一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『アイネクライネナハトムジーク』 ……多部未華子に逢いたくて……

2019年09月28日 | 映画

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映画『夜のピクニック』(2006年)で多部未華子に出逢って以来、
彼女が好きになった。


以降、映画では、
『君に届け』(2010年)
『深夜食堂』(2015年)
『ピース オブ ケイク』(2015年)
『あやしい彼女』(2016年)
『続・深夜食堂』(2016年)
『日日是好日』(2018年)
『多十郎殉愛記』(2019年)
などを鑑賞し、
TVドラマでは、
連続テレビ小説『つばさ』(2009年3月~9月、NHK)
『デカワンコ』(2011年1月~3月、日本テレビ)
『僕のいた時間』(2014年1月~3月、フジテレビ)
『ドS刑事』(2015年4月~6月、日本テレビ)
『仰げば尊し』(2016年7月~9月、TBS)
などを楽しんできた。
特に、昨日(9月27日)に最終回を迎えた、
『これは経費で落ちません!』(2019年7月26日~9月27日、NHK)


での(森若沙名子を演じる)多部未華子は秀逸で、


世間の評価も高かった。


その多部未華子が出演する映画『アイネクライネナハトムジーク』が公開された。
ベストセラー作家・伊坂幸太郎による小説を、


『愛がなんだ』の今泉力哉監督のメガホンで映画化した恋愛群像劇という。


『愛がなんだ』はこのブログにもレビューを書いているし、(コチラを参照)
その今泉力哉監督作品なら期待できると思った。
多部未華子と共演するのは、三浦春馬。
二人の共演は、
『君に届け』(2010年)


『僕のいた時間』(2014年1月~3月、フジテレビ)


以来、3回目で、
特に『僕のいた時間』に感動した私としては、


二人の共演に期待するものがあった。
で、ワクワクしながら映画館に向かったのだった。



仙台駅前。
大型ビジョンを望むペデストリアンデッキでは、
日本人初の世界ヘビー級王座を賭けたタイトルマッチに人々が沸いていた。


そんな中、訳あって街頭アンケートに立つ会社員・佐藤(三浦春馬)の耳に、
ふとギターの弾き語りが響く。


歌に聴き入るリクルートスーツ姿の本間紗季(多部未華子)と目が合い、
思いきって声をかけると、快くアンケートに応えてくれた。


紗季の手には手書きで「シャンプー」の文字。
思わず「シャンプー」と声に出す佐藤に紗季は微笑む。
元々、劇的な“出逢い”を待つだけだった佐藤に、
大学時代からの友人・織田一真(矢本悠馬)は、
上から目線で“出逢い”の極意を説く。


彼は同級生の由美(森絵梨佳)と結婚し、
2人の子供たちと幸せな家庭を築いている。
変わり者ながらも分不相応な美人妻と出会えた一真には不思議な説得力がある。


佐藤は職場の上司・藤間(原田泰造)にも“出逢い”について相談してみるが、
藤間は愛する妻と娘に出て行かれたばかりで、途方にくれていた。


一方、
佐藤と同じく“出逢い”のない毎日を送っていた由美の友人・美奈子(貫地谷しほり)は、
美容室の常連客・香澄(MEGUMI)から紹介された声しか知らない男(成田瑛基)に恋心を抱き始めていた。


10年後……
織田家の長女・美緒(恒松祐里)は高校生になり、
同級生の和人(萩原利久)や亜美子(八木優希)と共にいつもの毎日を送っている。


そして佐藤は、付き合い始めて10年になる紗季に、意を決してプロポーズをするが……




群像劇ということで、
ある程度覚悟はしていたが、
多部未華子の出演シーンが思ったよりも少なくて、ちょっと残念。


それでも、しっかりと存在感は示していたし、
やはり主演は(三浦春馬と)多部未華子だと思わせた。


多部未華子の出演シーンは思ったよりも少なかったが、
彼女の他にも、私の好きな女優が出ていたので、不満はまったく無かった。


織田由美の同級生で、美容師・美奈子を演じた貫地谷しほり。
〈最近、美しくなったな~〉
と思っていたら、
数日前(2019年9月24日)に一般男性と結婚したことを発表したので、納得。
過去には『夜のピクニック』(2006年)にも出演し、多部未華子とも縁があるし、
初主演映画『くちづけ』(2013年)での演技は素晴らしかったし、(レビューはコチラから)
今日(9月28日)最終回を迎えたNHK連続テレビ小説『なつぞら』での麻子さんを、
極私的には毎日楽しみに観てきた。
本作でも、しっかりとした演技で作品を締めていたし、
これからも大いに活躍してもらいたい。



織田一真と由美の娘・美緒を演じた恒松祐里。


『散歩する侵略者』(2017年)
『凪待ち』(2019年)
のレビューでも彼女のことに触れたが、
今、最も期待できる若手女優の一人。


演技力があり、顔つきも良い。
本作では、思ったよりも出演シーンが多く、嬉しかった。





この映画を見るまで、まったく知らなかった女優が、
織田由美を演じた森絵梨佳。
織田一真の妻で、
佐藤(三浦春馬)や一真たちの学生時代のマドンナ的存在だった女性の役なのだが、
〈さもありなん〉
と思わせる、可愛さ、美しさで、私はすっかり魅了された。


【森絵梨佳】(もり えりか)
1988年10月4日生まれの30歳。(2019年9月現在)
ファッションモデル、グラビアアイドル、女優、タレント。


美容誌「VoCE」「美的」「ar」など、数々の表紙を飾っていたそうだが、
その手の雑誌はまったく手にしないので、知らなかった。
彼女の名前で検索したら、
こんな(メイクばっちりの)美しい写真が出てきてビックリ。


映画では、素顔に近い、可愛い印象だったし、
ほんわかとした雰囲気が心地良く、
いつまでも見ていたい感じがした。


某インタビューで、

働きながら子供を育てる母親役というところが自分とリンクしていたので、お話を頂いた時はびっくりしました。私の子供は今2歳なんですけど、作中では10年という時が経過して、子供たちも10年分成長しているのですが、そこまで大きな子供と接するのは未知の世界だったので、母親としての感情を把握するのが難しかったです。でも、私自身も日々子育てをしているタイミングでこの役が巡ってきたことは嬉しかったですね。

と答えていたので、
「え~、お子さんがいたの~」
と、二度ビックリ。(コラコラ)


高校生になった娘の美緒(恒松祐里)に、
「出会って、結婚したのがお父さんでラッキー?」
と聞かれ、
由美が返した言葉が素敵で、(この言葉は映画で確かめてね)
それが森絵梨佳自身が発した言葉にも思え、
森絵梨佳の印象がすこぶるアップした。


宮城県仙台市出身ということで、
仙台を舞台とした本作にキャスティングされたのかもしれないが、(違ってたらゴメン)
今後も、モデルとしてだけでなく、女優としても大いに活躍してもらいたいと思った。
それほど魅力的な女性だった。



作品を通しての主役は佐藤(三浦春馬)と紗季(多部未華子)であったが、
裏の主役は、
佐藤の友人・織田一真(矢本悠馬)と、その妻・由美(森絵梨佳)ではないかと思った。


特に、一真の発する言葉の一つひとつが、
突飛で、いい加減な言葉のようで、
それでいて心に刺さる言葉が多かった。


“出逢い”そのものの奇跡よりも、
〈あの時、あの場所で出会ったのが君で本当に良かった……〉
と、
“出逢い”の後から見えてくる人生の機微に気づかせてくれる作品であった。


今さらだけど、
そもそも、タイトルの『アイネクライネナハトムジーク』とは何かと言うと、
モーツァルトが作曲したセレナードのひとつで、
モーツァルトの楽曲の中でも非常に有名な曲である。
ドイツ語で
「アイネ(ある)クライネ(小さな)ナハト(夜の)ムジーク(曲)」
つまり「小さな夜の曲」という意味がある。
この題名はモーツァルト自身が自作の目録に書き付けたものである。
かつて日本語では「小夜曲」と訳されていたが、今ではほとんど使われなくなっており、
一方で「小夜曲」は「セレナーデ」の訳語として使われている。
「アイネクライネナハトムジーク」というタイトルは知らなくても、
曲を聴けば誰でもすぐに判ると思う。
(ちなみにこの曲は映画では一度も流れない)


伊坂幸太郎の原作は、
「アイネクライネ」に始まり、
「ライトヘビー」
「ドクメンタ」
「ルックスライク」
「メイクアップ」
と続き、
「ナハトムジーク」で終わる、
6章の短編から成る連作短編集となっており、
この小説が書かれるきっかけをつくったのが、
映画の主題歌を担当している斉藤和義だったのだ。


伊坂幸太郎は(元々)斉藤和義の大ファンで、
二人の交流は、
斉藤が伊坂に “出会い”をテーマに作詞を依頼したところから始まる。
この依頼を受け、伊坂は、
「作詞はできませんが、小説を書くことならば」
と短編小説を執筆。
これが第1章の「アイネクライネ」となった。
これを受けて斉藤は、伊坂の「アイネクライネ」の文章から楽曲『ベリー ベリー ストロング 〜アイネクライネ〜』を制作した。
この曲がシングルカットされるにあたり、
初回限定盤に付属される特典用小説として、
さらに伊坂が書き下ろしたのが「アイネクライネナハトムジーク」の第2章となる「ライトヘビー」だったのだ。
だから、『アイネクライネナハトムジーク』誕生には、
斉藤和義が大きく関わっていたのだ。


多部未華子に逢いたくて見に行った『アイネクライネナハトムジーク』だったが、
群像劇ということもあって、彼女の出演シーンは少なかったにもかかわらず、
貫地谷しほりや、
恒松祐里や、
森絵梨佳という素敵な女優にも逢うことができた。
群像劇として成功しているし、
見て損のない作品になっている。
映画館で、ぜひぜひ。

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