あまり気にしない方がいいよ」と教えてくれた。
祖父はトメオにこうも言っていた。
「お前のいる高校にひとつ歳上の男、三沢ハルミツが必ず剣道部にいるはずや」と。
トメオは驚き😧
「三沢ハルミツ?三沢光晴じゃねえの⁉️」と答えたが、
祖父は、
「必ず、長谷川家の武勲を立てて、ご先祖に報告するのだ」と言い聞かす。
トメオは困ったように、
「先祖に報告するって言っても、俺、霊能力ないし」と嘆いた。
そんな訳で、
剣道部員に三沢ハルミツがいるかどうか尋ねると、
誰も知らないという。
そんな中、
部員の一人が、
「三沢ハルミツならサッカー⚽️部にいるぜ」と言ったので、
トメオは防具付けたまま、
サッカー部の部室に行った。
そしてハルミツに、
「お前、ナンデ剣道やめたんだよ⁉️7代前の約束忘れたか⁉️」と語調を強めた!
ハルミツは驚いて、
「剣道とか最初っからしてねぇよ!それにお前、誰や⁉️」と問うので、
トメオは自己紹介した。
ハルミツは面白そうに、
「長谷川か?俺もそのことは知ってるけど、興味ない。キング牧師が暴力には非暴力だって教えてるんだぜ」と答えた。
トメオは、
「キング牧師か🤔だからこの頃、焼き肉キングが流行ってるんだな」と呟いた。
ハルミツは、
「あんまし真剣に考えるなよ。テキトーに剣道して、大学行きのゼニ手にすればいいんだから」とアドバイスした。
そうとも知らない長谷川家では、
特別製の竹刀こと決闘竹刀を高値で作らせた。
トメオは来る日も来る日も練習した。
竹刀の握り方から打ち方、
足の動きから立ち回りまで----。
そして、
それは顧問を喜ばせる結果となり、
すぐに、
地区大会の選手となった。
相手高は優勝経験のある実力折り紙付きとのことで、
部員は緊張していた。
キャプテンが最初に出て、
すぐに相手から面を打たれた。
キャプテンは部員の元に帰ってくる際、
「口ほどにもねえ奴やな」と言って笑ったが、
部員は心に「それはお前や」と罵った。
次に相手高の副キャプテンが立ちはだかることになる。
モチ、
トメオの相手。
部員たちはヒソヒソと、
「ケンドーヒロシマじゃねえか?ピカ打ちの名手の。ピカ打ちの後は、衝撃でドンと倒れるぜ」との声を聞き、
トメオは心臓バクバクやった。
トメオが恐る恐る竹刀を構えると、
ケンドーヒロシマは、
「そんな構えじゃワシは倒せんぞ」と言った。
試合開始とともに、
トメオがケンドーヒロシマの胴を打ち、
試合終了となった。
部員たちは、
「トメオがピカ打ちを破った😳」と驚きまくった。
ケンドーヒロシマの方は、
「きょうは曇り空やから、ポイントを見つけきれんかった」と、
訳のわからん言い訳をした。
次に相手高キャプテン、
ケンドー進化が現れた。
視力がほとんどないということやったけど、
部員たちは、
「あいつは目が見えない。けど、相手の体温をキャッチして、心臓の鼓動を聞き分ける」とヒソヒソし出した。
対戦相手の一年生は、
この噂話しの恐ろしさに、
気を失った。
仕方なく、
トメオが相手させられることになった。
試合開始になっても、
ケンドー進化は動かず、
相手の音と動きを待っていた。
そこに「ガンジューロー‼️」という叫びとともに、
逃げるペルシャ猫追っかけに入った子供に気を取られたケンドー進化に、
トメオは面を決めた!
部員たちは大喜びも、
団体成績で敗北となった。
トメオはハルミツ連れて家に来て、
剣道やめてサッカーすることを父親に告げた。
そして特製の決闘竹刀を置き、
「決闘しない」と言って、
ハルミツと仲良く出て行った。
父親は、
トメオの後ろ姿に、
「子よ。お前が良いと思うことをしなさい」と呟いた。