一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』 ……宇宙に意志があるとしたら……

2011年11月10日 | 映画
1968年に公開された映画『猿の惑星』は衝撃作であった。
TVでも何度も放送されたので、知らない人はいないのではないだろうか?

地球から打ち上げられた宇宙船が、1年6ヵ月後に、ある惑星に着陸する。
宇宙船には隊長のテイラー(チャールトン・ヘストン)他2名が乗っていたが、
湖に着水した時、宇宙船は破損して沈没。
3人は数日間さまよい歩くが、猿の一群に捕らえられる。
この惑星では、猿が高い文化を誇る高等動物で、
人間は口もきけない下等動物であった。
テイラーは脱走したが、すぐに捕まり査問会にかけられる。


だが、テイラーの知能が非常に高いことを知ったジーラとコーネリアス両博士は、
テイラーを逃がしてやる。
新天地を求めて旅立ったテイラーは、はるか向こうに見おぼえのある像の一部を見つける。
それは、なんと自由の女神であった。
この猿の惑星は地球だったのだ。


泣き崩れるテイラーが印象的なラストであった。

あの第1作から43年。
なぜ人類は崩壊し、猿が地球の支配者になったのか――
その疑問を解き明かすのが、本作『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』である。

サンフランシスコの製薬会社研究所、
そこに勤める神経化学者ウィル(ジェームズ・フランコ)。


彼が実験用に飼っていたのチンパンジーが、
開発中のアルツハイマー病の新薬が投与された直後に突如暴れ出し、
警備員に射殺されてしまう。
そのチンパンジーは妊娠しており、
生まれたばかりの赤ん坊猿をウィルは自宅に連れ帰り、
シーザーと名付け、密かに育てる。
母親から特殊な遺伝子を受け継いだシーザーは、
類い希な知性を見せ始める。
アルツハイマー病の新薬が脳を活性化させる効果を確信したウィルは、
研究所から持ち出したその薬をアルツハイマー病の父・チャールズに投与する。
それはたちどころに効果を発揮し、悪化していた病状が嘘のように生気を取り戻す。
だが、しばらくすると、チャールズは再び病状悪化の兆候を示し、
隣人とのトラブルを引き起こす。
チャ-ルズを助けようとしたシーザーは、
その隣人を傷つけてしまい、
霊長類保護施設に入れられる。


その施設の飼育長は非情な男で、


陰湿な虐待を受け、シーザーは人間に失望していく。


施設内のチンパンジーの群れを率いるボスとの争いに勝利を収めたシーザーは、
アルツハイマー病の新薬を盗み出す。




そして、仲間に噴霧。
全ての猿たちをひとつのグループにまとめ上げていく。
そして群れを率いて施設を脱出。
人類との壮大な全面戦争へとなだれ込んでいく……


ウィルは、恋人である獣医のキャロライン(フリーダ・ピント)と共に、
シーザーを探し回る。


再会するものの、人間社会へ帰ることを拒否。
ウィルとも決別するのだった……


すごく面白い作品であった。
この映画では、主人公は猿(シーザー)で、
猿の目線で創られている為、
見る側も完全に猿の味方として鑑賞してしまうし、
人間が限りなく悪役に見えてしまう。(実際もそうなんだろうけど……)
シーザーの育ての親である科学者ウィルが、本来の主役である筈なのだけれど、
猿たちの圧倒的な迫力の前に、影が薄かった。
ウィルに扮するのは、
映画『127時間』でアカデミー賞主演男優賞候補になったジェームズ・フランコ。
あの作品が素晴らしかっただけに、この作品ではちょっと損な役回りで気の毒だった。

本物のチンパンジーは一匹も使っていなくて、
すべてCG。
視覚効果を担当したのはWETAデジタル。
人間の俳優の動きを取り込む最先端技術エモーション・キャプチャーで、
リアルに映像化されたシーザーを始めとする猿たちの怒りや悲しみを繊細に表現する。
これは本当に素晴らしかった。


数年前、TVで、
様々なデータに基づいて500万年後を描くドキュメンタリーをやっていた。
さてどんな未来が描かれているかと思って見ていたら、
その時代にはもう人類はいなかった。(爆)
滅亡していたのだ。(核爆)

ある有名な天文学者の本を読んでいたら、
「人類は、これから1000年のうちに地球外へ脱出できなければ滅びる」
と書かれてあった。

遅かれ早かれ人類は滅びる運命のようだ。(笑)
地球、いや宇宙に意志があるとしたら、
たぶん真っ先に人類を始末するような気がする。
それほどの悪を人類は地球に対して行っている。
それなのに「万霊の長」などと驕り高ぶって恥じることがない。
赦される筈がない。


この映画のキャッチコピー
「これは人類への警鐘」
が、胸に深く突き刺さる傑作であった。


※本日より11月13日(日)までの4日間、毎日更新予定。(ダ、ダ、ダ、大丈夫か?)

この記事についてブログを書く
« 満島ひかり賛 ……映画『一命... | トップ | 沢木耕太郎『ポーカー・フェ... »