映画と渓流釣り

物忘れしないための処方箋

冬ドラマの結末

2018-03-24 07:11:13 | 旧作映画、TVドラマ
一月からスタートした冬ドラマも全て終わった。
結局、3本完全制覇することが出来た。

「きみが心に棲みついた」
途中何度も投げ出しそうになったけど、ムロツヨシが中村アンに向ける勘違いのオタク恋心の落とし所に興味があり、最後まで観てしまった。
吉岡里帆はやっぱり主演じゃないかな。造形や演出の問題が原因だけど、それを凌駕するほどの魅力を醸し出せなかった。脇の女優さんの方が気になってしまうドラマじゃ、失敗と言わざるを得ない。

「anone」
この冬一番期待した坂元裕二脚本作品。
テーマが散漫になってしまった。パーツパーツは見応えあるけれど、根幹にあるテーマを掴みきれなかった。てっきり母と娘の再生を描くのかと思っていたが、添え物のようで重厚な前二作とは違うものになってしまった。偽札作りもサスペンスとまでいかなかったし、男と女の掛け合いにもロマンスを感じることはなかった。唯一、彦星ハリカの不器用な感情のやり取りに心掴まれた。
役者は流石に充実しており、坂元会話劇を楽しむことが出来た。
広瀬すずはまた一つ財産を手に入れたと思う。視聴率とかネットの批判などに振りまわされることなく、沢山の作品に関わり質の高い演出共演者からインパクトを得てほしい。

「アンナチュラル」
凄く出来の良い連作短編小説を読み終えた時のような充実感。
野木脚本はオリジナルでも面白い事を立証してくれた。今後は一層オファーが殺到するだろう。下手に量産してボンクラな脚本家になって欲しくない。映画界からも当然注目されているだろうから、題材を吟味してじっくり取り組めば良い訳じゃないけど、擦り減っちゃうと戻らなくなるから慎重に選んで欲しいものだ。
少し前良作を書いていた奥寺佐渡子は今どうしているだろう。良い仕事してても、間が空くとそんな風に思われちゃうし。
石原さとみは役得だった。そもそも力量あったし、演技派と言われてもいいくらいのキャリアもある。与えられた役が女子力勝負みたいなのが多かったから、ルックスとかファッションとかの上辺で判断されすぎていた。やっと、自分を活かせる役に巡り合えたのかとも思う。新垣結衣のみくりは今までの彼女が演じていた役の延長上にあったけど、石原さとみのミコトは奇跡的に出会えた偶然だったと思う。
面白いドラマは主人公だけでは無く脇を固める人々も魅力的なものだが、本作も例外では無く、一話毎のゲストに至るまで完璧だった。
多分近い将来続編となるだろうけど、質を落とさず楽しませてもらいたい。




ミソヒトモジにそそぐ情熱

2018-03-17 14:06:50 | 新作映画


千年前に詠まれた歌が、高校生活の三年間を熱くしてくれるなんて、日本に生まれて良かったとつくづく思うのです。上の句下の句それぞれ楽しみましたが、この-結-はとても良く纏められており一層感激しました。スウィングガールズを観た時に味わったカタルシス再現とでも言えましょうか。

下の句ではかるた部の5人よりメガネ君とクウィーンに比重が置かれたため、若干物語が散漫になりましたが、最終作ではキャラクターの按配がうまく配置されていました。特に感心したのはサブキャラの活かし方です。傍若無人の名人を愛しく魅せてくれた演出はなかなかのものです。新入生の2人もアニメ(原作は読んでません)キャラとは違うところもありますが、どちらかと言えば映画のキャラの方が好きです。メガネ君が好きな妹キャラも良いアクセントになっていました。
あと、何と言ってもスノーマンTシャツのしのぶちゃん。
若手12人が広瀬すずを筆頭に一生懸命かるたに思いを馳せ、青春の情熱を迸らせていました。
オジサン、嬉しくて嬉しくて泣いてしまいました。

三十一文字に想いを込めた平安貴族の世界が、21世紀のわたくしたちの胸を熱くさせます。
忍ぶ恋も噂になっている恋も1000年前と今と何がどう違うと言うのでしょう。
夜半の月を見上げながら和紙に墨で認めたラブレターも、通学の電車LINEでやり取りされるスキの往復も、恋する気持ちの吐露には変わりありません。







愛が生まれる時 シェイプオブウォーター

2018-03-03 19:35:06 | 新作映画

ブロークバックマウンテンを観た時に感じた切なさと愛する力に涙した。
異形の者と愛し合う世界をこんなにも美しく描かれたなら、人間の男と女の間に芽生える恋心なんて陳腐にしか映らないのじゃないか。






パンズラビリンスが描いた愛する者への気持ちを、より一層分かりやすく観せてくれたのがこの作品だと思う。パシフィックリムしか知らないと、居心地悪い映画だったろうなと痛み入る。それにしても、アカデミー賞受賞作だからな。なんか違和感は感じる。よくぞこれを選んだなぁという感慨と言っても良いけど。シンゴジラが立派な賞を沢山頂いたので、洋の東西同じか。

去年観たドリームに似た環境(時代も秘密裏に進められる国家的戦略も)は、あの黒人女優がどちらにも出てるからすんなり受け入れられた。人材の宝庫であるハリウッドでも適任となると数少ないのかもしれない。お陰で、あの施設で掃除婦として夜間働く事のマイノリティさが一層理解できる。
あの環境を理解できないと、異形の者への愛は始められないだろう。

主演女優を始め、演者がみんな素晴らしかった。半魚人も含めて。
デルトロは同世代だからよく分かるけど、大アマゾンの半魚人が大好きだと言ってた。
わたくしも子供の頃テレビで観たから同感だ。ヒロインが川面で泳ぐ姿を川底から見上げるシーンが忘れられない。モノクロの画面にキラキラ光る太陽とヒロインのコントラスト、半魚人が恋する気持ちがよく分かる。だからって、本当に恋愛する映画を作ろうとは思わないけど。そこが凡人と天才の違いか。